履歴書の職歴欄における「一身上の都合」の正しい書き方と使い分けのルール

自己都合退職はすべて「一身上の都合」と書くのが鉄則です

転職活動において履歴書の職歴欄を作成する際、退職理由の書き方で迷う方は非常に多いです。人間関係の悩み、給与への不満、あるいはキャリアアップのためなど、退職に至る理由は人それぞれですが、履歴書上ではこれらを詳細に書く必要はありません。労働者自身の意思で退職を決めた場合、いわゆる自己都合退職については、どのような理由であっても「一身上の都合により退社」という定型句で統一するのがビジネスマナーの鉄則です。

ここで具体的な理由を書いてしまうと、採用担当者にネガティブな印象を与えたり、言い訳がましいと感じさせたりするリスクがあります。「一身上の都合」という言葉は、個人の事情であることを包括的に示す便利なビジネス用語です。この表現を使うことで、書類上は波風を立てずに事実を伝え、詳細な退職理由や前向きな転職動機については、職務経歴書や面接の場で口頭補足するというスタンスを取るのが、書類選考をスムーズに進めるための正解となります。

「会社都合」の場合は明確に使い分ける必要があります

退職理由が自分の意思ではない場合、つまり会社側の事情による退職の場合は、「一身上の都合」と書いてはいけません。具体的には、倒産、リストラ、事業所閉鎖、あるいは希望退職制度への応募などがこれに該当します。この場合は「会社都合により退社」と明確に記載します。

会社都合であることを明記することには、応募者にとって大きなメリットがあります。それは、離職の原因が本人のスキル不足や勤務態度、あるいは忍耐力不足によるものではないことを採用担当者に証明できる点です。不可抗力による退職であることを示せれば、短期離職であってもマイナス評価を避けることができます。もし会社都合であるにもかかわらず、慣習的に「一身上の都合」と書いてしまうと、自己都合で辞めたと誤解され、損をしてしまう可能性があるため、正しい使い分けが重要です。

契約社員や派遣社員における「期間満了」の書き方

正社員以外の雇用形態、特に契約社員や派遣社員として勤務していた場合、退職理由の書き方には注意が必要です。あらかじめ定められた契約期間を全うして退職した場合は、「一身上の都合」ではなく「契約期間満了により退社」と記載するのが適切です。これにより、途中で投げ出したのではなく、契約上の責任を最後まで果たしたという実績をアピールできます。

ただし、契約期間の途中で自ら申し出て退職した場合や、契約更新の打診があったにもかかわらず自身の都合で断った場合は「一身上の都合により退社」となります。派遣社員の場合は、派遣元との登録解除なのか、派遣先での業務終了なのかを区別し、派遣先が変わるたびに書くのであれば「派遣期間満了により退社」といった表現を用います。雇用形態と退職の経緯に合わせて、最も事実に即した表現を選ぶことが大切です。

やむを得ない事情がある場合の補足テクニック

基本的には「一身上の都合により退社」で問題ありませんが、結婚、出産、配偶者の転勤、家族の介護など、ライフイベントや家庭の事情により退職せざるを得なかった場合は、一言書き添えることで採用担当者の懸念を払拭できます。例えば、「一身上の都合により退社（結婚に伴う転居のため）」や「一身上の都合により退社（親の介護のため）」といった書き方です。

このように補足することで、「仕事が嫌で辞めたわけではない」「やむを得ない事情があった」という背景を伝えることができます。また、現在はその事情が解消されており、勤務に支障がないことを本人希望記入欄などで合わせて伝えることで、採用へのハードルを下げることができます。単なる定型句だけでなく、状況に応じて括弧書きを活用する柔軟性が、書類選考通過率を高めるポイントです。

在職中の場合は「退職」という言葉を使わない

現在企業に在籍しながら転職活動を行っている場合、職歴欄の最後には「一身上の都合により退社」とは書きません。代わりに、最終職歴のあとに「現在に至る」と記載します。これにより、まだ退職していない状態であることが伝わります。

すでに退職届を提出し、退職日が確定している場合は、「現在に至る」の横、あるいは次の行に「令和〇年〇月〇日 退職予定」と書き添えます。これにより、採用担当者は入社可能時期の目安を立てやすくなります。退職日が未定の場合は「現在に至る」のみで構いません。事実と異なることを書くと経歴詐称等のトラブルになりかねませんので、在職中か退職済みかによって、正しい表現を使い分けるようにしてください。

履歴書全体のレイアウトを整える「以上」の記載

退職理由（または現在に至る）を書き終えたら、職歴欄の締めくくりとして「以上」と記載することを忘れてはいけません。ルールとしては、最終行から一行下の、右端に寄せて「以上」と書きます。これがないと、書き忘れがあるのか、まだ続きがあるのかが分からず、書類としての完成度が低いとみなされることがあります。

履歴書は公的な性格を持つビジネス文書です。「一身上の都合」という言葉の重みを理解し、適切な場面で正しく使用すること、そして全体のレイアウトを整えることは、社会人としての基礎能力の証明になります。細部まで気を抜かず、採用担当者に信頼感を与える履歴書を作成してください。

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人材会社で15年間、転職・中途採用市場における営業職・企画職・調査職の仕事を経験。
社団法人人材サービス産業協議会「転職賃金相場」研究会の元メンバー
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