履歴書写真でベスト(スリーピース)着用は有利?採用担当者が抱く印象と着こなしの境界線
転職活動における面接や履歴書写真の服装として、ジャケットの下にベスト(ジレ)を合わせたスリーピーススーツのスタイルを検討する方が増えています。クラシック回帰のトレンドもあり、大人の男性の風格を演出できるアイテムとして人気ですが、採用選考という場において適切かどうかは意見が分かれるところです。「おしゃれに見える」「仕事ができそうに見える」というポジティブな側面がある一方で、「偉そう」「派手すぎる」といったネガティブな印象を持たれるリスクも孕んでいます。ここでは、履歴書写真におけるベスト着用の是非と、採用担当者に好印象を与えるための正しい判断基準について詳しく解説します。
ベストが与える「威厳」と「生意気さ」の紙一重な印象
履歴書の写真でベストを着用することの最大のメリットは、重厚感や貫禄を演出できる点です。ジャケットのVゾーンが狭くなることで胸元に厚みが生まれ、立体的でたくましい印象になります。これにより、年齢よりも若く見られがちな方や、管理職・リーダー候補として応募する方にとっては、頼りがいや落ち着きをアピールする有効な手段となり得ます。しかし、この「威厳」は、受け取り手によっては「生意気」「プライドが高そう」「協調性に欠ける」というマイナス評価に転じることがあります。特に、面接官が年配の方であったり、応募者が20代の若手であったりする場合、ベストを着ているだけで「格好をつけている」と判断され、敬遠されるリスクがあることを理解しておく必要があります。
業界や職種による許容範囲の違いを見極める
ベスト着用の可否は、志望する業界や職種によって大きく異なります。アパレル、広告代理店、不動産営業、外資系コンサルティングファームなど、個人のプレゼンス(存在感)やセンスが重視される業界では、スリーピーススーツをスマートに着こなすことで「プロフェッショナルな印象」や「自信」をアピールでき、好評価につながる可能性があります。一方で、公務員、銀行、メーカーの事務職、教育関係など、規律や保守的な文化が根強い業界では、スリーピースは「華美すぎる」と判断される可能性が高いです。こうした堅実な業界では、標準的なツーピース(ジャケットとスラックス)のスタイルが最も信頼されます。自分の好みで選ぶのではなく、応募先の社風や求められる人物像に合わせて、ベストを着るか脱ぐかを戦略的に判断することが大切です。
スリーピースを着用する場合の正しい着こなしルール
もし戦略的にベストを着用して撮影に臨むのであれば、完璧な着こなしが求められます。中途半端な着こなしは、単にだらしない印象を与えるだけです。まず、ベストは必ずスーツと同じ生地の「スリーピース」として着用します。ジャケパンスタイルのように、異なる色や素材のオッドベストを合わせるのはカジュアルすぎるため、履歴書写真ではNGです。色は濃紺(ネイビー)やチャコールグレーを選び、柄は無地か目立たないシャドーストライプに留めます。また、サイズ感も重要です。ベストが緩すぎるとだらしなく見え、きつすぎるとシワが寄って見苦しくなります。身体にフィットしたものを選び、一番下のボタンは外しておく(アンボタンマナー)のが基本ルールです。ネクタイはベストに収まるように長さを調整し、Vゾーンが狭くなる分、結び目(ノット)をきれいに整えて立体感を出すことが、洗練された印象を作るコツです。
防寒用の「ニットベスト」は写真撮影では脱ぐべき
ここで注意が必要なのは、スーツと共布のベストではなく、防寒のためにシャツの上に着る「ニットベスト」や「カーディガン」の扱いです。冬場の面接や通勤ではウォームビズとして許容されていますが、履歴書の写真撮影においては、これらのニット類は脱ぐのが鉄則です。ジャケットの下からニットのラインが見えたり、襟元から色が覗いていたりすると、どうしても「カジュアル」で「寒さ対策優先」という生活感が出てしまいます。証明写真はフォーマルな姿を記録するものですので、季節感を出さず、シャツとジャケットのみのすっきりとしたスタイルで撮影することで、清潔感とビジネスへの真剣度を伝えることができます。
迷った時は「着用しない」が最も安全なリスク管理
ベストを着ることで「仕事ができそう」に見える効果は確かにありますが、それが採用の決定打になることは稀です。逆に、ベストを着ていることによる「偉そう」というマイナス印象は、即座に不採用の理由になり得ます。つまり、履歴書写真におけるベストの着用は、ハイリスク・ローリターンの選択になりがちです。もし、応募する企業の雰囲気が読めない場合や、自分の着こなしに少しでも不安がある場合は、ベストを着用せずにオーソドックスなスーツスタイルで撮影することをおすすめします。履歴書の写真は、個性を競う場ではなく、マイナス要素を排除して信頼を獲得する場です。誰が見ても不快感を持たないスタンダードなスタイルを選ぶことが、書類選考を確実に突破するための最善の策といえます。





