履歴書「未経験ではありますが」はNG? 転職で熱意と強みを伝える書き方
転職活動において、これまでのキャリアとは異なる「未経験」の職種や業界に挑戦する際、履歴書の自己PRや志望動機にどう書けばよいか、悩む方は非常に多くいます。
不安な気持ちから、つい**「未経験ではありますが、精一杯頑張ります」**「未経験ではありますが、貴社で一から学ばせていただきたいです」といった一文を書いてしまいがちです。
しかし、採用担当者の視点に立つと、この**「未経験ではありますが」**という言葉は、必ずしもポジティブには映りません。
ここでは、未経験の分野に応募する際に、あなたの熱意とポテンシャルを「強み」として伝えるための、履歴書の正しい書き方を解説します。
1. なぜ「未経験ではありますが」がマイナス印象になるのか
採用担当者は、日々多くの履歴書を見ています。その中で「未経験ではありますが」というフレーズは、以下のようなネガティブな印象を与えてしまうリスクがあります。
- 「言い訳」「謝罪」に聞こえる冒頭からご自身の「足りない部分(未経験であること)」を謝罪しているように聞こえ、自信のなさが伝わってしまいます。
- 「受け身(パッシブ)」な姿勢に見える「(未経験だから)教えてもらうのが当たり前」「一から学ばせてほしい」という、受け身の姿勢に見えがちです。企業は学校ではないため、「学ぶ」姿勢だけの人材を採用する余裕はありません。
- 他の応募者と「差別化」ができない未経験の応募者の多くが、同じような表現を使います。これでは、採用担当者の記憶に残りません。
2. 企業が「未経験者」に本当に求めていること
企業が「未経験者可」として求人を出す場合、もちろん「即戦力」のスキルは期待していません。その代わり、以下の3つのポイントを厳しくチェックしています。
1. ポータブルスキル(持ち運び可能な能力)
前職(現職)の経験が、たとえ異業種・異職種であっても、次の仕事に活かせる「汎用的なスキル」があるかどうかを見ています。
- 例:
- 営業職 → コミュニケーション能力、課題発見力、目標達成意欲
- 事務職 → 正確性、スケジュール管理能力、PCスキル
- 販売職 → 対人折衝能力、提案力、計数管理能力
2. 学習意欲(行動を伴う熱意)
「頑張ります」という言葉だけではなく、「この仕事に就くために、すでに行動を起こしているか」という、具体的な「学習意欲」を見ています。
3. 志望度の高さ(なぜ、ウチなのか)
「なぜ、数ある未経験OKの会社の中から、自社を選んだのか」という、論理的な志望動機と熱意を求めています。
3. 「未経験」を「強み」に翻訳する書き方の3ステップ
履歴書では、「未経験である」という事実を隠す必要はありません。大切なのは、それを「補って余りある強み」を提示することです。
ステップ1:ポータブルスキル(強み)を明確にする
まず、ご自身のこれまでのキャリアを棚卸しし、応募先の仕事で活かせる「強み」を具体的に見つけ出します。
ステップ2:学習意欲を「行動」で示す
「頑張ります」ではなく、「(その仕事のために)今、何をしているか」を具体的に書きます。
(例:「現在、〇〇(資格)の取得に向け勉強中です」「〇〇(関連書籍)を読み、〇〇の知識を深めています」)
ステップ3:「貢献」の視点でまとめる
「学びたい」ではなく、「(ステップ1と2を活かして)入社後にどう貢献できるか」という視点で、志望動機や自己PRを締めくくります。
4. 履歴書「自己PR・志望動機」での言い換え例文
「未経験ではありますが」という弱い表現を、積極的なアピールに変える「言い換え例文」を紹介します。
NGな例文(受け身で、熱意が伝わらない)
「未経験ではありますが、貴社の〇〇という業務に興味を持ちました。一日も早く戦力になれるよう、何事も吸収し、精一杯頑張ります。」
OKな例文1:(営業職 → ITエンジニア職に応募)
「ITエンジニア職は未経験ですが、前職の営業で培った**『顧客の課題をヒアリングし、解決策を論理的に提案する力』**は、要件定義などの業務で活かせると考えております。
また、現在、基本情報技術者の資格取得に向け勉強中であり、貴社の〇〇(事業)の発展に貢献したいと強く志望しております。」
- ポイント:
- 「未経験ではありますが」→**「〇〇職は未経験ですが」**と、事実を述べつつ、謝罪のニュアンスを消しています。
- 「頑張ります」→**「具体的なスキル(課題ヒアリング力)」と「具体的な行動(資格勉強)」**で、熱意とポテンシャルを示しています。
OKな例文2:(販売職 → 事務職に応募)
「事務職の経験はありませんが、現職の販売で培った**『迅速かつ正確な処理能力』と『PCスキル(Excelでの売上管理)』を活かし、貴社の業務効率化に貢献したいと考えております。
また、前職ではクレーム対応も担当しており、『冷静な対応力』**は電話応対などでも役立つと自負しております。」
- ポイント:
- 「未経験」→**「事務職の経験はありませんが」**と、具体的に表現。
- 事務職で求められる「正確性」「PCスキル」「対応力」を、販売職の経験から抽出し、アピールできています。
5. 「学びたい」ではなく「貢献したい」という姿勢を
履歴書で「未経験」をアピールする際、最も重要な心構えは、「(御社で)学ばせてください」という姿勢を見せないことです。
企業は「学校」ではありません。採用担当者は、「学んでくれる人」ではなく、「(未経験なりに)どう貢献してくれる人か」を見ています。
「未経験の分野ではありますが、前職の〇〇のスキルを活かし、〇〇の分野で貴社に貢献したい」
このように、ご自身の「強み」と「入社後の貢献」をセットで伝えることが、書類選考を通過するための鍵となります。





