教員の求人において、履歴書「志望動機」の書き方のポイントと具体的な例文
教員採用試験や私立学校の求人において、履歴書の「志望動機」は合否を分ける極めて重要な項目です。教育への熱意はもちろんですが、採用側は「なぜ教師なのか」「なぜこの学校(自治体)なのか」「どのような教育貢献ができるのか」という3点を論理的に確認しています。
ここでは、採用担当者の視点を踏まえた志望動機の書き方のポイントと、状況別(新卒・経験者・民間企業出身など)の具体的な例文を紹介します。
教員の志望動機で採用担当者が見ている3つのポイント
例文を見る前に、評価される志望動機の構成要素を理解しましょう。以下の3つが組み込まれていることが、説得力のある文章の条件です。
1. 教育観と教師を目指す原点
「なぜ教師になりたいのか」という根本的な理由です。自身の学生時代の経験や、教育に対する想いを具体的に述べます。ここがブレていると、困難な教育現場で続けていけるか不安視されてしまいます。
2. その学校(自治体)を選んだ明確な理由
「教師になれればどこでも良い」という姿勢はマイナスです。
- 公立学校の場合: その自治体が掲げる教育施策や、求める教師像への共感。
- 私立学校の場合: 建学の精神(教育理念)や、独自のカリキュラム、校風への共感。これらをリサーチし、自分の教育観と合致していることを伝えます。
3. 自身の経験をどう還元できるか(貢献意欲)
「勉強させていただきたい」という受け身の姿勢ではなく、自分のスキルや経験(部活動指導、ICTスキル、英語力、社会人経験など)を活かして、児童・生徒の成長にどう貢献できるかを提示します。
【状況別】教員の履歴書 志望動機 例文集
ご自身の状況に合わせて、以下の例文をアレンジして活用してください。
ケース1:新卒・未経験から教員を目指す場合
【ポイント】 教育実習での経験や、具体的なエピソードを交えて熱意を伝えます。
【例文】
私は「生徒一人ひとりの自己肯定感を高める教育」を実現したいと考え、貴校を志望いたしました。
教育実習では、勉強が苦手で自信を失っていた生徒に対し、小さな成功体験を積み重ねる指導を心がけました。その結果、生徒が自ら学習に取り組む姿を見て、個に寄り添う指導の重要性を痛感しました。
貴校の「個性を尊重し、自立心を育む」という教育理念は、私の目指す教育像と深く合致しております。大学で学んだ最新の英語教育法と、自身の留学経験を活かし、生徒が世界に視野を広げるきっかけを作れる教師として貢献したいと考えております。
ケース2:講師(常勤・非常勤)から正規教諭を目指す場合
【ポイント】 実務経験で得たスキルと、正規教諭として長期的に関わりたいという責任感をアピールします。
【例文】
現在は非常勤講師として公立中学校で3年間、理科の指導にあたっております。授業では、実験を通じて生徒の知的好奇心を引き出す工夫を凝らし、理科嫌いの生徒を減らすことに注力してきました。
しかし、教科指導だけでなく、学級経営や部活動指導を通じて、生徒の人間的成長により深く、長期的に関わりたいという思いが強くなり、正規教員を志望いたしました。
〇〇市の掲げる「探究的な学び」の推進に貢献できるよう、これまでの経験を活かしつつ、ICT機器を活用した分かりやすい授業づくりに尽力いたします。
ケース3:民間企業から教員へ転職する場合
【ポイント】 社会人経験で培ったスキル(プレゼン力、対人折衝力など)が、教育現場でどう役立つかを具体的に伝えます。
【例文】
私は5年間、IT企業の営業職として勤務してまいりましたが、新人研修を担当した際、若手社員の成長を支えることに大きなやりがいを感じ、教育の道を志しました。
変化の激しい社会において、子どもたちには「自ら課題を見つけ解決する力」が必要だと感じています。民間企業で培ったプレゼンテーション能力や、プロジェクトを推進する課題解決能力は、生徒のキャリア教育や探究学習の指導において必ず活かせると確信しております。
貴校が注力されているアクティブ・ラーニングの推進に、社会人としての視点を取り入れ、実社会と学校を繋ぐ役割を果たしたいと考えております。
ケース4:他校(私立)からの転職の場合
【ポイント】 前職での実績をアピールしつつ、なぜ環境を変える必要があるのか(ポジティブな理由)を明確にします。
【例文】
現在は私立高校の国語科教諭として、進学指導やバスケットボール部の顧問を務めております。進学実績の向上に尽力してまいりましたが、貴校の「文武両道」を高いレベルで実践し、人間教育を重視する校風に強く惹かれ、志望いたしました。
特に、貴校の伝統行事や部活動を通じた人格形成の取り組みは、私が教師として最も大切にしたい「心の教育」を体現できる環境であると感じております。前任校で培った進路指導のノウハウと、部活動指導での粘り強さを活かし、貴校の生徒の夢の実現を全力でサポートいたします。
公立と私立で書き分ける際の注意点
志望動機を書く際、応募先が公立か私立かで意識すべきポイントが異なります。
公立学校への応募の場合
- キーワード: 「地域貢献」「公平性」「多様性」「自治体の教育目標」
- ポイント: その自治体(都道府県・市)がどのような教育課題(不登校対策、ICT教育、英語教育など)に力を入れているかを調べ、それに貢献できることをアピールします。「地域の子どもたち全員の成長を支えたい」という公教育への使命感が重要です。
私立学校への応募の場合
- キーワード: 「建学の精神」「独自カリキュラム」「学校ブランド」「経営視点」
- ポイント: 私立学校は独自の教育理念(建学の精神)に基づいています。これに共感していることが絶対条件です。また、私立は生徒に選ばれなければ経営が成り立たないため、学校の魅力向上(広報活動や進学実績、部活実績など)に貢献できる人材が好まれます。
避けるべきNGな志望動機
以下のような内容は、採用担当者にマイナスな印象を与える可能性があるため避けましょう。
- 「子供が好きだから」のみ
- 好きであることは前提条件です。プロとしてどう指導するかが問われます。
- 「恩師に憧れて」のみ
- きっかけとしては良いですが、現在の自分がどのような教育を行いたいかというビジョンが必要です。
- 「安定しているから」「休みが取れそうだから」
- 待遇面を理由にすると、教育への情熱や覚悟が足りないと判断されます。
- 「前の学校が合わなかった」
- ネガティブな退職理由は避け、「貴校でなら理想の教育ができる」という前向きな理由に変換しましょう。
履歴書の志望動機は、教育者としてのあなたの「信念」と「実力」を伝える最初の授業です。
自身の経験を棚卸しし、応募する学校の特徴と結びつけることで、熱意の伝わる志望動機を作成してください。





