看護師転職は「段取り」が9割。書類選考でつまずかないための、正しい進め方とスケジュールの教科書
「転職したいけれど、何から手をつければいいかわからない」
「働きながらの活動だから、効率よく進めたい」
日々の業務に追われる看護師にとって、転職活動は体力と気力の勝負です。
多くの人が「とりあえず求人サイトに登録する」ことから始めますが、実はこれが失敗の元です。準備不足のまま応募しても、志望動機が薄っぺらくなり、最初の関門である「書類選考」で落とされてしまうからです。
転職活動の成功率は、応募ボタンを押す前の「下準備(進め方)」で決まると言っても過言ではありません。
本記事では、多忙な看護師が最短ルートで理想の職場にたどり着くための「正しい転職の進め方」を、時系列のステップで解説します。特に、内定の鍵を握る「書類作成」への繋げ方を重点的にお伝えします。
ステップ1:【自己分析】「なぜ辞めるのか」を言語化する(開始1ヶ月目〜)
求人を探す前に、まずは自分の心の整理から始めます。ここが曖昧だと、履歴書の「志望動機」が書けず、面接でも言葉に詰まります。
ノートに書き出すべき3つの項目
- 退職理由(ホンネ):
「残業が多すぎる」「人間関係が辛い」「給料が安い」。まずは汚い言葉でもいいので書き出します。 - 転職の目的(ポジティブ変換):
退職理由をひっくり返します。「残業が多い」→「患者様とじっくり向き合いたい」、「給料が安い」→「スキルを正当に評価されたい」。これが志望動機の種になります。 - 譲れない条件(優先順位):
「年収」「休日」「通勤時間」「教育体制」。全てを満たす職場はありません。ベスト3を決めておきましょう。
この作業をしておくと、応募書類を作る際に「軸」がブレなくなり、説得力のある文章が書けるようになります。
ステップ2:【情報収集】求人票の「裏」を読む(開始1ヶ月目〜)
自分の軸が決まったら、求人を探します。
「給料が高いから」というだけで飛びつくのは危険です。書類選考では「なぜ当院なのか」を厳しく問われるため、その答えを探すつもりでリサーチします。
- 病院のホームページ:
「看護部長の挨拶」や「理念」をチェック。ここに使われているキーワード(例:地域包括、寄り添う、高度医療など)をメモしておき、後で書類に盛り込みます。 - 口コミや見学:
可能であれば、実際に病院の周りを歩いてみたり、知人に話を聞いたりします。「情報収集力」は、書類上での志望動機の厚みに直結します。
ステップ3:【書類作成】ここで合否の8割が決まる(開始2ヶ月目〜)
応募先候補が決まったら、いよいよ履歴書と職務経歴書の作成です。
多くの看護師がここを軽視して「とりあえず埋める」作業にしてしまいますが、ここが最大の山場です。ステップ1・2で集めた材料を調理します。
書類作成の進め方ポイント
- 職務経歴書の棚卸し:
自分の経験(診療科、委員会、係、プリセプター経験など)を全て書き出し、数値化します。「頑張りました」ではなく「〇名の新人指導を行い、離職率ゼロを達成しました」と書くための準備です。 - 「相手目線」への変換: 自分の「やりたいこと」と、病院が「求めていること」の接点を見つけます。
- 病院が「即戦力」を求めているなら → 経験豊富な手技やリーダー経験を強調。
- 病院が「定着」を求めているなら → 協調性や長く働きたい意思を強調。
この段階で手を抜かず、プロ(転職エージェントなど)の添削を受けるなどして「会ってみたいと思わせる書類」を完成させることが、内定への近道です。
ステップ4:【応募・面接】書類を台本にする(開始2ヶ月目〜)
書類が完成したら応募し、選考に進みます。
しっかりと作り込んだ応募書類は、面接時の「最高のカンニングペーパー(台本)」になります。
面接官は書類を見ながら質問します。
「ここに書いてある『患者様に寄り添う看護』について、具体的なエピソードを教えてください」といった質問が来るため、書類の内容と口頭での回答が一貫し、非常にスムーズな面接になります。
逆に、書類を適当に書いていると、面接で深掘りされた時にボロが出て「一貫性がない」と不採用になってしまいます。
ステップ5:【内定・退職交渉】立つ鳥跡を濁さず(開始3ヶ月目〜)
内定が出たら、条件通知書(労働条件通知書)を必ず確認し、納得した上で入職を承諾します。
そして最後の難関が「退職交渉」です。
- 申し出のタイミング:
就業規則を確認し、退職希望日の1〜3ヶ月前には師長へ伝えます。 - 退職理由の伝え方:
不満を言うと引き止めやトラブルの元になります。「キャリアアップのため」「家庭の事情」など、角が立たない理由を用意しましょう。
全体のスケジュール感(目安:3〜6ヶ月)
働きながら転職活動をする場合、焦りは禁物です。余裕を持ったスケジュールを組みましょう。
- 1ヶ月目: 自己分析、情報収集、サイト登録
- 2ヶ月目: 応募書類の作成(最重要)、求人選定、応募
- 3ヶ月目: 面接、病院見学、内定
- 4〜6ヶ月目: 退職交渉、引き継ぎ、有給消化、入職
まとめ:書類作成こそが「転職活動」そのもの
「転職の進め方」というと、求人探しや面接ばかりに目が行きがちです。
しかし、成功する看護師は「ステップ1(自己分析)」と「ステップ3(書類作成)」に最も時間を使っています。
なぜなら、「質の高い応募書類」を作ることができれば、書類選考は通り、面接も楽になり、結果として自分に合った病院への転職が叶うからです。
まずはPCやノートを開き、自分のキャリアの棚卸しから始めてみてください。その地道な作業こそが、理想の職場への確実な第一歩となります。





