履歴書を「盛る」のはどこまでOK? バレるリスクと「アピール」に変える書き方
転職活動において、ご自身の経歴を少しでも良く見せたい、「盛りたい」と思う心理は自然なものです。「このくらい書いてもバレないだろうか」「どこまでが許容範囲なのだろうか」と悩む方も少なくありません。
しかし、採用担当者は日々多くの履歴書を見ており、「盛られた」経歴には非常に敏感です。その「盛りたい」という気持ちが、あなたのキャリアを危険にさらす「経歴詐称」になっていないか、冷静に判断する必要があります。
ここでは、履歴書を「盛る」ことの危険性と、嘘ではなく「事実」を魅力的に伝える「アピール」の技術について解説します。
1. 「盛る(嘘)」と「アピール(事実の強調)」は全く違う
まず、この二つを明確に区別する必要があります。
- 「盛る(嘘)」事実と異なることを記載すること。これは「経歴詐称」にあたります。(例:TOEIC 600点を800点と書く、在籍期間を偽る、持っていない資格を書く)
- 「アピール(事実の強調)」事実に基づき、その成果やプロセス、ご自身の強みを「魅力的に表現」すること。(例:売上達成のプロセスで工夫した点を具体的に書く、チームの成果に対するご自身の貢献を明確にする)
採用担当者が求めているのは、もちろん後者の「アピール」です。
2. なぜ履歴書を「盛る」とバレるのか
「少し盛るくらいならバレないだろう」という考えは非常に危険です。中途採用の選考プロセスにおいて、「盛り(嘘)」が発覚する機会は多くあります。
1. 面接での「深掘り」
採用担当者は、履歴書や職務経歴書に書かれた実績について、「なぜそうなったのか」「具体的にどう行動したのか」「一番苦労した点は?」と、具体的に深掘りする質問をしてきます。嘘や、ご自身が経験していないことは、必ず話に矛盾が生じ、見抜かれます。
2. リファレンスチェック
企業によっては、応募者の同意を得た上で、前職の上司や同僚に、あなたの働きぶりや実績について確認(リファレンスチェック)を行う場合があります。
3. 入社手続きでの発覚
最も発覚しやすいのが、入社時の手続きです。
「雇用保険被保険者証」や「年金手帳」には、過去の加入履歴が記載されています。ここで、「在籍期間」や「隠していた職歴」の嘘は必ず発覚します。
3. 絶対にやってはいけない「盛り方(=経歴詐称)」の例
以下の行為は、発覚した時点で「経歴詐称(けいれきさしょう)」とみなされ、信頼を完全に失い、内定取り消しや、入社後であっても懲戒解雇の対象となる可能性があります。
- 学歴を偽る(例:「大学中退」を「卒業」と書く)
- 職歴(在籍期間・会社名)を偽る(例:「短期間で辞めた職歴」を隠す、「在籍期間」を数ヶ月長くする)
- 資格・スキルを偽る(例:持っていない資格(日商簿記2級など)を「取得」と書く、TOEICの点数を大幅に盛る)
- 実績(数字)を偽る(例:「売上120%達成」を「150%達成」と書く、担当していない業務を「担当した」と書く)
- 役職を偽る(例:「リーダー経験がない」のに「チームリーダーとして従事」と書く)
4. 許容される「盛り方」とは? 事実を「アピール」に変える技術
「盛る」のではなく、ご自身の「事実」を、採用担当者に響くように「見せる」技術が重要です。これは履歴書よりも「職務経歴書」で効果を発揮します。
テクニック1:抽象的な表現を「具体的な数字」に変える
「盛る」必要はありません。事実を「具体的」にするだけで、アピール力は格段に上がります。
- (NG):「売上向上に貢献しました」
- (OK):「前年比110%の売上達成に貢献しました」(※事実であること)
- (NG):「業務を効率化しました」
- (OK):「〇〇のツール導入を提案し、月間10時間の作業工数削減を実現しました」(※事実であること)
テクニック2:「役割」と「行動」を明確にする
たとえチームでの成果であっても、その中でご自身が「どのような役割」を果たし、「どのような工夫(行動)」をしたのかを具体的に書くことで、成果への貢献度をアピールできます。
- (NG):「チームで〇〇を達成しました」
- (OK):「チーム(5名)のリーダーとして、週1回の進捗会議を主催。タスク管理を徹底し、プロジェクトの納期遵守に貢献しました」(※「リーダー」が事実でなくても、「サブリーダーとして」「〇〇の役割担当として」と、ご自身の役割を明確にします)
テクニック3:ネガティブな事実を「ポジティブ」に翻訳する
短所や退職理由も、伝え方次第です。「盛る」のではなく、事実の「側面」を変えて伝えます。
- (短所:「心配性」)→ 「慎重に物事を進められる反面、確認に時間がかかりすぎる点があります。そのため、タスクの期限を設け、スピードも意識するよう努めています」
- (退職理由:「給与が安かった」)→ 「自身の上げた成果が、より正当に評価される環境で、さらに上のレベルに挑戦したいと考えたため」
5. 結論。「盛る」リスクより、「事実を磨く」努力を
履歴書や職務経歴書を「盛る」行為(=嘘をつくこと)は、発覚した際のリスク(信頼の失墜、内定取り消し、懲戒解雇)があまりにも大きすぎます。
採用担当者は、華々しい経歴だけを求めているわけではありません。
たとえ小さな成果であっても、その「事実」に対して、「ご自身がどう考え、どう工夫し、どう行動したのか」というプロセスを、誠実にアピールすることの方が遥かに重要です。
嘘でキャリアを飾るのではなく、ご自身の「事実」を魅力的に伝える「アピール」の技術を磨きましょう。





