職務経歴書の「職務要約」書き方ガイド 複数社の経験を一貫性のある強みに変える例文集
転職回数が複数回ある場合、職務経歴書の冒頭にある「職務要約」は非常に重要な役割を果たします。1社のみの経験者とは異なり、複数の会社で得た経験をどのように繋ぎ合わせ、一貫性のあるキャリアとして伝えるかが書類選考突破のカギとなるからです。
単に「A社に入社し、その後B社、C社と転職しました」と事実を時系列で並べるだけでは、採用担当者に「一貫性がない」「飽きっぽいのでは」という懸念を抱かれるリスクがあります。
ここでは、複数社の経験を持つ方が、そのキャリアを「豊富な経験」や「高い適応能力」としてアピールするための職務要約の書き方と、パターン別の具体的な例文を解説します。
複数社の経歴を「ひとつの物語」にする書き方のコツ
職務要約は、あなたのキャリアのあらすじ(ダイジェスト)です。複数の会社を経験している場合、それぞれの点を線で結び、一本の芯が通ったキャリアであることを示す必要があります。
1. キャリアの「共通点(軸)」を見つけて要約する
会社や職種が変わっても、あなたの中に一貫して存在していたテーマを軸にします。
「顧客の課題解決を一貫して行ってきた」「業務効率化をテーマにバックオフィスを支えてきた」など、場所が変わっても発揮し続けてきたスキルやスタンスを中心に文章を構成します。
2. 直近の経歴や応募先に関連する経験を強調する
すべての会社を均等な文字数で紹介する必要はありません。採用担当者が最も知りたいのは、「今、あなたは何ができるか」です。
古い経歴や関連性の薄い経歴は「〇〇業界にて営業の基礎を習得後、」程度に留め、直近の会社での実績や役割に文字数を割くことで、即戦力性をアピールします。
3. 転職理由をポジティブな「接続詞」にする
会社から会社への移動理由をネガティブに書く必要はありません。「より専門性を高めるため」「営業としての幅を広げるため」といったポジティブな理由を、経歴を繋ぐ接続詞として使うことで、目的意識を持ってキャリアを形成してきた人物であると印象づけられます。
【パターン別】複数社の職務要約 例文集
それでは、具体的なシチュエーション別に職務要約の例文を紹介します。ご自身の経歴に近いものを参考に、内容をアレンジして活用してください。文字数は200文字~300文字程度が目安です。
パターン1:同職種でキャリアアップしてきた場合(3社経験など)
【状況】 営業職一筋、エンジニア一筋など、職種を変えずに会社を変えてスキルアップしてきたケース。
【ポイント】 一貫した専門性と、環境が変わっても成果を出せる「再現性」をアピールします。
【例文】
大学卒業後、一貫して10年間、法人営業職に従事してまいりました。
1社目のOA機器商社では新規開拓営業を通じて行動量を、2社目のIT企業では無形商材の提案力を養いました。その後、より大規模な顧客課題に向き合いたいと考え、現職のSIerへ転職いたしました。現職では、大手製造業向けのシステム導入プロジェクトをリードし、昨年度は部内トップの売上目標比120%を達成しました。
これまでの3社で培った「泥臭い開拓力」と「論理的な課題解決力」を活かし、貴社の事業拡大に即戦力として貢献したいと考えております。
パターン2:異職種・異業界へキャリアチェンジした場合
【状況】 販売から事務、営業から企画など、職種が変わっているケース。
【ポイント】 ポータブルスキル(持ち運び可能な能力)や、仕事へのスタンスに共通点を持たせてまとめます。
【例文】
これまでの7年間、アパレル販売、一般事務、営業アシスタントと、形は異なりますが「顧客や社内スタッフへのサポート業務」に従事してまいりました。
販売職で培った「相手のニーズを汲み取る傾聴力」をベースに、その後の事務職では「正確な処理能力」と「先回りして動くホスピタリティ」を磨いてまいりました。現職の営業アシスタント業務では、Excelスキル(VLOOKUP関数等)を活用した業務効率化も提案・実行しております。
職種は変わっても一貫して大切にしてきた「相手の立場に立つ力」と「事務処理能力」を活かし、貴社の総務職として円滑な組織運営に貢献いたします。
パターン3:転職回数が多い場合(一貫性が見えにくい場合)
【状況】 4社以上の経験があり、一貫性がないように見られがちなケース。
【ポイント】 「豊富な経験」と「高い環境適応能力」を強みとして変換します。
【例文】
これまでの12年間、人材・広告・メーカーと3つの異なる業界にて、法人営業および企画職として従事してまいりました。
扱う商材や顧客層は多岐にわたりましたが、どの環境においても「徹底した事前リサーチ」と「顧客視点」を徹底し、入社半年以内に目標を達成できる即戦力として貢献してまいりました。直近の株式会社〇〇では、これまでの多角的な視点を活かして新規事業の立ち上げにも参画しました。
複数の環境で培った「適応力」と「多角的な視点」を活かし、貴社の新規開拓領域において早期に成果を創出したいと考えております。
採用担当者がチェックする「NGな書き方」
最後に、評価を下げてしまう書き方も確認しておきましょう。
- 単なる社名の羅列
- NG:「A社に入社し退社、その後B社に入社し~」
- 改善:履歴書を見ればわかる事実は省き、そこで「何を得たか」「どう活躍したか」を中心に書きます。
- 退職理由の言い訳を書く
- NG:「業績悪化により退職」「人間関係が合わず転職」
- 改善:要約にはネガティブな退職理由は不要です。書くとしても「キャリアの幅を広げるため」といった前向きな表現に留めます。
- 全ての経歴を均等に書く
- NG:10年前の新人時代の話と、現在の話を同じ分量で書く。
- 改善:直近の経験や、応募先企業で活かせる経験にスポットライトを当て、メリハリをつけます。
まとめ:複数の経験はキャリアの「厚み」になる
複数社の経験があることは、決してマイナスではありません。それはあなたが異なる環境に適応し、それぞれの場所で学びを得てきたという「キャリアの厚み」です。
職務要約では、その厚みを「一貫性のあるストーリー」として整理し、採用担当者に「いろいろな経験があるからこそ、自社で活躍してくれそうだ」という期待感を持たせることが大切です。自信を持って、これまでの歩みをアピールしてください。





