「転職を繰り返す」負のループを断ち切る。ジョブホッパーを卒業し、書類選考を突破するための記述戦略
「今の職場が合わなくて辞めたい。でも、また転職したら履歴書が汚れてしまう」
「気づけば短期間での離職を繰り返している。自分は看護師に向いていないのだろうか」
看護師としてのキャリアを重ねる中で、理想の職場を求めて転職を繰り返す「ジョブホッパー」状態に陥ってしまう人は少なくありません。回数を重ねるごとに書類選考のハードルは上がり、自信を失い、また妥協して就職先を選んで失敗するという「負のループ」にはまってしまいます。
しかし、転職を繰り返してきた過去の事実は変えられませんが、その「伝え方」と、これからの「覚悟」の見せ方は変えられます。採用担当者が懸念しているのは、回数そのものではなく、そこから透けて見える「逃げ癖」です。
本記事では、転職を繰り返してしまう看護師がその悪循環を断ち切り、採用担当者に「今度こそ長く働いてくれそうだ」と信頼させるための応募書類の作成術について解説します。
1.なぜ転職を繰り返してしまうのか。書類作成前の自己分析
応募書類を書く前に、まずは自分がなぜ転職を繰り返しているのか、その根本原因を直視する必要があります。ここを曖昧にしたままでは、どんなに綺麗な志望動機を書いても、面接で見抜かれます。
転職を繰り返す人の多くは、以下のいずれかのパターンに陥っています。
- 「嫌なこと」から逃げる転職をしている人間関係や業務の忙しさなど、ネガティブな要素から逃れることだけを目的に転職先を選んでいるため、次の職場でもまた別の「嫌なこと」が見つかると辞めたくなります。
- 「青い鳥」を探し求めている「どこかに自分にとって完璧な職場があるはずだ」という幻想を抱き、100点満点の職場を探し続けています。
- 自己評価と市場価値がズレている「自分はもっと評価されるべきだ」と考え、現状への不満を他責(環境のせい)にし続けています。
書類を作成する際は、これらの「逃げ」や「他責」の要素を徹底的に排除し、「自責」と「前向きな選択」のストーリーへと書き換える作業が必要です。
2.採用担当者の「またすぐ辞めるのでは?」という不安を消す
採用担当者が、転職を繰り返す人の履歴書を見たときに抱く感情はシンプルです。「採用コストをかけても、またすぐに辞めて無駄になるのではないか」というリスクへの懸念です。
この不安を払拭するためには、以下の2点を応募書類で証明する必要があります。
① 過去の転職には「一貫した軸」があったと定義する
バラバラに見える職歴でも、後付けで構わないので「軸」を通します。
- 「急性期から慢性期、そして在宅へと、患者様の生活に近づくために必要なステップでした。」
- 「様々な診療科を経験することで、ジェネラリストとしての対応力を磨いてきました。」
このように、「飽きて辞めた」のではなく「目的があって動いてきた」というストーリー(意味付け)を提示します。
② 「今回が最後の転職である」という覚悟を示す
これが最も重要です。「腰を据えて働きたい」という言葉だけでなく、なぜ今回は辞めないと言い切れるのか、その根拠を示します。
- 「これまでの経験を通じて、自分が本当に大切にしたい看護観が『終末期ケア』であると確信できたため、貴院を最後の職場として選びました。」
- 「ライフイベントが落ち着き、キャリアを見直した結果、貴院の理念のもとで定年まで働き続けたいという結論に至りました。」
3.職歴の多さを「経験値の高さ」に変換する記述テクニック
転職回数が多いということは、それだけ多くの現場、システム、人間関係を見てきたということです。これを「忍耐力のなさ」ではなく「適応力の高さ」としてアピールします。
【職務経歴書の自己PR例】
「私はこれまでに、大学病院、地域の中核病院、個人クリニックと、異なる機能を持つ医療機関で経験を積んでまいりました。そのため、どのような規模や組織風土であっても、即座に業務フローを理解し、周囲と協調して動く『適応力』には自信があります。貴院においても、これまでの多様な経験から得た引き出しの多さを活かし、即戦力として貢献いたします。」
このように書くことで、ネガティブな職歴をポジティブなスキルへと変換できます。
4.負のループを断ち切るための「志望動機」の作り方
転職を繰り返す人が、また同じ失敗をしないためには、志望動機の中に「定着へのコミットメント(約束)」を盛り込むことが鉄則です。
【構成案】
- 過去の反省(さらりと触れる):「これまでは自身のキャリアの方向性を模索し、転職を重ねてしまう時期もありました。」
- 気づきと決意:「しかし、様々な現場を知る中で、私が本当にやりがいを感じるのは『患者様一人ひとりと長く向き合う慢性期看護』であると明確になりました。」
- 貴院である理由:「貴院は地域包括ケアの中核として、リハビリから看取りまで一貫したケアを提供されています。」
- 定着の約束:「私の求めていた環境が貴院にあります。これまでの経験のすべてを貴院での看護に注ぎ込み、組織の一員として長く貢献したいと強く願っております。」
あえて「模索していた時期もあった」と認めることで、誠実さと、現在の迷いのなさを強調できます。
5.まとめ:自分を「被害者」にしないこと
転職を繰り返してしまう人は、無意識のうちに「職場に恵まれなかった被害者」というスタンスを取ってしまいがちです。しかし、応募書類や面接でその匂いが少しでも出ると、不採用になります。
「過去の転職はすべて、今の自分に必要な経験だった」
「そして今、ようやく理想の職場(貴院)に出会えた」
このように過去を肯定し、未来への希望を語ってください。そのポジティブな姿勢こそが、ジョブホッパーというレッテルを剥がし、負のループを断ち切る唯一の鍵となります。





