看護師が転職するか迷う時に自分の気持ちを整理し後悔のない選択をするための判断プロセス

なぜ転職に踏み切れないのか心理的なブレーキとなっている原因を特定する

日々の業務に追われる中でふと転職の二文字が頭をよぎるものの実際に行動に移すとなると足踏みしてしまう看護師は少なくありません。転職を迷うことは決して優柔不断なわけではなく自身のキャリアや生活を真剣に考えているからこそ生じる健全な反応です。迷いの背景には現状維持バイアスと呼ばれる心理的な作用が働いていることが多くあります。これは人間が本能的に変化を恐れ現在の安定した状態を維持しようとする傾向のことです。たとえ今の職場に不満があったとしても新しい環境で人間関係を築き直す苦労や業務を覚え直す負担を想像すると今のまま我慢したほうが楽ではないかと無意識にリスクを過大に見積もってしまいます。また年齢や経験年数を重ねるほど失敗への恐怖心が強くなり動くことへのハードルが高くなります。まずは自分が迷っているのは性格の問題ではなく誰にでも起こりうる心理的なメカニズムによるものだと理解し何が具体的な不安要素になっているのかを書き出して可視化することから始めます。

今の職場の不満が解決可能なものか転職でしか解決できないものかを見極める

転職すべきかどうかを決断するためには現在抱えている不満や悩みの性質を冷静に分析する必要があります。もし悩みの種が特定の先輩との人間関係や一時的な業務多忙によるものであれば異動願いを出したり休暇を取ったりすることで解決できる可能性があります。今の環境の中で改善の余地があるならば急いで転職する必要はないかもしれません。しかし給与体系や病院の経営方針そして組織風土といった個人の努力では変えられない構造的な問題が不満の原因である場合は転職が唯一の解決策となる可能性が高くなります。また自分が目指したい看護と病院が求める役割に決定的なズレが生じている場合も環境を変えるべきタイミングと言えます。現在の職場で数年後も働き続けている自分を想像した時に希望や成長を感じられるかそれとも閉塞感を感じるかを自問自答してみることで進むべき道が見えてきます。

自身の市場価値と将来のビジョンを照らし合わせてタイミングを計る

転職を迷う理由の一つに今はまだその時期ではないのではないかというタイミングへの不安があります。臨床経験が浅いうちに辞めると忍耐力がないと思われるのではないかあるいは年齢的に条件の良い求人がないのではないかといった懸念です。しかし転職市場における価値は刻々と変化しており自分が思っている評価と実際の市場価値にはギャップがあることも珍しくありません。例えば第二新卒であれば吸収力を評価する病院が多くベテランであればマネジメント能力を求める施設からの需要があります。重要なのは自分のキャリアプランにおいて今どのような経験が必要なのかを考えることです。もし将来的に訪問看護に進みたいのであれば病棟での経験が十分かどうかを判断材料にしますし認定看護師を目指すのであれば教育体制の整った病院へ移ることが近道になるかもしれません。ライフイベントや年齢だけでなく自分のキャリアのゴールから逆算して今動くことがプラスになるかどうかを判断基準にします。

迷いを断ち切るために職務経歴書を作成して自身のキャリアを棚卸しする

転職するかどうか迷っている段階でこそ取り組んでほしいのが職務経歴書の作成です。これは応募するためではなく自分自身のキャリアを客観的に見つめ直すための自己分析ツールとして非常に有効です。これまでに経験した診療科や担当した業務そして習得したスキルを文字に起こしていく過程で自分が仕事に対してどのような価値観を持っているのかが明確になります。書き出してみると意外と多くの実績があることに気づき自信が湧いてくることもあれば逆に今のままではスキル不足だと痛感し現職でもう少し頑張ろうという結論に至ることもあります。どちらの結果になったとしても頭の中で漠然と悩んでいたことが明確な課題として整理されるため迷いが晴れるきっかけになります。職務経歴書の下書きを作ることはリスクのないシミュレーションであり自分の本当の気持ちに気づくための有意義な作業です。

転職活動イコール退職ではないと捉えリスクのない情報収集から始めてみる

多くの人が転職活動を始めると必ず退職しなければならないと思い込んでしまいがちですが実際にはそうではありません。転職活動はあくまでより良い環境があるかどうかを探るための情報収集活動であり今の職場を辞めるかどうかは内定が出た後に決めれば良いのです。気になる求人をチェックしたり転職フェアに足を運んで話を聞いたりするだけであれば何のリスクもありません。実際に他の病院の条件や雰囲気を見て比較することで今の職場の良さを再認識し転職しないという選択をすることも立派な転職活動の成果です。選択肢を持たないまま今の職場にしがみつくのと他に選択肢がある中で今の職場を選ぶのとでは精神的な余裕が全く異なります。迷っている時こそ外の世界を覗いてみるという軽い気持ちで第一歩を踏み出してみることで膠着していた状況が動き出し納得のいく答えを見つけることができます。

まとめ

看護師が転職に迷うのは現状への不安と未来への期待が入り混じる自然な感情です。その迷いを解消するためには心理的なブレーキの存在を知り悩みの原因を分解して考えることが大切です。そして頭の中で悩み続けるのではなく職務経歴書の作成や情報収集といった具体的なアクションを起こすことで自分自身のキャリアを客観的に捉えることができます。動くことのリスクと動かないことのリスクを天秤にかけ自分にとって最善の選択をするためにまずは小さな一歩から始めてみてください。そのプロセスを経た上での決断であれば転職するにせよ現職に留まるにせよ後悔のない未来へとつながっていきます。

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人材会社で15年間、転職・中途採用市場における営業職・企画職・調査職の仕事を経験。
社団法人人材サービス産業協議会「転職賃金相場」研究会の元メンバー
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