履歴書の「返却義務」。企業は応募書類を返すべき? 個人情報の扱いを解説
転職活動において、不採用となった場合、「提出した履歴書や職務経歴書は返却してもらえるのだろうか?」と疑問に思う方は少なくありません。
履歴書には顔写真、住所、経歴といった重要な個人情報が詰まっているため、返却されないとなると、その後の扱いに不安を感じるのは当然のことです。
しかし、応募書類の「返却」については、応募者が知っておくべき「企業の事情」と「法律上のルール」があります。
ここでは、履歴書の返却義務に関する疑問と、個人情報の取り扱いについて詳しく解説します。
結論:企業に履歴書の「返却義務」は法律上“ない”
まず、最も重要な結論から言いますと、法律(個人情報保護法など)において、企業が不採用者の応募書類(履歴書など)を返却しなければならないという「義務」は定められていません。
応募書類の返却は、あくまで企業の「任意」による対応(サービス)の一つです。
したがって、応募者側から「返却してください」と法的に要求できる権利は、原則としてない、と認識しておくことが大切です。
なぜ返却されないケースが多いのか(企業の事情)
「個人情報なのだから、返却するのが当たり前では?」と思うかもしれませんが、企業が返却に積極的でないのには、主に二つの実務的な理由があります。
1. 返送にかかるコストと手間
人気企業や大規模な募集では、応募者の数は何百人、何千人にもなります。
その全ての不採用者に、書類を封筒に入れ、宛名を書き、郵送費を負担して返却する作業は、企業にとって非常に大きな「コスト(人件費・郵送費)」と「手間」になります。
2. 返送時の「個人情報漏洩リスク」
これが最大の理由です。もし、返送する過程で「宛名を間違えて、別の人に送ってしまった(誤送付)」、あるいは「郵送事故で紛失した」となれば、それは企業にとって重大な「個人情報漏洩事故」となります。
返送するリスクを負うよりも、社内で責任を持って「確実に破棄(廃棄)」する方が、企業にとっては最も安全な個人情報の管理方法となるのです。
返却されない履歴書(個人情報)はどうなるのか?
「返却されないなら、個人情報が漏洩するのでは」と不安になるかもしれませんが、心配は不要な場合がほとんどです。
まともな企業であれば、「個人情報保護法」に基づき、応募者の個人情報を厳重に管理する義務を負っています。
返却されない応募書類は、採用活動が終了した後、企業が定めた社内規定(例:「選考終了後、〇ヶ月以内に」など)に基づき、シュレッダー処理や専門業者による溶解処理といった、復元不可能な方法で適切に破棄されるのが一般的です。
まず確認すべきは「募集要項」の記載
応募書類の扱いについては、必ず「募集要項」や「採用ページのプライバシーポリシー」などに記載があります。応募する前に、ここを確認するのが基本です。
ケース1:「応募書類は返却いたしません」と明記
これが、現代の採用活動において最も一般的なケースです。
この場合、企業は「返却しない代わりに、責任を持って破棄します」と宣言しています。これに同意して応募している以上、後から返却を要求するのはマナー違反であり、「募集要項を読んでいない人だ」というマイナスの印象しか与えません。
ケース2:「返却希望者はお申し出ください」と記載
企業が返却に対応しているケースです。この場合は、募集要項の指示に従って、返却を依頼すれば問題ありません。
ケース3:何も記載がない
この場合も、原則として「返却されない可能性が高い」と考えておくのが無難です。
応募者側ができる「最善の対策」
「手書きで一枚しか作っていないから、返してほしい」という事態に陥らないためにも、応募者側ができる最大のリスク管理は、以下の2点です。
1. 応募書類は「パソコン(PC)」で作成する
パソコンで履歴書を作成し、データ(マスター)を保存しておけば、万が一不採用になっても、データを修正して次の応募にすぐに使えます。
2. 提出前に必ず「コピー(控え)」を取る
もし手書きで作成した場合でも、提出前に必ず「コピー」を取り、「控え」を手元に残しておきましょう。これは、面接対策として、「自分は何を書いたか」を確認するためにも必須の作業です。
結論:返却は期待せず、「控え」の管理を徹底しよう
履歴書は「返却されないもの」と考えるのが、現代の転職活動の基本です。
返却の有無に一喜一憂(いっきいちゆう)せず、ご自身の「控え」をしっかり管理し、次の応募や面接対策に備える方が、遥かに建設的と言えます。





