設計職の職務経歴書 例文と書き方ガイド 技術と実績を「仕様書」のように伝える戦略
機械設計、建築設計、電気・電子回路設計など、モノづくりの最上流を担う設計職。その転職活動において、職務経歴書は単なる経歴の羅列ではなく、あなた自身の技術力を証明する「仕様書(スペックシート)」のような役割を果たします。
採用担当者や現場のエンジニアは、あなたが「何のツールを使い」「どの工程を担当し」「どのような製品を生み出してきたか」を詳細に知りたいと考えています。
ここでは、設計職が書類選考を確実に突破するために押さえておくべき書き方のポイントと、職種別(機械・建築・電気)の具体的な例文を紹介します。
設計職の採用担当者が重視する3つの技術要件
具体的な例文を見る前に、採用側が「どこを見ているか」を整理しましょう。設計職の職務経歴書では、以下の3つの要素が具体的に記載されているかが合否を分けます。
1. 使用ツール(CAD)と環境のスペック
設計者にとってCADソフトは手足と同じです。
「AutoCAD」「CATIA」「SolidWorks」「Revit」などのソフト名だけでなく、使用歴(年数)やバージョン、2Dか3Dかを明記します。また、解析ツール(CAE)などの使用経験があれば、大きな加点要素となります。
2. 担当した「製品・物件」と「工程(フェーズ)」
「自動車部品の設計」だけでは不十分です。「エンジンポンプの筐体設計」「サスペンションの構造解析」など、担当部位まで具体的に書きます。
また、工程についても「構想設計」「基本設計」「詳細設計」「試作・評価」「量産立ち上げ」のうち、どこを担当したのか(または一貫して担当したのか)を明確にすることで、即戦力性をアピールできます。
3. QCD(品質・コスト・納期)への意識と実績
設計者のミッションは、良いものを設計するだけではありません。
「部品点数を削減してコストを下げた」「解析シミュレーションを活用して試作回数を減らし、納期を短縮した」など、ビジネス視点での貢献エピソードを盛り込みます。
【職種別】設計職の職務経歴書 例文
ここからは、代表的な3つの設計職種(機械・建築・電気)の例文を紹介します。ご自身の専門分野に合わせてカスタマイズしてください。
1. 機械設計(メカニカルエンジニア)の例文
【ポイント】
担当製品の具体性、使用CAD、そしてコストダウンや品質向上への技術的アプローチを強調します。
■ 職務要約
大学卒業後、自動車部品メーカーにて6年間、エンジン周辺部品の機械設計に従事。主に樹脂・板金部品の筐体設計を担当し、構想設計から量産立ち上げまでを一貫して経験しました。3D-CAD(CATIA V5)を用いたモデリングに加え、CAE解析による強度シミュレーションも行い、試作回数の削減(開発期間20%短縮)に貢献しました。
■ 活かせるスキル・知識
- 使用ツール: CATIA V5(6年)、AutoCAD(2年)、ANSYS(構造解析)
- 専門知識: 材料力学、樹脂成形、板金加工、幾何公差
- 語学力: TOEIC 700点(海外工場との技術打ち合わせ経験あり)
■ 職務経歴詳細
期間: 20XX年4月 ~ 現在
会社名: 〇〇工業株式会社(自動車部品メーカー)
担当製品: 自動車用インテークマニホールド、エアクリーナーケース
【担当業務】
- 顧客(完成車メーカー)との仕様打ち合わせ、要件定義
- 構想設計、詳細設計、図面作成(2D/3D)
- 流体解析・構造解析による形状最適化
- 金型メーカーとの折衝、試作品評価、量産移行対応
【実績・取り組み】
- 部品統合によるコストダウン従来3部品で構成されていた製品を、形状工夫により一体成形化することに成功。金型費および組立工数を削減し、製品コストを約15%低減させました。
- 不具合対策と品質向上量産初期に発生した振動ノイズに対し、CAE解析を用いてリブ形状を見直し。金型修正を最小限に抑えつつ、固有振動数をずらすことで恒久対策を行いました。
2. 建築設計(意匠・構造)の例文
【ポイント】
担当物件の用途・規模(構造・階数・延床面積)、施主との折衝経験、法適合確認などの実務能力をアピールします。
