動物看護師の職務経歴書 例文と書き方ガイド 国家資格化に対応したアピール戦略
動物医療の高度化や愛玩動物看護師の国家資格化に伴い、動物看護師に求められる役割は大きく変化しています。これまでの「獣医師の補助」という枠を超え、採血や投薬といった具体的な医療行為の一部を担う専門職としての需要が高まっています。
転職市場においても、経験豊富な即戦力を求める動物病院や企業が増加していますが、そのスキルを職務経歴書で正しく表現できなければ、希望する条件での採用は叶いません。
ここでは、動物看護師(愛玩動物看護師)の経験を魅力的な実績として言語化し、書類選考を通過するための職務経歴書の書き方と、状況別の具体的な例文について解説します。
動物看護師の採用担当者が重視する3つの評価軸
動物病院の院長や採用担当者は、応募者が即戦力として現場に入れるか、病院の雰囲気に合うかを慎重に見極めています。特に以下の3点は、合否を分ける重要な判断基準となります。
1. 臨床現場での対応力と業務範囲
最も重視されるのは、やはり臨床スキルです。保定、検査(血液、尿、糞便)、調剤、手術助手、入院管理など、どの程度の業務を「一人で」こなせるかが問われます。
特に国家資格「愛玩動物看護師」を取得している場合は、法改正により可能になった採血、カテーテル留置、投薬などの業務経験があるかどうかが、待遇面も含めた評価に直結します。
2. 飼い主様へのコミュニケーション能力
動物看護師の仕事は、動物と接するだけではありません。不安を抱える飼い主様への問診、検査や処方の説明、食事指導、電話対応など、対人コミュニケーションの比重が非常に高い仕事です。
専門用語をわかりやすく噛み砕いて説明する力や、飼い主様の心情に寄り添うホスピタリティは、臨床スキルと同じくらい重要視されます。
3. チーム医療への貢献と事務処理能力
少人数の動物病院では、スタッフ間の連携が不可欠です。獣医師の指示を的確に理解して動くサポート能力や、後輩の指導経験、院内の清掃・在庫管理・受付会計などの運営業務を円滑に行えるかも評価されます。特定の分野(トリミング、リハビリ、デンタルケアなど)に強みがあれば、それも大きな加点要素になります。
職務経歴書に記載すべき具体的な項目
採用担当者があなたの経験値を測るためには、前職(現職)の病院がどのような環境だったかを知る必要があります。職務経歴書の冒頭には、病院の概要を可能な限り数字で記載します。
病院概要の記載例
- 診療対象: 犬、猫、ウサギ、ハムスター(エキゾチックアニマルの経験は貴重なアピールになります)
- 来院数: 1日平均約40件(繁忙期60件)
- 手術件数: 月間約30件
- スタッフ数: 獣医師3名、愛玩動物看護師5名、トリマー2名
- 設備: CT、MRI、内視鏡など(扱える機器があれば明記)
これらの情報があることで、「忙しい病院でテキパキ動いていたのだな」「高度医療の経験があるのだな」と具体的にイメージしてもらえます。
業務内容は「具体的に」列挙する
業務内容の欄では、単に「診療補助」と書くのではなく、具体的なタスクを列挙します。
- 臨床・検査業務: 保定(大型犬や暴れる患畜の対応経験など)、各種検査キットの使用、顕微鏡検査、レントゲン・エコーの保定、麻酔モニタリング、スケーリング、採血、投薬指導など。
- 受付・運営業務: 受付対応、カルテ管理、DM作成、フードや予防薬の在庫管理、院内掲示物の作成、ペットホテル管理など。
- 相談・指導業務: パピー教室の開催、ダイエット指導(栄養管理)、デンタルケア指導、老齢動物の介護指導など。
国家資格「愛玩動物看護師」のアピール方法
2023年より国家資格となった「愛玩動物看護師」免許をお持ちの方は、必ず正式名称で記載します。資格欄に「第○回 愛玩動物看護師国家試験 合格(登録番号:○○○○)」と記載するのはもちろん、職務要約や自己PRの中でも触れるようにします。
もし現在資格を持っていなくても、「認定動物看護師」の資格がある場合や、実務経験が長い場合は、その実績を強調します。また、「今後、予備試験を経て国家資格取得を目指して勉強中である」といった意欲を示すことも、プラスの評価につながります。
