履歴書の「病院」勤務経験。「入社」と「入職」の正しい書き分け方
転職活動(中途採用)で履歴書を作成する際、病院やクリニック、介護施設といった「医療・福祉機関」での勤務経験をどう書けばよいか、悩む方は少なくありません。
特に、一般的な企業とは組織の形態が異なるため、「職歴欄に**『入社』**という言葉を使って良いのだろうか?」と迷うのは当然のことです。
「たかが言葉の違い」と思うかもしれませんが、履歴書は公的な応募書類です。採用担当者(特に医療・福祉業界)は、こうした細かな部分からも、応募者の「ビジネスマナーへの理解度」や「仕事の正確性」を見ています。
ここでは、病院(医療機関)の経歴について、「入社」と「入職」の正しい使い分けと、履歴書への書き方を詳しく解説します。
1. 【最重要】「入社」と「入職」の根本的な違い
まず、この二つの言葉を明確に区別する必要があります。
どちらを使うべきかは、あなたが勤務していた(または、これから応募する)組織の**「法人格(ほうじんかく)」**によって決まります。
「入社」を使うケース
「入社」は、文字通り**「会社」に入る場合に使います。
一般的な「営利企業」**がこれにあたります。
(例:株式会社〇〇、有限会社〇〇 など)
「入職」を使うケース
一方、「入職(にゅうしょく)」は、「職務に就く」という意味合いで使われ、主に**「会社」という形態をとらない「非営利団体」や「公的機関」**などで使用されます。
病院やクリニック、福祉施設の多くは、こちらに該当します。
- (例):
- 医療法人〇〇会(いりょうほうじん)
- 社会福祉法人〇〇会(しゃかいふくしほうじん)
- 学校法人〇〇大学(大学病院など)
- 国立病院機構、県立〇〇病院、市立〇〇病院(公的機関)
- NPO法人(特定非営利活動法人)
2. 運営母体(法人名)と施設名の正しい書き方
「入社」「入職」の使い分けと合わせて、職歴欄には必ず「正式名称」を記載するのがビジネスマナーです。
「〇〇病院」や「△△クリニック」といった施設名だけでなく、その施設を運営している法人の「正式名称」から記載します。運営母体の法人格が分からない場合は、病院の公式ホームページの「法人概要」や「沿革」のページを見れば、必ず記載があります。
- (NG例):〇〇病院 入社
- (OK例):医療法人社団〇〇会 〇〇病院 入職
3. 辞める場合は「退社」と「退職」どちらを使うか
「入る時」と同様に、「辞める時」の言葉も使い分けるのがマナーです。
- **「入社」**した場合 → **「退社」**を使うのが一般的です。
- **「入職」**した場合 → **「退職(たいしょく)」**を使います。
「会社」ではない組織(医療法人など)を辞める場合に、「退社」と書くと不自然になります。
迷った場合の「安全策」
「退職(たいしょく)」という言葉は、「職を退く」という意味であり、営利企業(会社)を辞めた場合にも使える、より汎用(はんよう)性の高い言葉です。
もし、使い分けに迷った場合や、職歴欄の表記をスッキリと統一したい場合は、どちらのケースでも「退職」という言葉を使うと覚えておくと便利です。(例:「株式会社〇〇 入社」→「一身上の都合により退職」)
4. 【例文】履歴書「職歴」欄への具体的な書き方
上記のルールを踏まえると、職歴欄には以下のように記載します。(※年号は、履歴書全体で西暦か和暦かに統一します)
記載例1:医療法人の病院に勤務した場合(看護師)
(学歴)
((学歴を記載))
(職歴)
2018年 4月 医療法人社団〇〇会 △△総合病院 入職
(看護部(〇〇病棟)に配属。看護師として勤務)
2024年 10月 一身上の都合により退職
以上
記載例2:株式会社が運営するクリニックの場合(医療事務)
(職歴)
2020年 5月 株式会社〇〇メディカル(△△クリニック) 入社
(医療事務として、受付およびレセプト業務に従事)
2025年 3月 現在に至る
以上
(※運営母体が「株式会社」のため、「入社」を使い、最後は「現在に至る」と「以上」で締めくくります)
記載例3:市立病院(公的機関)の場合(理学療法士)
(職歴)
2019年 4月 〇〇市立〇〇市民病院 入職
(リハビリテーション科に配属。理学療法士として勤務)
2024年 11月 一身上の都合により退職
以上
5. (補足)一般企業への転職。「病院」経験をどうアピールするか
「病院」での勤務経験は、たとえ異業種(一般企業)への転職であっても、非常に高く評価される「強み」の宝庫です。
これらの「強み」は、履歴書の**「自己PR」欄や、セットで提出する「職務経歴書」**で具体的にアピールしましょう。
病院経験からアピールできる「強み」の例
- 高い「責任感」と「正確性」→ 患者様の命や健康を預かる、1円単位のミス(レセプト)も許されない、という環境で培(つちか)った「正確な業務遂行能力」。
- 高い「コミュニケーション能力」・「調整力」→ 患者様やそのご家族だけでなく、医師、看護師、薬剤師、技師など、多様な「他職種」と日常的に連携・調整してきた経験。
- 「精神的な強さ」(ストレス耐性)→ 緊急時の対応や、プレッシャーのかかる状況でも、冷静に業務を遂行できる精神力。
自己PR欄でのアピール例文(異業種:事務職向け)
「前職の病院(医療事務)では、月間〇〇件のレセプト(診療報酬明細書)作成を担当し、1円のミスも許されない環境で『正確性』と『責任感』を培(つちか)いました。また、医師や看護師、患者様との間で、常に円滑なコミュニケーションの『橋渡し役』を担ってきました。貴社の〇〇(事務・管理)業務においても、この正確性と調整力を活かし、業務をサポートします。」
6. 結論。応募先の「法人格」を確認する丁寧さが鍵
履歴書における「入社」「入職」の使い分けは、応募先(または前職)の「法人格(株式会社か、医療法人か)」を確認するだけで、誰でも正しく行うことができます。
この「ひと手間」を惜しまない丁寧な姿勢こそが、医療・福祉の現場(あるいは一般企業)で求められる「正確性」や「信頼性」をアピールする、あなたの最初の一歩となります。





