入職3ヶ月(試用期間)での退職は「職歴」になる?不利を覆し、次の病院で採用されるための書類作成テクニック
看護師の世界には「3ヶ月の壁」という言葉があります。入職して3ヶ月目は、業務の全体像が見え始めると同時に、職場の人間関係や労働環境の「粗(あら)」が見え始める時期でもあります。
「試用期間中だけど、もう辞めたい」
「でも、たった3ヶ月で辞めたら履歴書に傷がつくのでは?」
このような葛藤を抱えている方は非常に多いです。結論から言えば、3ヶ月での退職は決して珍しいことではなく、適切な書類対策を行えば、次の転職を成功させることは十分に可能です。
ただし、何の戦略もなく「3ヶ月で辞めました」と履歴書を出せば、「忍耐力がない」と判断されるリスクが高いのも事実です。本記事では、試用期間中の退職というハンデを乗り越え、採用担当者に「この人なら採用したい」と思わせるための応募書類の作成術を解説します。
1.履歴書には書くべき?「試用期間3ヶ月」の扱いに決着をつける
まず悩むのが、「試用期間中の3ヶ月を職歴として書くかどうか」です。
基本ルール:社会保険に入っていたら「書く」
試用期間であっても、雇用保険や社会保険に加入していた場合は、必ず履歴書に記載してください。
隠して次の職場に入職しても、雇用保険被保険者証の提出や年末調整の際に、加入履歴の日付から前職の存在が発覚します。「経歴詐称」として解雇のリスクを負うより、正直に記載して事情を説明する方が、長い目で見れば安全です。
職務経歴書での見せ方
履歴書には事実(入職・退職)を書きますが、職務経歴書では工夫が必要です。3ヶ月の職歴を長々と書いても中身が薄くなるだけです。
おすすめは、職務経歴書のメインスペースは「その前の職場(経験が長い職場)」に割き、今回の3ヶ月の職歴は**「略歴」として簡潔に事実のみを記載する**、あるいは**「退職理由を補足するスペース」**として活用する方法です。
2.「なぜ3ヶ月で?」採用担当者を納得させる退職理由の変換術
3ヶ月で辞める場合、採用担当者は「うちも試用期間で辞められるのではないか」と警戒します。この警戒心を解くためには、感情的な不満ではなく、**「構造的なミスマッチ」や「やむを得ない事情」**があったことを論理的に伝える必要があります。
ケース①:労働条件の相違(リアリティショック)
- 【NG:ただの不満】「残業なしと聞いていたのに毎日残業があり、体力が持たなかった。」
- 【OK:条件の不一致】「入職前に提示された勤務条件と実態に大きな乖離があり(例:夜勤体制や休日の相違など)、生活との両立が困難となりました。業務には誠実に取り組みましたが、長期的な就業は難しいと判断し、試用期間内での退職を決断いたしました。」→ 「嫌だから」ではなく「契約と違うから」という客観的な事実に焦点を当てます。
ケース②:教育体制の不備・放置
- 【NG:他責思考】「先輩が誰も教えてくれず、放置されて怖かった。」
- 【OK:安全意識の高さ】「教育体制が整っていると伺っておりましたが、実際には未習得の手技を一人で実施せざるを得ないなど、医療安全上の懸念を感じる場面が多々ありました。患者様の安全を守るためには、基礎から指導を受けられる環境で学び直すべきだと痛感し、退職を決意しました。」→ 「怖かった」を「プロとしての責任感」に変換します。
3.3ヶ月でも「学び」はある。自己PRで姿勢をアピールする
「3ヶ月しかいないので、何も身についていません」と卑下する必要はありません。新しい環境に飛び込み、適応しようとした努力はアピール材料になります。
<自己PRの例文>
「私の強みは、新しい環境における『適応への努力』と『基本の徹底』です。
前職は短期間の在籍となりましたが、一日も早く業務を覚えるために、指導内容は必ずメモを取り、その日のうちに復習することを徹底しておりました。また、患者様への挨拶や接遇など、看護師としての基本行動はどのような環境でも変わりません。
今回の反省を活かし、貴院では一から謙虚に学ぶ姿勢を持ち続け、早期に戦力として貢献できるよう努めてまいります。」
4.志望動機で「次は辞めない」根拠を示す
3ヶ月で辞めた後の転職活動において、最も重要なのが志望動機です。「条件が良いから」ではなく、**「ここなら長く働ける理由(定着の根拠)」**を示す必要があります。
<志望動機の構成>
- 反省: 「前職では情報収集不足により、ミスマッチを起こしてしまいました。」
- 軸の発見: 「その経験から、私は『長く働くためには〇〇(教育体制や理念の一致)が不可欠である』と学びました。」
- 適合: 「貴院は〇〇という特徴があり、私が最も重視する環境と合致しています。」
- 決意: 「貴院を看護師キャリアの再スタートの場とし、腰を据えて貢献したいと考えております。」
5.(補足)転職活動にかける期間は「3ヶ月」を目安に
ここまでは「入職3ヶ月での退職」について解説しましたが、これから転職活動を始める場合、**「活動期間として3ヶ月」**を見ておくのが一般的です。
- 1ヶ月目: 情報収集、自己分析、応募書類の作成
- 2ヶ月目: 応募、面接、職場見学
- 3ヶ月目: 内定、条件交渉、現職の退職手続き
焦って1ヶ月程度で決めてしまうと、再びミスマッチを起こすリスクが高まります。特に短期離職直後の転職活動は、慎重な職場選びが求められます。転職サイトやエージェントを活用し、内部事情(離職率や教育体制の実態)を入念にリサーチする時間を確保してください。
3ヶ月という期間は、長い看護師人生においてはほんの一瞬です。このつまづきを「自分に合う職場を見つけるための勉強代」と捉え直し、誠実で戦略的な書類を作成すれば、必ずリスタートのチャンスは巡ってきます。





