看護師の転職で「給料アップ」を勝ち取る書類術。希望額を通すためのアピールとNG表現
「今の給料に不満があるから転職したい」
「次は絶対に年収500万円以上欲しい」
看護師が転職を考える理由として、給料アップは最も切実で、かつ正当な理由です。しかし、この「お金が欲しい」という本音を、履歴書や面接でそのままストレートに伝えてしまうと、採用担当者に敬遠され、書類選考で落とされてしまうリスクが高まります。
しかし、自分の市場価値を正しくアピールできれば、書類選考の段階で「この人になら高い給料を払ってでも来てもらいたい」と思わせることは十分に可能です。
本記事では、看護師が転職活動において、給料アップを狙いつつ、採用担当者に好印象を与えるための応募書類の書き方と戦略について解説します。
1.職務経歴書は、あなたの「見積書」である
多くの看護師は、職務経歴書を単なる「業務記録」だと思っています。しかし、給料アップを目指すなら、職務経歴書は**「私を採用するとこれだけのメリットがあります」と提示する「見積書(提案書)」**だと捉え直す必要があります。
採用担当者が給与額を決定する際、判断材料にするのは「経験年数」だけではありません。「具体的な貢献度」を見ています。漫然と業務内容を羅列するのではなく、以下のように「数字」と「成果」で価値を証明してください。
① 「規模感」を数字で示す
ただ「リーダー業務経験あり」と書くのではなく、マネジメントの規模を伝えます。
- 修正前: リーダー業務、新人指導を担当。
- 修正後: 40床の病棟にて、看護師25名のリーダー業務を週3回担当。プリセプターとして年間2名の新人を指導し、離職ゼロを達成。
② 「コスト意識」と「改善実績」を示す
病院経営に貢献できる視点を持っていることは、高評価(=高給与)につながります。
- アピール例: 業務改善委員として、超過勤務時間の削減に取り組み、月平均残業時間を20時間から10時間へ短縮。人件費適正化に貢献しました。
このように書くことで、「この人に高い給料を払っても、それ以上のリターン(利益)がある」と採用担当者に納得させることができます。
2.「給料が良いから」を志望動機に変換するテクニック
本音の志望動機が「給料が高いから」であっても、それをそのまま書くのはNGです。「お金のためならすぐに辞める人」という印象を与えるからです。
しかし、嘘をつく必要はありません。「給料が良い理由」を分析し、それをポジティブな志望動機に変換します。
パターンA:「成果主義・高待遇」の病院の場合
- 本音: 給料が高いし、ボーナスが良いから。
- 建前(志望動機): 「貴院の、職員の能力や成果を正当に評価するクリニカルラダー制度に魅力を感じました。モチベーション高く業務に取り組み、自身のスキルアップが病院の看護の質向上に直結する環境で貢献したいと考え志望しました。」
- → **「評価されたい(成果を出す自信がある)」**という意欲に変換します。
パターンB:「夜勤多め・手当充実」の病院の場合
- 本音: 夜勤手当で稼ぎたいから。
- 建前(志望動機): 「体力には自信があり、夜間の救急対応や少人数でのアセスメント能力を磨きたいと考えております。貴院の救急医療体制の一翼を担い、夜間帯の看護力を強化する即戦力として貢献したいと考え志望しました。」
- → **「ハードワークへの覚悟」と「貢献」**に変換します。
3.履歴書の「本人希望欄」に金額を書いていいのか?
履歴書の最後に必ずある「本人希望記入欄」。ここに「月給35万円以上希望」「年収500万円希望」と具体的な金額を書くのは、基本的にお勧めしません。
まだ面接もしておらず、能力評価もされていない段階で金額を提示するのは、「条件にうるさい人」「扱いにくい人」という第一印象を与えてしまうからです。ここは**「貴院の規定に従います」**と書くのが、書類選考を通過するための定石です。
どうしても譲れないラインがある場合
生活のために最低ラインが決まっている場合は、以下のように「条件付き」で柔らかく記載するか、転職エージェントを通じて交渉してもらうのが賢明です。
- 記載例: 「現在の年収が450万円ですので、同程度を希望いたしますが、詳細につきましては面接時にご相談させていただければ幸いです。」
このように「相談」のスタンスを見せることで、門前払いを防ぐことができます。
4.「基本給」と「総支給額」の罠を見抜く
求人票を見て「月給40万円」という数字に飛びついたものの、書類選考や面接でよく確認すると「基本給18万円+各種手当」だった、というケースがあります。
基本給が低いと、賞与(ボーナス)や退職金の計算ベースが低くなるため、年収トータルで見ると下がってしまうことがあります。
書類を作成する前に、自分が目指す「給料アップ」が、月々の手取りなのか、年収ベースなのか、あるいは時給換算でのアップなのかを明確にしておきましょう。
その狙いによって、職務経歴書で強調すべきポイント(夜勤実績を推すのか、専門スキルを推すのか)が変わってきます。
5.まとめ
給料は、あなたの看護師としての「市場価値」に対する対価です。
高い給料を勝ち取るために必要なのは、「給料を上げてください」とお願いすることではなく、応募書類を通して**「私にはそれだけの価値があります」と堂々と証明すること**です。
職務経歴書を「見積書」として磨き上げ、採用担当者に「高くても採用したい」と思わせるプレゼンテーションを行ってください。その準備こそが、納得のいく待遇を手に入れる最短ルートになります。





