履歴書の「犯罪歴」。賞罰欄への正しい書き方と「書かない」場合の重大リスク
履歴書を作成する際、フォーマット(様式)によっては「賞罰(しょうばつ)」という欄が設けられていることがあります。「賞(受賞歴)」については書くことがなくても、「罰(犯罪歴)」について、どこまで書くべきか、あるいは書かなくても良いのか、悩む方は少なくありません。
これは非常にデリケートな問題ですが、同時に、あなたのキャリアにおいて重大な影響を与えかねない項目でもあります。
採用担当者は、この欄から応募者の「信頼性」や「社会的な規範意識」を確認しようとしています。
ここでは、履歴書における「犯罪歴(罰)」の正しい定義と、その書き方、そして万が一「書かなかった(隠した)」場合のリスクについて、詳しく解説します。
1. 履歴書に書くべき「罰(犯罪歴)」の正しい定義
まず、履歴書の「賞罰」欄に記載すべき「罰」とは、何を指すのでしょうか。
結論から言いますと、これは**「刑事罰を受けた経歴(=前科)」**を指します。
具体的には、裁判で有罪判決が確定した、以下の刑罰が該当します。
- 懲役刑(ちょうえきけい)
- 禁錮刑(きんこけい)
- 罰金刑(ばっきんけい)
(※執行猶<b></b>猶予(しっこうゆうよ)がついた場合も、有罪判決であることに変わりはないため、「罰」に含まれます)
2. 「これは書かなくて良い?」迷いやすいケースの判断
「罰」の定義があいまいで、記載すべきか迷うケースについて整理します。
ケース1:交通違反(スピード違反、駐車違反など)
- 原則として、記載の必要はありません。
- スピード違反や駐車違反などで支払う「反則金(青キップ)」は、刑事罰ではなく**「行政罰」**にあたるため、「罰」には該当しません。
- **(注意)**ただし、飲酒運転や重大な人身事故、あるいは反則金を支払わず「赤キップ」を切られ、裁判で「罰金刑」や「懲役刑」が確定した場合は、「刑事罰(前科)」となるため、記載義務が発生します。
ケース2:逮捕されたが、不起訴になった(前歴)
- 記載の必要はありません。
- 逮捕されたり、警察の捜査対象になったりした事実は「前歴(ぜんれき)」と呼ばれます。
- 「前歴」は、裁判で有罪判決が確定した「前科」とは明確に区別されます。「罰」には該当しないため、履歴書に書く必要はありません。
ケース3:少年時代の非行
- 記載の必要はありません。
- 少年法に基づき、少年(20歳未満)の時の非行歴などは、その後の更生を妨げないよう保護されています。これらは「罰(前科)」とは異なるため、履歴書への記載は不要です。
3. 「賞罰」欄への具体的な書き方
履歴書に「賞罰」欄がある場合、どのように記載するのが正しいのでしょうか。
パターン1:賞も罰も「ない」場合(最も一般的なケース)
これが、大多数の応募者にあてはまるケースです。
空欄にせず、必ず「ない」という事実を明記します。
【書き方】
賞罰
なし
(※「特になし」でも間違いではありませんが、「なし」と簡潔に記載するのが一般的です)
パターン2:「罰(犯罪歴)」が「ある」場合
もし、先に述べた「刑事罰(前科)」に該当する事実がある場合は、正直に記載する必要があります。
【書き方】
賞罰
なし
(※「罰」がある場合は、「賞」について「なし」と記載した後、行を改めて「罰」の内容を記載します)
(記載例:懲役・執行猶<b></b>猶予の場合)
賞罰
賞 なし
罰 〇〇年〇月 〇〇罪により 懲役〇年 執行猶<b></b>猶予〇年
(※すでに執行猶<b></b>猶予期間が満了している場合は「(刑期満了)」と追記することもあります)
(記載例:罰金刑の場合)
賞罰
賞 なし
罰 〇〇年〇月 〇〇(罪状)により 罰金刑
4. 犯罪歴(前科)を「書かない(隠した)」場合の重大なリスク
これが、この問題における最大のポイントです。
「書いて不利になるくらいなら、書かずに隠しておきたい」と考えるのは自然な心理かもしれません。しかし、その行為(賞罰欄に「なし」と嘘を書くこと)には、あまりにも大きなリスクが伴います。
リスク:発覚した場合、「経歴詐称」として懲戒解雇になる
もし、犯罪歴を隠して(賞罰欄に「なし」と記載して)入社した場合、それが後から発覚すると、**「経歴詐称(けいれきさしょう)」**という重大な契約違反にあたります。
多くの企業の就業規則では、経歴詐称は「懲戒解雇(ちょうかいかいこ)」という、最も重い処分の対象と定められています。
目先の書類選考を通過するために嘘をついた結果、入社後に全てを失う(職歴に「懲戒解雇」という傷がつく)可能性があるのです。
なぜ発覚するのか?
「言わなければバレないのでは」と思うかもしれませんが、企業が調査する可能性はゼロではありません。
(例:リファレンスチェック(前職調査)、あるいは入社後の何らかの手続きや、同僚との会話などから発覚するケース)
5. (補足)「刑の消滅」について
法律上、刑の執行が終わってから一定期間(罰金刑なら5年、執行猶<b></b>猶予期間の満了から5年など)、再び罰金以上の刑を受けずに過ごした場合、「刑が消滅」し、法的な記載義務がなくなるという考え方もあります。(※刑の消滅)
ただし、この解釈は非常に専門的であり、個別のケースによって異なります。「もう時効だから大丈夫」とご自身で安易に判断するのは危険です。
(※特に、金融業界や警備業など、特定の職種では、刑の消滅に関わらず、より厳格な申告が求められる場合があります)
6. 結論。「賞罰」欄には、誠実に向き合う
履歴書の「賞罰」欄は、大多数の人は「なし」と記載する項目です。
しかし、もし「罰」に該当する事実がある場合は、その事実を隠して「なし」と嘘を書くことは、「経歴詐称」という重大なリスクを負う行為です。
一時的な不利益を恐れて嘘をつくよりも、事実を誠実に記載した上で、面接などで反省の意と、今後の仕事への熱意を伝える方が、長期的にはご自身を守ることに繋がります。
履歴書には、必ず「誠実」かつ「正確」な情報を記載するよう、徹底しましょう。





