引き抜き(ヘッドハンティング)による転職と履歴書の書き方
引き抜き転職でも履歴書・職務経歴書は必要か
企業側からのスカウトやヘッドハンティング、いわゆる「引き抜き」によって転職のオファー(打診)を受けた場合であっても、応募書類として履歴書や職務経歴書の提出を求められることが一般的であります。たとえ応募者個人を評価しての声がけであったとしても、企業側(採用担当者や人事部門)は、応募者の基本的な経歴(学歴、職歴、資格など)を客観的に確認し、社内での選考プロセス(稟議)や、採用後の人事記録として、公式な応募書類を必要とするからであります。
履歴書・職務経歴書の基本的な書き方
引き抜きによる転職であったとしても、履歴書や職務経歴書に記載する基本的な項目(氏名、住所、連絡先、学歴、職歴、資格など)の書き方は、通常の転職活動(自己応募)の場合と何ら変わるものではございません。自身の経歴を、時系列に沿って、省略したり偽ったりすることなく、正確かつ誠実に記載することが大前提となります。
「引き抜き」の事実を履歴書に記載すべきか
応募者の中には、「引き抜き」という事実そのものをアピールポイントとして履歴書に記載すべきか、悩まれる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、原則として、履歴書の職歴欄や自己PR欄に、「(引き抜きにより入社)」といった形で、その経緯を応募者側から積極的に記載する必要はございません。履歴書は、あくまで自身の客観的な経歴とスキルを示す書類であり、その入社(応募)に至った主観的な経緯を記載する場ではないためです。また、記載内容によっては、採用担当者に自慢と受け取られたり、現職(前職)との関係性を不要に勘繰られたりするリスクもございます。「引き抜き」という事実は、面接の場で経緯を説明する流れになった際に、口頭で伝える方が適切であります。
履歴書の「志望動機」欄の書き方
引き抜き転職において、最も書き方に悩むのが履歴書の「志望動機」欄かもしれません。自身から積極的に応募したわけではないため、熱意の示し方が難しいと感じることもあります。しかし、この欄を空欄にしたり、「特になし」と記載したりすることは、入社意欲を疑われる可能性があるため、避けるべきであります。
この場合の志望動機としては、まず「お声がけいただいたことへの感謝」を述べつつ、「なぜ(引き抜きの)話を受けようと決めたのか」という、自身の「意思」と「理由」を前向きに記載することが重要であります。
例えば、「この度、〇〇様(紹介者名やエージェント名)よりお声がけいただき、貴社(御社)の〇〇(事業内容やポジション)について詳しく伺いました。その中で、自身のこれまでの〇〇(経験・スキル)が、貴社(御社)の〇〇という分野で活かせると考え、強く魅力を感じたため、応募を決意いたしました。」といった形で、自身の経験と、応募先企業の事業やポジションとの「接点」を見つけ出し、前向きな「貢献意欲」を示すことが求められます。
履歴書の「退職理由」の書き方
もし、引き抜きがきっかけで現職(前職)を退職(あるいは退職予定)する場合、履歴書の職歴欄に記載する退職理由は、詳細な経緯を記す必要はございません。通常の自己都合退職と同様に、「一身上の都合により退職」(あるいは「現在に至る」)と記載するのが一般的であります。「引き抜きによる退職」といった記載は、現職(前職)との円満退職を疑わせる可能性や、応募者の忠誠心(ロイヤリティ)に疑問を持たせるリスクもあるため、避けるのが賢明であります。
職務経歴書で「評価された実績」を明確にする
引き抜き(スカウト)を受けたということは、応募者のこれまでのキャリア、特に「実績」や「専門性」が、外部から客観的に評価された証拠でもあります。そのため、併せて提出する職務経歴書においては、その評価の根拠となったであろう「具体的な実績(可能な限り数値を交える)」や、「専門スキル」を、通常の転職活動以上に、客観的かつ詳細に記載し、自身の能力を改めて証明することが重要であります。「引き抜き」という事実に甘んじるのではなく、自身の価値を書類で論理的に提示する姿勢が、採用担当者との信頼関係を築く鍵となります。