【例文1】一次診療の動物病院(経験者・ジェネラリスト)
幅広い業務をこなし、病院の顔として飼い主様に信頼されていた実績をアピールする例文です。
■ 職務要約
動物看護師として5年間、地域密着型の動物病院(対象:犬・猫・小動物)にて勤務しました。診療補助、検査、手術助手といった臨床業務全般に加え、受付・会計、在庫管理などの病院運営業務も担当。飼い主様とのコミュニケーションを重視し、食事指導やデンタルケア指導にも注力しました。また、後輩2名の指導係としてマニュアル作成を行い、業務効率化に貢献しました。
■ 職務詳細
期間: 20XX年4月 ~ 現在
勤務先: 〇〇動物病院
病院概要: スタッフ10名、1日来院数約40件
【担当業務】
- 診療補助・検査: 保定、血液検査(CBC・生化学)、尿・糞便検査、レントゲン補助
- 手術助手: 去勢・避妊手術、スケーリング、麻酔管理補助(外回り)
- 受付・会計: 電話対応、予約管理、レセプト入力(ペット保険対応)
- 飼い主指導: 療法食の提案、投薬指導、パピー教室のサポート
【実績・取り組み】
- 療法食の販売促進飼い主様へのヒアリングを徹底し、ペットの状態に合わせた療法食のサンプリングと提案を実施。リピート購入率を向上させ、院内物販の売上アップに貢献しました。
- 待ち時間対策受付フローを見直し、問診票の事前記入を導入。診察までのスムーズな誘導を実現し、待合室の混雑緩和に努めました。
■ 自己PR
私の強みは、飼い主様の不安を取り除くコミュニケーション能力です。診察室では獣医師の説明を補足し、自宅でのケア方法を分かりやすく伝えることを心がけてきました。「あなたに相談してよかった」と言っていただける信頼関係を築くことで、かかりつけ医としての病院の評判向上に貢献したいと考えています。
【例文2】専門病院・二次診療施設(スペシャリスト)
高度医療や特定分野でのスキル、タフネスさをアピールする例文です。
■ 職務要約
二次診療を行う動物医療センターにて4年間、外科・救急部門を中心に勤務しました。高難易度の手術助手(整形外科・神経外科等)や、重症患畜の入院管理、夜間救急対応に従事。CT・MRI撮影の補助や、人工呼吸器の管理など、高度医療機器の取り扱いにも習熟しています。愛玩動物看護師免許を活かし、採血やカテーテル留置などの特定行為も実施可能です。
■ 職務詳細
期間: 20XX年4月 ~ 20XX年3月
勤務先: 医療法人△△会 動物高度医療センター
病院概要: 24時間救急対応、手術件数 月間80件
【担当業務】
- 高度医療補助: 整形外科・神経外科手術の器械出し・外回り、CT/MRI撮影補助
- 入院管理: ICUでの集中管理、バイタルチェック、流動食給餌、圧迫排尿
- 特定行為(資格取得後): 採血、留置針設置、投薬
【実績・取り組み】
- 術後管理マニュアルの作成整形外科手術後のリハビリや管理方法について、看護師間でのケア統一を図るためマニュアルを作成。術後合併症の早期発見とリカバリー率向上に寄与しました。
■ 自己PR
救急現場で培った、瞬時の判断力と精神的なタフさに自信があります。急変時にも冷静にアセスメントを行い、獣医師と連携して最善の処置を行うことができます。高度医療の知識を活かしつつ、患畜とご家族の心に寄り添う看護を実践いたします。
自己PRで伝えるべき「動物」と「人」への想い
職務経歴書の最後にある自己PRでは、スキルだけでは伝えきれない仕事への姿勢(スタンス)を表現します。
- 観察力と「気づく」力言葉を話せない動物の些細な変化に気づき、獣医師に報告して病気の早期発見につながったエピソードなどは、動物看護師としての資質の高さを証明します。
- 精神的な強さと飼い主様へのケア動物病院では、回復する喜びだけでなく、死に立ち会う悲しみも経験します。そのような場面で、悲しむ飼い主様にどう寄り添い、心のケアを行ってきたかという経験は非常に重要です。
動物看護師の仕事は、命を預かる責任の重い仕事です。その経験を誇りに思い、具体的なスキルと情熱を職務経歴書に落とし込んでください。あなたのキャリアを正当に評価してくれる病院との出会いを引き寄せるため、丁寧に作成しましょう。





