看護師の転職「小論文」は怖くない。採用担当者が読みたくなる構成のコツとそのまま使える例文集
「履歴書や面接対策はしたけれど、『小論文(作文)』なんて何を書けばいいのか分からない」
「久しぶりに長い文章を書くので、誤字脱字や構成が不安」
公立病院や大学病院、あるいは一部の大手医療グループの採用試験では、面接とセットで「小論文(または作文)」が課されることがあります。
多くの看護師さんがここでペンを止めてしまいますが、実は小論文は、あなたの「人柄」と「論理的思考力」をアピールする絶好のチャンスです。
特別な文才は必要ありません。採用側が求めているのは、小説のような感動的な話ではなく、「看護観がしっかりしているか」「読み手に分かりやすく伝える力があるか」という点だけです。
本記事では、採用担当者が評価する小論文の基本構成と、頻出テーマ別の具体的な例文(テンプレート)を紹介します。
1.なぜ採用試験に「小論文」があるのか?
採用側が小論文を通して見ているポイントは、主に以下の3点です。
- 論理的思考力(ロジカルシンキング)話の筋道が通っているか。結論から述べられているか。これは、看護記録の記載や申し送りのスキルに直結します。
- 看護観・人間性どのような思いで看護に向き合っているか。病院の理念とマッチしているか。
- 基本的な国語力誤字脱字がないか、丁寧な文字で書かれているか。
つまり、「上手な文章」である必要はありません。「丁寧で、筋が通っていて、熱意がある文章」であれば合格です。
2.絶対に外さない「3段構成」の型
小論文を書く際は、以下の「3段構成」に当てはめて書くと、誰でも論理的な文章が書けます。
- 【序論】結論(私はこう思う)
- テーマに対する自分の答えを最初にズバリと書きます。全文字数の10〜15%程度。
- 【本論】理由・エピソード(なぜなら~だからだ)
- その結論に至った理由を、自身の具体的な体験談(患者様とのエピソードなど)を交えて説明します。ここが最も重要で、全体の70〜80%を使います。
- 【結論】まとめ・抱負(貴院でこうしたい)
- これまでの話をまとめつつ、「だから貴院でこのように貢献したい」という決意で締めくくります。全体の10〜15%程度。
3.【テーマ別】そのまま使える小論文・例文集
ここでは、看護師の採用試験で頻出する3つのテーマについて、具体的な例文を紹介します。
※文字数は一般的な原稿用紙1枚~2枚分(400字〜800字)を想定した構成案です。
テーマA:「どのような看護師になりたいか」(看護観)
最もオーソドックスなテーマです。「患者様に寄り添う」などの抽象的な言葉だけでなく、具体的なエピソードで肉付けするのがポイントです。
【例文】
(序論)
私は、「患者様の言葉にならない不安を汲み取り、その人らしい生活を支える看護師」でありたいと考えています。
(本論)
前職の消化器外科病棟で、ストーマ造設を控えたある患者様を担当しました。手術の説明も済み、気丈に振る舞われていましたが、夜間の巡回時にふと表情が曇ることに気づきました。私は処置の手を止め、時間をかけてお話を伺いました。すると、「手術は怖くないが、退院後に趣味の温泉に行けなくなるのが辛い」と本音を漏らしてくださいました。
私は皮膚・排泄ケア認定看護師と連携し、入浴用装具の提案や、具体的な入浴方法の指導を行いました。その結果、患者様は「これなら楽しみを諦めなくて済む」と笑顔を見せ、前向きに手術に臨まれました。
この経験から、看護師の役割とは、単に疾患を看るだけでなく、その方の「生活」や「楽しみ」を守ることにあると強く実感しました。
(結論)
貴院は地域包括ケアの中核として、退院支援に力を入れておられます。私は貴院において、高度な医療知識を習得するだけでなく、患者様一人ひとりの人生観を尊重した看護を実践し、チーム医療の一員として貢献したいと考えています。
テーマB:「これまでの仕事で学んだこと」(失敗・成長)
過去の経験、特に失敗や困難をどう乗り越えたかを見るテーマです。失敗を隠すのではなく、「そこから何を学び、どう改善したか」を強調します。
