建設・工事関係の職務経歴書における「実績」の書き方ガイドと例文
建設業界の転職活動において、職務経歴書はあなたの「技術力」と「現場対応力」を証明する設計図のようなものです。特に「実績(工事経歴)」の欄は、採用担当者が最も注目するポイントであり、合否を分ける決定打となります。
しかし、現場で汗を流してきた経験を、デスク上の書類でどう表現すれば良いのか悩む技術者は少なくありません。
ここでは、施工管理や現場監督、工事担当者が書類選考を通過するために押さえておくべき「実績」の書き方と、そのまま使える具体的な例文を紹介します。
採用担当者が工事経歴で見ている3つのポイント
建設会社や工務店の採用担当者は、単に「工事現場にいた事実」だけでなく、その現場であなたが「どのような役割を果たし、どう貢献したか」を見ています。
1. 現場の規模と難易度(数値化)
「マンション建設」と書くだけでは不十分です。「RC造15階建て」「延床面積〇〇㎡」「請負金額〇億円」といった具体的なスペックが必要です。これにより、あなたが扱える現場の規模感や、対応可能な工法・構造が即座に伝わります。
2. 担当した役割とマネジメント能力
現場代理人として全体を統括していたのか、主任技術者として品質管理をしていたのか、あるいは施工図担当だったのか。役割によって評価ポイントは異なります。特に、職人や協力会社をまとめるマネジメント能力や、発注者との折衝経験は高く評価されます。
3. 4大管理(工程・原価・品質・安全)での工夫
トラブルなく竣工させたことは大前提として、その過程でどのような工夫をしたかが重要です。「工期短縮のために工程表をどう見直したか」「原価低減のためにVE(バリューエンジニアリング)提案をしたか」など、利益や品質への貢献エピソードを盛り込みます。
工事実績を魅力的に見せる具体的な記述項目
職務経歴書には、一般的な職務経歴の欄とは別に、あるいはその中に組み込む形で「主な工事経歴」をリスト化して記載するのが鉄則です。以下の項目を網羅しましょう。
- 工事名称: (例)〇〇マンション新築工事、国道〇号線改良工事
- 発注者: 官公庁か民間か
- 工期: 20XX年X月~20XX年X月
- 建物概要: 構造(RC/S/SRC/W)、階数、延床面積、戸数、施工延長など
- 請負金額: 現場の規模感を示す重要な指標
- 自身の役職: 現場代理人、監理技術者、主任技術者、施工担当など
- 担当業務: 安全管理、品質管理、工程管理、原価管理、図面作成、写真管理など
【職種別】職務経歴書の工事実績・自己PR例文
それでは、具体的な職種やポジション別に、実績と自己PRの例文を紹介します。
1. 施工管理(現場代理人・監理技術者クラス)
【ポイント】
現場全体の統括能力、利益確保(原価管理)、トラブル対応力、発注者評価をアピールします。
【主な工事経歴・実績】
工事名: (仮称)〇〇オフィスビル新築工事
発注者: 民間デベロッパー
概要: S造 地上10階・地下1階、延床面積 8,500㎡
請負金額: 12億円
役割: 現場代理人兼監理技術者
【実績・取り組み】
- 工期短縮と利益率の向上鉄骨建方時のクレーン配置計画を見直し、資材搬入の効率化を図りました。これにより躯体工事期間を2週間短縮し、仮設費等の削減によって当初予算比5%の利益率向上を達成しました。
- 近隣対応と円滑な施工市街地での施工であったため、騒音・振動に対する近隣住民への説明会を丁寧に実施。苦情ゼロで竣工を迎え、施主様より高い評価をいただきました。
2. 施工管理(若手・担当者クラス)
【ポイント】
特定の管理項目(安全・品質など)への責任感、資格取得への意欲、職人とのコミュニケーションをアピールします。
【主な工事経歴・実績】
工事名: 市道〇〇線 舗装改修工事
発注者: 〇〇市
概要: 施工延長 L=450m、切削オーバーレイ工
役割: 現場担当者(写真管理・安全管理・出来形管理)
【実績・取り組み】
- 工事成績評定点の向上提出書類の作成および写真管理を担当。発注者の検査基準を熟読し、見やすく整理された書類作成を徹底しました。その結果、工事成績評定点で82点を獲得し、優良工事表彰に貢献しました。
- 安全管理の徹底朝礼時のKY(危険予知)活動を形骸化させず、日々の作業内容に応じた具体的なリスク共有を主導しました。担当した3年間の現場において無事故・無災害を継続中です。
3. 電気工事・設備工事担当者
【ポイント】
専門的な技術力、他職種(建築・他設備)との調整能力、CADスキルなどをアピールします。
【主な工事経歴・実績】
工事名: 〇〇病院 病棟増築に伴う電気設備工事
概要: 受変電設備増設、幹線動力、電灯コンセント、ナースコール設備
役割: 職長・施工管理
【実績・取り組み】
- 施工図作成と納まり調整Tfasを使用した施工図作成を担当。建築・空調業者との定例会議にて天井内配管の納まりを事前に調整し、現場での手戻りを防ぎました。
- 稼働中施設での安全施工既存病棟との接続工事において、停電時間を最小限に抑える切り替え計画を立案。病院側の業務に支障をきたすことなく、安全に施工を完了させました。
「実績に自信がない」時のアピールテクニック
「工期が遅れた」「赤字現場だった」など、誇れる実績がないと感じる場合でも、書き方次第で評価を変えることができます。
- 「トラブルからのリカバリー」を書く順調に進んだ現場よりも、トラブル(資材遅延、設計変更、悪天候など)に対してどう対処し、被害を最小限に抑えたかというプロセスは、現場対応力として高く評価されます。
- 「当たり前」を継続したことを書く「無事故無災害での竣工」「工期厳守」は、建設業において最も尊い実績の一つです。派手さがなくても、基本を徹底できる実直さは信頼に繋がります。
- 「資格」と「学習意欲」で補う実務経験が浅い場合は、施工管理技士の資格取得状況や、CADスキルの習得など、知識面での準備ができていることを強調しましょう。
まとめ:現場での汗と努力を「言葉」に変えて評価を勝ち取る
建設・工事関係の職務経歴書において、実績はあなたの「腕」そのものです。
忙しい現場業務の中で培った、段取り力、交渉力、技術力、そして安全への責任感。これらを具体的な数値やエピソードとともに記載することで、採用担当者は「この人に現場を任せたい」と確信します。
ご自身の携わった現場を一つひとつ思い出し、その一つひとつがあなたのキャリアを支える柱であることを意識して、職務経歴書を作成してください。





