デザイナーの職務経歴書で採用を勝ち取る自己PR例文と書き方
クリエイティブ職であるデザイナーの転職活動において、最も重視されるのは制作物をまとめたポートフォリオであることは間違いありません。しかし、ポートフォリオが優れていれば職務経歴書は適当で良いかというと、それは大きな間違いです。
採用担当者は、ポートフォリオで「デザインのスキル(画力やセンス)」を確認し、職務経歴書の自己PRで「ビジネスマンとしての働き方(プロセスやコミュニケーション)」を確認しています。この二つが揃って初めて、採用への扉が開かれます。ここでは、クリエイターとしての魅力を補完し、採用の決定打となる自己PRの書き方と、職種別の具体的な例文を紹介します。
デザイナーの自己PRで採用担当者が重視する3つの視点
自己PRを作成する前に、企業側がデザイナーに何を求めているかを整理しておくことが大切です。「良いデザインが作れます」という主張だけでは、ビジネスの現場では不十分です。以下の3つの視点を盛り込むことで、説得力が格段に増します。
1. デザインを通じた課題解決能力と数値成果
ビジネスにおけるデザインはアートではなく、課題解決の手段です。「かっこいいものを作った」という主観的な評価ではなく、そのデザインによってクライアントや自社の課題をどう解決したかを伝えます。売上の向上、クリック率の改善、集客数の増加など、可能な限り数字を用いて成果を示すことで、ビジネス視点を持ったデザイナーであることを証明できます。
2. 制作スピードと業務効率化への意識
クリエイティブの現場では、質と同様にスピードも重要視されます。限られた納期の中でどのようにスケジュールを管理したか、ツールを駆使して作業効率を上げたかといったエピソードは、実務能力の高さを示す材料になります。ショートカットの活用やスクリプトによる自動化など、具体的なテクニックに触れることも有効です。
3. コミュニケーション能力と折衝力
デザイナーは一人で仕事をするわけではありません。ディレクター、エンジニア、ライター、そしてクライアントなど、多くの関係者と連携して制作を進めます。相手の意図を汲み取るヒアリング能力や、デザインの意図を言語化して伝えるプレゼンテーション能力、意見が対立した際の調整力は、組織で働く上で必須のスキルです。
【職種別】デザイナーの自己PR例文
ここからは、職種ごとにアピールすべきポイントを押さえた自己PRの例文を紹介します。ご自身の経験に合わせて内容を調整してください。
Webデザイナーの自己PR例文
【アピールポイント】 数字への意識、コーディングスキル、改善提案力
私は、数値に基づいた論理的なデザイン提案と、実装まで考慮した設計力に自信があります。
前職のWeb制作会社では、ECサイトやランディングページのデザインからコーディングまでを一貫して担当しました。特に意識していたのは、見た目の美しさだけでなく「成果が出るデザイン」です。Googleアナリティクスを用いてユーザーの離脱箇所を分析し、エントリーフォームのUI改善を提案した結果、コンバージョン率を前年比120パーセントに向上させました。
また、HTML・CSS・JavaScriptの知識を活かし、エンジニアと連携しやすいデータ作成を心がけることで、チーム全体の工数削減にも貢献しました。貴社においても、データ分析と実装力を掛け合わせ、事業成長に直結するWebデザインを提供したいと考えています。
グラフィックデザイナー(DTP)の自己PR例文
【アピールポイント】 制作スピード、顧客折衝力、ディレクション経験
私の強みは、顧客の要望を形にするヒアリング能力と、短納期でも質を落とさない制作スピードです。
広告代理店にて5年間、チラシやパンフレット、ポスターなどの紙媒体を中心に制作を行ってきました。クライアントとの打ち合わせには必ず同席し、表面的な要望だけでなく、その奥にある「誰に何を伝えたいか」という目的を深掘りすることで、修正回数の少ない精度の高い初稿提出を心がけました。
また、繁忙期には月間30本の案件を並行して進行させることもありましたが、優先順位の明確化とAdobeツールの効率的な運用により、納期遅延を一度も起こしませんでした。この対応力とスピードを活かし、貴社の販促活動を強力にサポートいたします。
UI・UXデザイナーの自己PR例文
【アピールポイント】 ユーザー視点、論理的思考力、プロトタイピング
私は、徹底したユーザー視点に基づき、使いやすさと体験価値を最大化するデザイン設計が得意です。
自社アプリのリニューアルプロジェクトにおいて、ユーザーインタビューやユーザビリティテストを主導し、課題の抽出から改善案の策定までを行いました。単にトレンドを取り入れるのではなく、ユーザーの行動心理に基づいた導線設計を行い、プロトタイピングツール(Figma)を用いてチーム内で検証を繰り返しました。その結果、アプリの継続利用率を15パーセント改善することに成功しました。
感覚的なデザインではなく、なぜその形や色なのかを論理的に説明できる強みを活かし、貴社のプロダクト価値向上に貢献したいと強く志望しております。
【状況別】キャリアチェンジやステップアップの自己PR例文
制作会社から事業会社(インハウス)へ転職する場合
【ポイント】 ビジネスへの貢献意欲、長期的な改善視点をアピールします。
私の強みは、デザインを経営課題解決の手段として捉え、事業の成長にコミットする姿勢です。
これまでは制作会社のデザイナーとして、多種多様な業界のクリエイティブに携わり、幅広い表現力を磨いてきました。しかし、納品して終わりではなく、自分が作ったものがどのように使われ、どう改善できるかという長期的な運用に携わりたいという思いが強くなりました。
貴社のインハウスデザイナーとして、これまでの制作スキルに加え、数値を計測し改善を繰り返すPDCAサイクルを回すことで、サービスの成長に貢献したいと考えています。
マネジメント経験をアピールする場合(アートディレクター候補)
【ポイント】 チームビルディング、品質管理、若手育成を強調します。
私は、チーム全体のクリエイティブ品質を底上げするマネジメント能力とディレクション力を持っています。
前職ではチーフデザイナーとして、5名のメンバーの進捗管理とクオリティチェックを担当しました。メンバー個々の得意分野を見極めてタスクを振り分けるとともに、定期的なデザインレビュー会を実施してナレッジの共有を図りました。
その結果、チーム全体の制作効率が向上し、残業時間を削減しつつ売上目標を達成することができました。プレイヤーとしての制作能力はもちろん、組織を牽引するリーダーとして貴社の制作体制強化に尽力いたします。
ポートフォリオへの誘導を忘れない
職務経歴書の自己PRは、あくまでポートフォリオを見てもらうための「予告編」のようなものです。文章で興味を惹きつけた上で、「具体的な制作実績については、別添のポートフォリオ(またはWebサイトURL)をご覧いただけますと幸いです」と一言添えることを忘れないでください。
論理的な文章で書かれた職務経歴書と、感性と技術が詰まったポートフォリオ。この両輪が噛み合ったとき、あなたのデザイナーとしての価値は最大限に伝わります。自信を持って、あなただけの強みをアピールしてください。