【例文】
(序論)
私がこれまでの看護業務を通じて最も重要だと学んだことは、「基本に忠実であることの重み」と「チーム連携の大切さ」です。
(本論)
新人時代、多忙な業務の中で確認作業がおろそかになり、配薬ミスを起こしかけた経験があります。幸い、ダブルチェックを行っていた先輩看護師の指摘により未然に防ぐことができましたが、一歩間違えれば患者様の命に関わる事態でした。
慢心と焦りが招いたことだと猛省し、それ以来、どんなに忙しくても指差し呼称を徹底し、少しでも疑問があれば必ず周囲に確認することを自分自身のルールとしました。また、後輩指導においても、「なぜその確認が必要なのか」という意味を伝えることを大切にしてきました。
一人の力には限界がありますが、チームで声を掛け合い、互いの抜けを補完し合うことで、医療安全は守られるのだと学びました。
(結論)
貴院は医療安全管理体制が充実しており、職員の意識向上に努めていると伺っております。私は初心を忘れることなく、確実な技術と安全意識を持って業務に取り組み、患者様に安心していただける看護を提供いたします。
テーマC:「地域医療における当院の役割」(公立病院向け)
公立病院や地域の中核病院でよく出るテーマです。病院の特徴を調べておかないと書けません。
【例文】
(序論)
地域医療における貴院の役割は、高度急性期医療を提供する「最後の砦」であると同時に、地域の医療機関や施設と連携し、患者様を住み慣れた地域へ繋ぐ「架け橋」であると考えます。
(本論)
私はこれまで、慢性期病棟にて高齢の患者様と多く関わってまいりました。その中で、急性期治療を終えた患者様が、介護力不足や環境の問題で自宅へ帰れないケースに直面し、退院調整の難しさを痛感してきました。
貴院は、ドクターヘリを有する救命救急センターでありながら、入退院支援センターの機能も強化されています。「断らない医療」で命を救い、その後の生活まで見据えて地域へとバトンを渡す姿勢に、看護師としてあるべき姿を見たと感じました。
(結論)
少子高齢化が進むこの地域において、貴院が果たす役割は今後ますます重要になります。私は貴院の一員として、急性期看護のスキルを磨くと同時に、地域全体で患者様を支える視点を持ち、地域医療の発展に貢献したいと強く志望します。
4.減点されないための「書き方のマナー」
内容が良くても、基本的なルールが守られていないと評価を下げてしまいます。以下のチェックリストを確認してください。
- 文字数は8割以上埋める指定文字数(例:800字)の8割(640字)以上は必ず書きましょう。少なすぎると「意欲がない」とみなされます。
- 文末を統一する「〜です・ます」調(敬体)か、「〜だ・である」調(常体)か、どちらかに統一します。
- 「作文」の場合: 「です・ます」が柔らかい印象で無難です。
- 「小論文」の場合: 指定がなければ「だ・である」が一般的ですが、自身の体験を書く内容なら「です・ます」でも問題ありません。最も重要なのは混在させないことです。
- 誤字脱字・略語に注意書き終わった後の見直しは必須です。また、「患者さん→患者様」「Dr→医師」「エビデンス→根拠」など、正式な言葉を使います。
- 字は丁寧に字の上手下手よりも、「丁寧に書こうとしているか」が見られます。修正テープの使用は極力避け、書き損じたら新しい用紙に書き直すのがマナーです(修正可の場合は指定に従ってください)。
5.まとめ:小論文は「ラブレター」である
看護師の転職試験における小論文は、難解な論文を書くことではありません。
「私はこんな経験をしてきました。だから、あなたの病院でこんなふうに役に立てます」という、相手へのラブレター(熱意の表明)です。
今回紹介した例文をそのまま丸写しするのではなく、「本論(エピソード)」の部分をご自身の体験に書き換えてください。
あなただけのリアルな経験談が入ったとき、その小論文は採用担当者の心を動かす最強の応募書類になります。





