SES(客先常駐)経験者の転職。履歴書の正しい書き方
SESの転職と履歴書作成の悩み
SES(システムエンジニアリングサービス)、いわゆる客先常駐の形態での勤務経験は、転職活動の際に履歴書の作成で悩む点が多い分野の一つであります。自身の所属会社(雇用契約を結んでいる会社)と、実際に業務を行っていた常駐先(クライアント)が異なるため、経歴の記載方法が分かりにくくなりがちです。
また、プロジェクト(常駐先)が短期間で変わることも多いため、書き方次第では転職回数が非常に多いと採用担当者に誤解され、定着性への懸念を抱かれてしまうのではないか、という不安も生じます。
履歴書の職歴欄と職務経歴書の役割分担
まず理解しておくべきは、履歴書と職務経歴書の役割の違いであります。履歴書の「職歴欄」は、応募者が「いつ」「どの会社に」在籍していたのかというキャリアの「概要(事実)」を、時系列で簡潔に示すための項目です。
一方、併せて提出する「職務経歴書」は、その在籍期間中に「具体的にどのようなプロジェクト(常駐先)で」「どのような業務を担当し」「どのようなスキル(開発環境)を培ってきたのか」を、採用担当者に詳細に説明し、アピールするための書類であります。
この二つの書類の役割分担を意識することが、SES経験者が経歴を分かりやすく伝えるための第一歩となります。
履歴書の職歴欄。所属会社(SES企業)を基準に記載する
履歴書の職歴欄は、応募者が雇用契約を結んでいた「所属会社(SES企業、派遣元)」を基準に、時系列で記載するのが大原則であります。常駐先(プロジェクト)が変わることは「転職」ではありません。あくまで、所属会社への「入社」と「退職」(あるいは「現在に至る」)という事実を、職歴として記載します。
履歴書の職歴欄への具体的な書き方
履歴書の職歴欄には、所属していたSES企業(派遣元)の情報を、他の職歴と同様に記載します。
(記載例)
「〇〇年〇月 株式会社〇〇(所属会社名) 入社」
「〇〇年〇月 一身上の都合により退職」
あるいは、
「〇〇年〇月 株式会社〇〇(所属会社名) 入社」
「現在に至る」
業務内容の簡潔な補足
採用担当者がキャリアの概要を把握できるよう、会社名の次の行などに、どのような業務形態であったかを簡潔に補足することも有効な書き方であります。
(記載例)
「〇〇年〇月 株式会社〇〇(所属会社名) 入社」
「 システムエンジニアとして、主にクライアント先(常駐先)でのシステム開発に従事」
「現在に至る」
多数の常駐先(プロジェクト)の扱いはどうするか
履歴書の限られたスペース(職歴欄)に、経験した全ての常駐先(プロジェクト)の詳細を記載する必要はありません。それは、職務経歴書が担う役割であります。
もし、履歴書の職歴欄にスペースの余裕があり、特にアピールしたい主要な常駐先がある場合は、「(主に〇〇株式会社(常駐先)にて〇〇の開発を担当)」といった形で、簡潔に補足することも可能ですが、基本的には「詳細は職務経歴書をご参照ください」というスタンスで問題ありません。
詳細は職務経歴書でアピールすることが鍵
履歴書の職歴欄でキャリアの「概要」を正確に示した上で、SES経験の「強み」は、職務経歴書の方で詳細にアピールすることが不可欠であります。職務経歴書では、所属会社ごとに、時系列で「プロジェクト単位」の経歴を記載し、プロジェクト(常駐先)の概要(業界など)、自身の役割、担当フェーズ(工程)、そして何よりも「開発環境(使用技術)」を具体的に明記します。
SES経験は「強み」としてアピールできる
履歴書や職務経歴書での書き方を工夫すれば、SES(客先常駐)の経験は、転職市場において非常に価値の高い「強み」としてアピールすることが可能であります。
多様な現場(常駐先)の異なる環境、人間関係、業務ルールに適応してきた経験は、「高い環境適応能力」や「柔軟性」の証明となります。また、様々な業界のプロジェクトや、多様な技術(レガシーな技術から最新技術まで)に触れてきた経験は、「幅広い業務知識」や「多様な開発環境への対応力」として高く評価されます。
履歴書には事実を正確に記載し、職務経歴書でその強みを論理的にアピールすることが、書類選考を通過するための鍵となります。





