厚生労働省が推奨する履歴書様式の特徴と選考通過率を高める活用術
新しい標準となりつつある厚生労働省様式の履歴書とは
転職活動において履歴書を作成する際、どのフォーマットを使用すべきか迷うことがあります。長年、日本の履歴書といえば日本産業規格(JIS)の様式が標準とされてきましたが、実は2020年にJISが履歴書の様式例を削除したことを受け、現在は厚生労働省が作成した履歴書様式例が新たなスタンダードとして定着しつつあります。この様式は、公正な採用選考を確保する観点から新たに検討されたものであり、従来の履歴書に存在した項目が見直されています。
書類選考を通過するためには、自身のスキルや経験をアピールすることが最優先ですが、使用する履歴書のフォーマット選びも、応募者の人権感覚や社会情勢への理解度を示す一つの要素となり得ます。厚生労働省の様式を使用することは、単に公的なフォーマットを使うという安心感だけでなく、現代の採用基準に即した適切な情報を開示する姿勢を示すことにもつながります。ここでは、この新しい様式の特徴と、それを活用して書類選考を有利に進めるためのポイントについて解説します。
従来のJIS規格との違いと変更点の意図
厚生労働省が推奨する履歴書様式と、かつてのJIS規格様式との最大の違いは、プライバシー保護と公正な選考への配慮にあります。具体的には、性別欄の記載が任意となり、未記載とすることや、男・女の選択式ではなく自由記述とすることが可能になりました。これにより、性自認やジェンダーに関する多様性に配慮した形となっています。
また、通勤時間、扶養家族の数、配偶者の有無、配偶者の扶養義務の有無といった項目が削除されています。これらの情報は、本来仕事の能力や適性とは無関係であるにもかかわらず、採用判断に予断を与える可能性があるためです。この変更により、応募者は家族構成や生活環境といったプライベートな情報ではなく、純粋に職務遂行能力や意欲によって評価される土壌が整いました。応募者にとっては、選考に関係のない個人情報を開示するストレスが減り、より本質的なアピールに集中できるフォーマットであると言えます。
厚生労働省様式を使用するメリットと採用担当者の視点
この様式を使用する最大のメリットは、スキルや志望動機といったアピールしたい情報に採用担当者の目を集中させられることです。家族構成や通勤時間などの欄がなくなった分、履歴書のスペースにゆとりが生まれ、あるいは志望動機欄などが広く設計されているため、熱意を伝えるための記述量を確保しやすくなっています。採用担当者にとっても、公正な採用選考を行う姿勢を持つ企業であればあるほど、この様式での提出は好意的に受け止められます。
また、古い形式の履歴書を使い続けていると、情報のアップデートができていないという印象を与えてしまうリスクがあります。特にコンプライアンス意識の高い企業や、ダイバーシティ&インクルージョン(多様性の受容)を推進している企業に応募する場合、厚生労働省様式を選択することは、社会の動きを正しく理解しているという無言のアピールになります。自身のバックグラウンドに関わらず、フラットに能力を見てほしいと考える転職者にとって、非常に有効な選択肢となります。
公正な様式だからこそ重要になる志望動機の充実
プライベートな質問項目が削除された厚生労働省様式では、必然的に志望動機や自己PR欄の重要度が増します。記入スペースがしっかりと確保されていることが多いため、ここを空白が目立つような状態で提出してしまうと、熱意が低いと判断される可能性が高まります。履歴書作成においては、この自由記述欄をいかに充実させるかが勝負の分かれ目となります。
具体的には、なぜその企業を選んだのか、自身のこれまでの経験がどのように貢献できるのかを、自身の言葉で論理的に記述します。項目が減った分、採用担当者の視線は職歴と志望動機に集中します。したがって、定型文をそのまま使うのではなく、企業ごとの特徴に合わせた内容にカスタマイズする手間を惜しまないことが大切です。公正なフォーマットは、裏を返せば誤魔化しが効かない実力勝負のフォーマットでもあります。中身のコンテンツを磨き上げることが、書類選考通過への近道となります。
どこで入手できるのかと作成時の注意点
厚生労働省の履歴書様式例は、厚生労働省の公式ホームページから無料でダウンロードすることが可能です。Excel形式やPDF形式で提供されているため、パソコンで作成する場合も、印刷して手書きで作成する場合も対応できます。また、ハローワークのインターネットサービスなどでも同様の様式が入手可能です。インターネット上の求人サイトや履歴書作成ツールの中には、この「厚生労働省様式」や「JIS規格準拠(新形式)」に対応したテンプレートを用意しているところも増えています。
作成時の注意点としては、性別欄などの記載が任意になっているとはいえ、空欄にするか記載するかは自身の判断に委ねられている点です。また、項目が削除されたからといって、面接で通勤経路や家族について聞かれないとは限りません(ただし、業務に関係のない質問は不適切とされる傾向にあります)。履歴書上では能力本位のアピールを行い、面接等の対話の中で必要な条件確認を行うという意識で準備を進めることが重要です。
戦略的にフォーマットを選び書類選考を突破する
履歴書は、自分自身を企業にプレゼンテーションするための最初の資料です。厚生労働省様式は、現代の採用基準に即した公平で標準的なフォーマットですが、必ずしもこれを使わなければならないという法的義務はありません。例えば、職歴を特に強調したい場合は職歴欄が広い転職用フォーマットを選んだり、アピールポイントが多い場合は自己PR欄が大きいものを選んだりと、戦略的に使い分けることも可能です。
しかし、どのフォーマットを使うべきか迷った場合や、特定の指定がない場合は、厚生労働省様式を選んでおけば間違いはありません。それは最も公平で、現代的なスタンダードだからです。形式選びに迷う時間を減らし、その分を企業研究や職務経歴書のブラッシュアップに充てることこそが、書類選考を通過するための賢明な時間の使い方になります。自身の強みを正しく評価してもらうために、この新しい標準様式を効果的に活用してください。





