転職活動の履歴書。「希望年収」は本人希望欄に書くべきか
転職における履歴書の「本人希望欄」と「希望年収」
転職活動において履歴書を作成する際、「本人希望欄」という項目がございます。この欄に、自身の「希望年収」を具体的に記載すべきかどうか、悩まれる方は少なくありません。自身の希望を正直に伝えたいと思う一方で、それが選考に不利に働かないかという懸念もあるでしょう。
履歴書の本人希望欄の本来の役割
まず理解しておくべきは、履歴書の本人希望欄の役割であります。この欄は、原則として、応募者が入社にあたり「絶対に譲れない条件」を伝えるための項目であります。例えば、育児や介護といった家庭の事情により、勤務可能な曜日や時間帯に制約がある場合や、複数の職種を募集している場合に特定の職種を強く希望する、といった内容であります。給与(年収)のように、選考を通じて双方の合意形成(交渉)が必要となる項目を、一方的に記載する場ではございません。
履歴書に「希望年収」を記載するリスク
もし、書類選考の段階である履歴書に、具体的な「希望年収」の金額を記載した場合、いくつかのリスクが伴います。採用担当者が最も懸念するのは、応募者の希望金額が、企業側がそのポジションに対して想定している給与水準(給与レンジ)と少しでも異なっていた場合であります。その場合、応募者のスキルや人柄を面接で確認する以前に、給与条件のミスマッチを理由として、書類選考の段階で不合格(足切り)とされてしまう可能性がございます。
また、選考の初期段階で待遇面に関する希望ばかりを強調すると、採用担当者に「条件面ばかりを気にする人」「仕事内容よりも給与が優先なのか」といった、マイナスの印象を与えてしまう可能性も否定できません。
希望年収はいつ、どう伝えるのが適切か
給与(年収)に関する希望は、転職活動において非常に重要な要素であります。しかし、それを伝えるには適切な「タイミング」がございます。最も一般的なのは、選考が進み、面接の場(特に最終面接前後)で、企業側から給与について尋ねられたタイミングであります。その時点では、企業側も応募者のスキルや経験をある程度評価しており、具体的なすり合わせ(交渉)に入りやすくなります。あるいは、内定が出た後(または内定前)の「条件面談」の場が、交渉の正式な場となることも多くあります。
転職エージェントの活用
もし、転職エージェント(人材紹介会社)を活用して転職活動を行っている場合は、希望年収を担当のキャリアアドバイザーに明確に伝えておくのが、最もスムーズで確実な方法であります。キャリアアドバイザーが、応募者のスキルや市場相場を踏まえた上で、応募先企業との間で、応募者に代わって給与交渉を行ってくれるため、応募者自身が直接言いにくい条件面を調整する上での負担が軽減されます。
では、本人希望欄には何を書くべきか
それでは、履歴書の本人希望欄には、希望年収の代わりに何を書くのが適切なのでしょうか。前述の通り、絶対に譲れない勤務条件(職種、勤務地、時短勤務など)がない限りは、「貴社(御社)の規定に従います。」と記載するのが、最も一般的で適切な書き方であります。これは、応募先企業の条件やルールに従うという「協調性」を示すことにもつながります。
結論。書類選考段階での年収記載は避けるのが賢明
転職活動の履歴書において、本人希望欄に具体的な希望年収を記載することは、選考を不利に進めるリスクを伴うため、原則として避けるのが賢明であります。「貴社の規定に従います。」と記載し、自身の価値(スキルや経験)が企業に正しく評価された後の、適切なタイミング(面接や条件面談)で、希望年収のすり合わせ(交渉)を行うことが、転職成功への確実な鍵となります。