■ 職務要約
組織系建築設計事務所にて5年間、意匠設計を担当。主にS造・RC造のオフィスビルや商業施設(延床面積5,000㎡~20,000㎡規模)の基本設計・実施設計・監理業務に従事しました。施主様の要望を具現化するデザイン提案に加え、コストコントロールや法適合確認、施工現場との調整業務を得意としています。一級建築士 保有。
■ 職務経歴詳細
期間: 20XX年4月 ~ 現在
会社名: 株式会社△△設計事務所
担当物件: オフィスビル、商業施設、集合住宅
【主なプロジェクト実績】
物件名: (仮称)都内〇〇オフィスビル新築工事
規模・構造: S造 地上10階・地下1階 / 延床面積 8,500㎡
役割: 意匠設計チーフ(メンバー2名の指導)
担当フェーズ: 基本設計、実施設計、確認申請、現場監理
使用ツール: AutoCAD、Revit、SketchUp
【実績・取り組み】
- BIM(Revit)導入による効率化事務所内でいち早くBIMを導入し、干渉チェックを設計段階で実施。設備・構造との整合性を早期に確保し、現場での手戻りを防ぎました。
- コスト調整とVE提案資材価格高騰に伴う予算超過に対し、外装材の仕様変更や仕上げグレードの調整(VE案)を複数提示。デザイン性を損なわずに予算内での合意形成を図りました。
3. 電気・電子回路設計の例文
【ポイント】
アナログ・デジタルの担当区分、使用測定器、EMC対策(ノイズ対策)などの専門知識を具体的に記載します。
■ 職務要約
産業用ロボットメーカーにて、制御基板の回路設計(デジタル・アナログ混載)に4年間従事。マイコン周辺回路の設計からFPGAの論理設計、試作評価までを担当しました。特にノイズ対策(EMC設計)に強みを持ち、海外規格(CEマーキング)への適合対応も経験しています。
■ 職務経歴詳細
期間: 20XX年4月 ~ 現在
会社名: □□電機株式会社
担当製品: 産業用ロボットコントローラー、サーボアンプ
【担当業務】
- システム仕様検討、部品選定
- 回路図作成(CR-5000)、基板アートワーク設計指示
- FPGA設計(Verilog-HDL)
- 実機評価、ノイズ試験、信頼性試験
【実績・取り組み】
- 基板の小型化多層基板の層構成見直しと部品配置の最適化により、基板面積を従来比20%縮小。製品の小型軽量化に貢献しました。
- EMCノイズ対策開発初期段階からノイズシミュレーションを実施し、グラウンド設計を強化。外部試験機関でのEMC試験を一発でクリアし、開発リードタイムを遵守しました。
設計職の自己PRでアピールすべき「技術+α」
技術的な詳細は「職務経歴」で伝わります。自己PR欄では、技術者としての「スタンス」や「ポータブルスキル(対人スキル)」を補足しましょう。
1. 他部署との「調整力・コミュニケーション力」
設計は一人では完結しません。製造現場、営業、調達、品質保証など、他部署と連携して製品を作り上げる力は高く評価されます。
「製造現場の声を聞き、作りやすさを考慮した設計を行った」「営業と同行し、技術的な視点で顧客へ提案を行った」といったエピソードが有効です。
2. 新しい技術への「探究心」
「最新の加工技術を学ぶために展示会へ通った」「業務外で英語論文を読み、最新トレンドをキャッチアップしている」など、技術者としての知的好奇心や学習意欲をアピールします。
3. 「エンドユーザー視点」のものづくり
仕様書通りに作るだけでなく、「使いやすさ」や「安全性」を追求した姿勢を示します。「メンテナンス性を考慮して部品配置を工夫した」といった記述は、プロ意識の高さとして評価されます。
まとめ:あなたの技術を「言葉」で設計しよう
設計職の職務経歴書は、あなたの技術力を証明するための設計図です。
曖昧な表現は避け、具体的な「ツール名」「数値(コスト削減率や期間)」「専門用語」を用いて、読み手(技術者や採用担当)があなたの実力を正確にイメージできるように記述してください。
詳細なスペックと、仕事へのこだわりが伝わる書類を作成し、希望する企業への切符を掴み取りましょう。





