看護師が転職時に知っておくべき業務従事者届の提出ルールと手続きのタイミング

業務従事者届は二年ごとの法的義務であり転職活動中も意識すべき重要な手続き

看護師として働く上で避けて通れない行政手続きの一つに業務従事者届があります。これは保健師助産師看護師法に基づき業務に従事している看護職が二年に一回都道府県知事に届け出ることを義務付けられたものです。原則として西暦の奇数年の一月十五日までにその前年の十二月三十一日時点での就業状況を報告する必要があります。転職活動を行っている最中の看護師にとってこの手続きは現職で行うべきか新しい職場で行うべきかそれとも個人で行うべきかと迷う原因になりがちです。しかしこの届出は日本の医療従事者の分布や就業実態を把握し国の医療政策や看護職員の確保対策の基礎資料となる極めて重要なものです。手続きを怠ると罰則規定も存在するため転職という多忙な時期であっても自身の免許とキャリアを守るために正しい知識を持って対応することがプロフェッショナルとしての責任です。

十二月三十一日時点での在籍状況によって届出を行う職場が決定される仕組み

業務従事者届の提出において最も重要な基準となるのが調査の基準日である十二月三十一日時点での就業状況です。もしあなたが転職をして新しい職場に入職した日が十二月三十一日以前であれば新しい職場で手続きを行うことになります。多くの病院や施設では総務課や看護部がスタッフ分を取りまとめて代行申請を行ってくれるため入職時のオリエンテーションなどで案内に従えば問題ありません。一方で十二月三十一日時点で退職しており次の職場が決まっていない離職中の期間である場合は業務に従事していないためこの届出を提出する必要はありません。また十二月三十一日時点で退職が決まっているものの有給消化中などで在籍している場合は元の職場を通じて提出することになります。転職のタイミングと基準日が重なる場合はどちらの職場で手続きを行うべきかを事前に確認し漏れがないように注意する必要があります。

届出対象年以外の転職では業務従事者届の提出は不要であることを理解する

看護師の業務従事者届はあくまで二年ごとの奇数年に実施される定期的な調査です。そのため届出の対象年ではない偶数年に転職をした場合や奇数年であっても基準日以外の時期に職場が変わった場合についてはこの届出を提出する必要はありません。転職をするたびに毎回提出しなければならない書類ではないという点を正しく理解しておくことで無用な焦りを防ぐことができます。ただしこの業務従事者届とは別に氏名や本籍地の都道府県に変更があった場合に提出する看護師籍訂正免許証書換え交付申請は変更後三十日以内に行う必要があります。結婚や転居を機に転職をする場合はこれらの手続きが混同されやすいため免許証の書き換え手続きと業務従事者届は全く別の行政手続きであることを整理して認識しておくことが大切です。

転職直後の忙しい時期に手続きを忘れないための自己管理と確認の徹底

新しい職場に転職した直後は業務を覚えることに精一杯で事務的な手続きへの意識が薄れてしまいがちです。特に一月入職の場合などは入職と同時に業務従事者届の提出期限が迫っているケースがあるため注意が必要です。多くの医療機関では事務部門が主導してアナウンスを行いますが小規模なクリニックや訪問看護ステーションなどでは自分で用紙を取り寄せて記入し提出しなければならない場合もあります。最近ではインターネットを利用したオンライン届出も普及しておりスマートフォンから簡単に手続きができるようになっています。自分は対象者なのか職場がやってくれるのかそれとも自分でする必要があるのかを自ら確認し期限内に確実に完了させる自己管理能力は看護師としての信頼性にもつながります。

キャリアの空白期間を作らないためにも届出の履歴を正確に把握しておく

業務従事者届は個人の就業履歴を行政が把握するためのものでもありますが自分自身のキャリアの記録としての側面も持っています。将来的に認定看護師や専門看護師の資格取得を目指す際や再就職時の実務経験証明書を取得する際に行政への届出が正しく行われていることが前提となる場合があります。転職を繰り返しているとどの時期にどこで働いていたかの記憶が曖昧になることがありますが業務従事者届を毎回確実に提出しておくことで公的な記録として残ることになります。キャリアを一貫したものとして証明するためにも面倒な事務手続きと捉えずに自分の専門職としての足跡を残す大切なプロセスであるとポジティブに捉えて取り組むことが推奨されます。

まとめ

看護師の業務従事者届は二年ごとの奇数年に提出が義務付けられている重要な手続きであり転職のタイミングによっては提出先や要否が変わるため注意が必要です。基準日である十二月三十一日時点での所属を確認し対象年であるかどうかを判断してください。また氏名変更などの免許証書き換え手続きとは区別し新しい職場での案内を見落とさないように自己管理を徹底することが大切です。法令順守の意識を持ち事務手続きを確実にこなすことは組織の一員としての信頼を高め安心して新しいキャリアをスタートさせるための基盤となります。

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人材会社で15年間、転職・中途採用市場における営業職・企画職・調査職の仕事を経験。
社団法人人材サービス産業協議会「転職賃金相場」研究会の元メンバー
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