理学療法士の転職を成功させる履歴書職歴欄の書き方とアピール術
理学療法士の職歴は臨床経験の具体化が書類選考の鍵を握ります
理学療法士の転職市場は、資格保有者の増加に伴い、単に有資格者であるというだけでは希望の条件で採用されることが難しくなりつつあります。人気のある急性期病院や、待遇の良い訪問看護ステーションなどに採用されるためには、書類選考の段階で自身の実力を明確に伝え、他の応募者と差別化を図る必要があります。採用担当者であるリハビリテーション科の責任者や事務長が履歴書の職歴欄で最も知りたいのは、応募者がどのような病期の患者様に対し、どれくらいの単位数をこなし、どのような専門スキルを発揮してきたかという点です。
単に理学療法士として勤務と書くだけでは、脳血管疾患がメインだったのか、整形外科疾患に強みがあるのか、あるいは維持期のリハビリを中心に行っていたのかが伝わりません。職歴欄を単なる在籍記録として終わらせるのではなく、自身の臨床能力を証明するポートフォリオとして活用する意識が重要です。ここでは、理学療法士ならではの専門的な職歴の書き方と、採用担当者に響くアピールポイントについて解説します。
医療法人名と病院名を正式に記載し入職などの専門用語を使う
履歴書の職歴欄を作成する際、まず注意すべきなのは所属組織の名称と用語の選び方です。多くの病院やクリニックは医療法人が運営しています。そのため、単に〇〇病院と書くのではなく、医療法人〇〇会 △△病院のように、法人名から省略せずに正式名称で記載することがマナーです。
また、医療業界では一般企業で使う入社や退社という言葉の代わりに、入職や退職という言葉を使うのが一般的です。履歴書においても、医療法人〇〇会 △△病院 入職と記載することで、医療従事者としての常識や業界への理解があることを示すことができます。退職理由についても、一身上の都合により退職と記載し、契約満了などの特別な事情がない限りは定型句を使用します。正しい名称と用語を使うことは、理学療法士としての信頼性を高める第一歩となります。
病期や疾患別リハビリの区分を明記して得意分野を伝える
理学療法士の実務能力を判断する上で、経験してきた病期(急性期、回復期、生活期・維持期)と、主に対応していた疾患の領域は極めて重要な情報です。職歴欄の病院名の下や行間を活用して、これらを具体的に記載します。
例えば、回復期リハビリテーション病棟(50床)にて、主に脳血管疾患および運動器疾患の患者様を担当といった記述です。さらに、施設基準(脳血管疾患等リハビリテーション料Iなど)を書き添えることで、どのような環境で質の高いリハビリを提供していたかを客観的に示すことができます。総合病院でローテーション勤務を経験している場合は、経験した診療科や病棟を時系列で記載するか、主な担当領域としてまとめて記載することで、幅広い対応力があることをアピールできます。
取得単位数や担当患者数を数値化して即戦力を証明する
臨床現場での忙しさや業務処理能力を伝えるために、数値を用いた実績のアピールは非常に有効です。1日あたりの平均取得単位数や、1日の担当患者数を職歴欄に記載することをお勧めします。例えば、1日平均18単位を取得や、外来リハビリにて1日約20名の患者様を担当といった具体的な数字です。
これにより、採用担当者はあなたがどの程度の業務量をこなせるかを瞬時に把握でき、自院の忙しさに対応できる即戦力であるかを判断しやすくなります。また、訪問リハビリの経験がある場合は、1日の訪問件数や移動手段(車、バイク、自転車)を記載することも重要です。数字は嘘をつかないため、あなたの実務能力を裏付ける強力な証拠となります。
認定理学療法士や学会発表の実績で専門性を強化する
認定理学療法士や専門理学療法士、あるいは3学会合同呼吸療法認定士などの関連資格を取得している場合は、資格欄だけでなく職歴欄の業務内容とリンクさせて記載することで説得力が増します。資格を取得したことで、より専門的なリハビリ介入が可能になったり、チーム医療の中で中心的な役割を果たしたりした経緯があれば、それを表現します。
また、学会発表や論文執筆の実績がある場合も、職歴欄のスキマや職務経歴書への誘導として記載すべきアピールポイントです。第〇回日本理学療法学術大会にて症例発表といった記述は、臨床だけでなく学術研鑽にも熱心に取り組む姿勢を示すものであり、教育体制の整った病院や、質の高い医療を目指す施設への転職において高く評価されます。
リーダー経験や学生指導はマネジメント能力として記載する
理学療法士のキャリアパスにおいて、リーダー業務や後輩指導、実習生のスーパーバイザー(SV)経験は重要なステップです。役職についていた場合は、リハビリテーション科主任に昇進や、リーダーとしてスタッフ10名のマネジメントを担当と記載します。
役職がなかったとしても、実習指導者として学生を受け入れた経験や、院内のリスク管理委員会などの活動実績があれば、それを記載することで組織運営に貢献できる人材であることをアピールできます。特に、訪問看護ステーションの管理者候補や、新規立ち上げスタッフとして応募する場合は、こうしたマネジメント経験や教育経験が採用の決め手になることも少なくありません。
履歴書でキャリアの概略を伝え職務経歴書で詳細を語る
理学療法士の職歴は、専門性が高く記載すべき情報が多いため、履歴書の職歴欄だけですべてを語り尽くすことは困難です。履歴書では、いつ、どの病院で、どのような病期の患者様を診ていたかという事実(キャリアの全体像)を簡潔に伝え、具体的な症例数や治療アプローチ、苦労したエピソードなどについては、職務経歴書で詳しく解説するという役割分担を意識して作成してください。
履歴書で見やすさと基礎的な臨床能力をアピールし、職務経歴書で理学療法士としての深みや熱意を伝える。この両輪が揃うことで、採用担当者に会って話を聞いてみたいと思わせる強力な応募書類となります。





