言語聴覚士の履歴書志望動機で採用を勝ち取る書き方と領域別例文集

「話す」「聞く」「食べる」という、人間らしく生きるための機能を支える言語聴覚士（ST）。専門性が高く、医療から福祉、教育まで活躍の場は広がっていますが、採用枠が理学療法士（PT）や作業療法士（OT）に比べて少ないケースも多く、人気の病院や施設は狭き門となることがあります。

採用担当者は、高い専門スキルはもちろんのこと、患者様や利用者様の心に寄り添う人間性、そして多職種と連携できる協調性を履歴書の志望動機から厳しくチェックしています。ここでは、言語聴覚士への転職を目指す方が書類選考を確実に通過するために知っておくべき志望動機の書き方と、急性期、回復期、小児、訪問など領域別の具体的な例文について詳しく解説します。

言語聴覚士の採用担当者が志望動機で重視する3つの視点

言語聴覚士の選考において、採用担当者が履歴書の志望動機欄から読み取りたい要素は明確です。STならではの専門性と、その施設を選んだ必然性が盛り込まれているかが鍵となります。

1. 専門領域への関心と「STとしてのビジョン」

言語聴覚士が扱う領域は、摂食嚥下障害、失語症、高次脳機能障害、構音障害、聴覚障害、小児の発達支援など多岐にわたります。「なぜその領域に力を入れたいのか」「どのようなセラピストになりたいのか」というビジョンが、応募先の機能（急性期、回復期、維持期、療育など）と合致している必要があります。

2. 「食べる喜び」や「伝える喜び」を支える熱意

機能回復訓練だけでなく、患者様のQOL（生活の質）に直結する「食べる」「話す」という行為を支えることへの深い理解と熱意が問われます。患者様の心理的な葛藤に寄り添い、信頼関係を築ける人間性があるかどうかが評価されます。

3. チーム医療・多職種連携への貢献意欲

言語聴覚士は施設内での配置人数が少ないことが多いため、医師、看護師、PT、OT、管理栄養士、ケアマネジャーなど、他職種といかに円滑に連携できるかが重要です。専門性を発揮しつつも、独りよがりにならずチームの一員として動ける協調性をアピールすることが大切です。

【経験者】急性期・回復期病院へ転職する場合の例文

病院への転職では、より専門的なスキルアップや、特定の疾患・病期に関わりたいという意欲を伝えます。

例文（回復期リハビリテーション病院志望）

前職では総合病院の急性期病棟にて3年間、脳血管疾患の患者様を中心に嚥下機能評価や早期リハビリに従事してまいりました。その中で、急性期を脱した後の患者様が、時間をかけて機能を取り戻し、在宅復帰を目指す過程にもっと深く伴走したいという思いが強くなりました。貴院は回復期リハビリテーションにおいて高い在宅復帰率を誇り、嚥下造影検査（VF）や嚥下内視鏡検査（VE）を用いた詳細な評価に基づいた訓練を行われている点に魅力を感じております。これまでの経験を活かしつつ、チーム医療の一員として患者様の「口から食べる喜び」の回復に貢献したいと考えております。

【経験者】訪問看護・介護施設へ転職する場合の例文

在宅や施設への転職では、生活の場における実践的な支援や、ご家族を含めたサポートへの意欲を重視します。

例文（訪問看護ステーション志望）

病院勤務を通じて、失語症や嚥下障害を持つ患者様が退院後にご自宅でどのような生活を送られるのか、その後の人生を支えたいという思いが強くなり、訪問リハビリテーションを志望いたしました。病院での訓練室とは異なり、実際の食卓や生活空間で、ご家族とも協力しながら行うリハビリこそが、利用者様らしい生活を取り戻す鍵であると考えております。貴ステーションの「地域で生きるを支える」という理念に共感し、STとしての専門性を活かして、利用者様のコミュニケーションと食の楽しみを守るパートナーとして貢献したいと強く願っております。

【経験者】小児領域（療育）へ転職する場合の例文

成人領域から小児領域へのキャリアチェンジは、なぜ子供の支援に関わりたいのかという原体験や熱意を伝えます。

例文（児童発達支援センター志望）

これまでは成人領域で構音障害のリハビリに従事しておりましたが、言葉の獲得段階にあるお子様の支援に関心を持ち、地域の言葉の教室でのボランティア活動に参加いたしました。その中で、早期からの適切な介入と保護者様への支援が、お子様の未来の可能性を広げることを実感し、小児領域への転身を決意いたしました。貴センターの、遊びを通じて子供の主体性を引き出す療育方針に感銘を受けております。未経験の領域ではありますが、成人のリハビリで培った観察眼とコミュニケーション能力を活かし、お子様の「できた！」を増やせる言語聴覚士として尽力いたします。

【未経験・新卒】STを目指す原体験を伝える例文

実務未経験の場合は、STを目指したきっかけ（家族の介護経験や実習でのエピソード）と、学ぶ意欲を前面に出します。

例文

祖父が脳梗塞で倒れた際、言語聴覚士の方のリハビリによって再び家族と会話ができるようになり、笑顔を取り戻した姿に深く感動し、言語聴覚士を志しました。実習においては、機能訓練だけでなく、患者様の不安な気持ちに寄り添う傾聴の姿勢を大切にしてまいりました。貴院の地域密着型の医療と、新人教育体制の充実に惹かれ志望いたしました。未経験ではありますが、持ち前の明るさと粘り強さを活かし、先輩方から多くのことを吸収して、一日も早く患者様の心と身体の回復に貢献できる言語聴覚士となれるよう努力いたします。

志望動機で避けるべきNG表現と注意点

言語聴覚士の志望動機において、以下のような表現はマイナス評価につながるリスクがあります。

• 「給料が良いから」「休みが取りやすいから」専門職としての誇りや向上心が見えないと判断されます。条件面はあくまで補足程度に留めましょう。
• 「勉強させていただきたい」という受け身特に中途採用では即戦力が求められます。「自ら学び、貢献する」という能動的な姿勢に変換してください。
• 前の職場のネガティブな退職理由「人間関係が悪かった」「忙しすぎた」などの理由は避け、「より患者様と向き合いたい」「専門性を高めたい」といった前向きな理由で伝えます。

また、応募先が病院なら「貴院」、施設なら「貴施設」と正しい敬称を使うことも、社会人としてのマナーとして重要です。言語聴覚士という仕事への誇りと、患者様の人生を支える覚悟を履歴書に込め、採用担当者に信頼される応募書類を作成してください。

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人材会社で15年間、転職・中途採用市場における営業職・企画職・調査職の仕事を経験。
社団法人人材サービス産業協議会「転職賃金相場」研究会の元メンバー
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