農家・農業の経験を履歴書にどう書く?職歴欄の正しい書き方とアピール術
農業に従事していた経験は、体力や忍耐力だけでなく、段取り力や経営感覚など、ビジネスに直結する多くのスキルを内包した立派なキャリアです。しかし、一般的な会社員とは働き方や雇用形態が異なるケースも多く、いざ転職活動を始める際に履歴書の職歴欄にどのように記載すればよいのか迷う方は少なくありません。
農家から一般企業へ転職する場合、あるいは農業法人から別の業界へ移る場合など、シチュエーションによって適切な表現は異なります。ここでは、農業経験を履歴書の職歴欄に正しく記載するルールや、農業で培った強みを魅力的に伝えるための書き方について詳しく解説します。
農業経験は立派な「職歴」として記載できる
まず大前提として、農業に従事していた期間は、履歴書に「職歴」として堂々と記載して問題ありません。特に数年間にわたり定常的に従事し、生計を立てていたのであれば、それは空白期間(ブランク)ではなく、立派な実務経験です。
ただし、書き方には注意が必要です。「株式会社」などの組織に属していた場合と、個人事業主として自営していた場合、あるいは実家の家業を手伝っていた場合では、使用する用語が異なります。自身の状況に合わせた適切な言葉を選ぶことで、採用担当者に正確な経歴とビジネスマナーを伝えることができます。
【ケース別】履歴書職歴欄への正しい書き方と例文
農業経験の書き方は、雇用形態によって大きく3つのパターンに分かれます。ご自身の状況に当てはまる書き方を参考にしてください。
1. 農業法人に勤務していた場合(正社員・パート)
農業生産法人などの会社組織に雇用されていた場合は、一般的な企業と同じく「入社」「退社」を使用します。
【記入例】
平成28年 4月 株式会社〇〇ファーム 入社
生産部にてトマト・キュウリの栽培管理および出荷業務を担当
令和 3年 3月 一身上の都合により退社
2. 個人事業主として自営(独立)していた場合
自分で農家として独立・起業していた場合は、会社に雇われていたわけではないため「入社」ではなく**「開業」「廃業」、あるいは「従事」**という言葉を使います。
【記入例:開業届を出していた場合】
平成28年 4月 個人事業主として農業を開業(屋号:〇〇農園)
露地野菜の生産・販売、直売所の運営を行う
令和 3年 3月 一身上の都合により廃業
3. 実家の農業を手伝っていた場合(家業手伝い)
実家が農家で、家族従業者として働いていた場合は、**「家業に従事」**と記載するのが最も適切で丁寧な表現です。単に「手伝い」と書くよりも、責任を持って業務に携わっていた印象を与えることができます。
【記入例】
平成28年 4月 家業である農業(水稲・果樹栽培)に従事
収穫作業、選果、出荷調整業務を担当
令和 3年 3月 一身上の都合により退職
※家業の場合、「退社」という言葉は使わず「退職」とするのが一般的です。
職歴欄には「栽培品目」や「規模」を具体的に記載する
職歴欄に「農業に従事」とだけ書いても、採用担当者には具体的な仕事内容や忙しさが伝わりません。農業の仕事は作物の種類や規模によって業務内容が大きく異なるため、カッコ書きや次の行を使って詳細を補足することが重要です。
記載すべきポイント:
- 栽培作物: 米、露地野菜、施設園芸、果樹、畜産など
- 規模感: 耕作面積(〇ヘクタール)、ハウスの棟数、出荷量など
- 担当業務: 生産管理、収穫、出荷、販売ルート開拓、農業機械の操作、経理など
【より具体的な記入例】
平成28年 4月 家業である農業に従事
[主な業務]
・キャベツ、レタスの露地栽培および収穫(作付面積:約3ha)
・大型トラクターを使用した土壌作り
・JAおよび市場への出荷調整、品質管理
このように具体的に書くことで、体力だけでなく、管理能力や機械操作のスキルがあることもアピールできます。
一般企業への転職でアピールできる農業のスキル
農業から異業種(一般企業)へ転職する場合、農業経験で培ったスキルをビジネス用語に変換して伝えることが書類選考突破の鍵となります。
計画性と段取り力(PDCAサイクル)
農業は天候や自然環境という不確定要素の中で、種まきから収穫までのスケジュールを逆算して計画を立てる仕事です。「状況に応じて柔軟に段取りを組み直す力」や「先を見越して行動する計画性」は、どのようなビジネスでも通用するポータブルスキルです。
忍耐力と完遂力
収穫期などの繁忙期に朝早くから夜遅くまで作業をやり遂げる体力や、思うような収穫が得られない時でも工夫を凝らして改善を図る忍耐力は、仕事への責任感として高く評価されます。「厳しい環境でも逃げずにやり抜く力」は、採用担当者に安心感を与えます。
経営視点とコスト意識(自営・家業の場合)
特に自営や家業で経営に関わっていた場合、資材費の管理や販売価格の決定、利益率の計算など、経営者視点で物事を考える習慣が身についているはずです。単なる作業者ではなく、利益を意識して動ける人材であることを自己PRで強調しましょう。
まとめ
農業の経験は、書き方次第で強力なアピール材料になります。
雇用形態に合わせた正しい用語を使い、具体的な業務内容とそこから得たスキルを言語化することで、「異業種でも活躍できる人材」であることを履歴書で証明してください。





