履歴書の職歴欄における「入社」と「入職」の正しい使い分けと組織別の記載ルール
転職活動において履歴書を作成する際、職歴欄の書き出しを「入社」とするか「入職」とするかで迷う方は少なくありません。一般企業であれば入社で問題ありませんが、病院や学校、公的機関など、株式会社以外の組織での勤務経験がある場合や、そういった組織へ応募する場合には、適切な用語を選ぶ必要があります。
言葉の使い分け一つで、その業界や組織に対する理解度やビジネスマナーの有無が判断されることもあります。ここでは履歴書の職歴欄において、組織の形態ごとにどのような用語を使用するのが正解なのか、退職時の表現と合わせて詳しく解説します。
一般的な会社組織の場合は「入社」と「退社」を使用します
株式会社や有限会社、合同会社など、営利を目的とした一般的な企業(会社組織)での経歴を記載する場合は、「入社」と「退社」を使用するのが基本ルールです。最も多くの人が使用する表現であり、ビジネスシーンにおけるスタンダードです。
記入例としては、年月の横に「株式会社〇〇 入社」と記載し、辞める際には「一身上の都合により退社」とします。ここで注意したいのは、銀行の場合です。銀行は「入行」という言葉が使われることもありますが、履歴書においては法人格(株式会社)であることが多いため、「入社」と書いても間違いではありません。ただし、銀行業界への転職で、より専門的な慣習に合わせたい場合は「株式会社〇〇銀行 入行」と書くことも許容されています。基本的には会社組織=入社と覚えておけば問題ありません。
病院や学校などの非営利組織では「入職」と「退職」が適切です
医療法人(病院・クリニック)、社会福祉法人(介護施設など)、学校法人(私立学校・幼稚園・専門学校)、NPO法人などの非営利組織での経歴を記載する場合は、「入社」という言葉は不適切となります。これらは会社ではないため、職に就くという意味の「入職」を使用するのが正しいマナーです。
記入例としては、「医療法人〇〇会 △△病院 入職」「社会福祉法人〇〇会 入職」となります。これに対応して、辞める際も「退社」ではなく「退職」という言葉を選びます。「一身上の都合により退職」と記載することで、組織の形態に合わせた適切な表現となります。特に医療・福祉・教育業界への転職を目指す場合は、この使い分けができているかどうかが、業界常識を持っているかの判断材料になるため注意が必要です。
公務員や官公庁の場合は「入庁」や「奉職」などが使われます
公務員として役所や省庁に勤務していた場合、あるいはそこへ応募する場合はさらに表現が異なります。市役所や県庁、省庁などの官公庁であれば、「入庁」という言葉が一般的です。「〇〇市役所 入庁」「〇〇省 入省」といった書き方になります。
また、警察官や消防士、公立学校の教員などの場合、伝統的に「奉職(ほうしょく)」という言葉が使われることもあります。これは「公の職に奉ずる(つつしんで就く)」という意味です。しかし、近年では少し堅苦しい印象を与えることもあるため、シンプルに「入職」や「採用」、「勤務」とするケースも増えています。迷った場合は「入庁」や、組織名を入れた後の「採用(例:〇〇県警察本部 採用)」を使うのが無難です。辞める際は「退職」または「辞職」を使用します。
法律事務所や会計事務所などは「入所」を使用します
弁護士事務所、税理士事務所、会計事務所、特許事務所などの「事務所」と呼ばれる組織に勤務する場合、または監査法人などの場合は、「入所」という言葉を使います。「弁護士法人〇〇法律事務所 入所」といった形です。
また、〇〇組合や〇〇会といった団体職員の場合も、組織の規模や形態によりますが、「入職」あるいは「入所」、または「入会(職員として採用された場合)」などが使われます。もっとも汎用性が高く失礼にならないのは「入職」ですので、事務所系であれば「入所」、それ以外の非営利団体であれば「入職」と使い分けると良いでしょう。辞める際は、いずれの場合も「退職」と記載します。
異なる組織形態が混在する場合の履歴書の書き方
転職回数が複数あり、株式会社での経験と病院での経験が混在しているようなキャリアの場合はどうすればよいでしょうか。この場合は、それぞれの行(経歴)ごとに、その組織に合わせた正しい用語を使い分けるのが正解です。
例えば、1社目が株式会社であれば「株式会社A 入社」「一身上の都合により退社」とし、2社目が病院であれば「医療法人B病院 入職」「一身上の都合により退職」と記載します。用語が統一されていないように見えるかもしれませんが、それぞれの組織に対して正しい呼称を使っているため、むしろ「正確な知識がある」という評価につながります。無理にすべてを「入社」や「入職」に統一する必要はありません。
履歴書は公的な書類としての側面を持つため、組織の形態に即した正確な用語を使うことが、採用担当者への敬意と信頼感につながります。応募先の組織形態を確認し、適切な言葉を選んで記載してください。





