栄養士の職務経歴書 採用担当者に評価される書き方と職種別例文
栄養士や管理栄養士の転職市場は、病院、福祉施設、保育園、委託給食会社、ドラッグストアなど活躍の場が多岐にわたります。そのため、応募する職種や施設形態によって求められるスキルが異なり、職務経歴書の書き方ひとつで評価が大きく変わることがあります。
採用担当者は、資格を持っていることは前提として、現場でどのような業務をこなし、どのような課題を解決してきたかという実務能力を重視しています。ここでは、栄養士としての経験を魅力的な実績として伝え、書類選考を通過するための職務経歴書の書き方と、職種別の具体的な例文について解説します。
栄養士の転職で採用担当者が見ている評価ポイント
職務経歴書を作成する前に、採用側が栄養士に何を求めているかを整理します。調理ができる、献立が作れるという基本的なスキルに加え、以下の要素が盛り込まれているかが合否を分けるポイントになります。
調理技術だけでなく管理能力を数値で示す
給食現場においては、限られた予算と時間の中で、安全でおいしい食事を提供し続けるマネジメント能力が問われます。職務経歴書では、調理食数、食種(常食、治療食、介護食など)、原価率、管理していたパートスタッフの人数などを具体的な数字で記載します。これにより、あなたがどの程度の規模の現場を回せるのか、コスト意識を持って業務に取り組める人物かが客観的に伝わります。
対象者に合わせた献立作成と栄養指導のスキル
病院や福祉施設、保育園では、喫食者の健康状態や年齢に合わせたきめ細やかな対応が求められます。単に献立作成と書くのではなく、糖尿病食や腎臓病食などの対応経験、アレルギー対応の実績、個人および集団栄養指導の件数などを詳細に記します。対象者に寄り添い、QOL(生活の質)の向上に貢献してきたエピソードは大きなアピール材料になります。
チームを動かすコミュニケーション能力と衛生管理意識
厨房業務はチームプレーです。調理師やパートスタッフと円滑に連携し、事故なく業務を遂行するコミュニケーション能力は必須です。また、HACCP(ハサップ)に沿った衛生管理の徹底や、ヒヤリハット活動への取り組みなど、食の安全を守るための具体的な行動も信頼性を高める要素となります。
職務経歴書の基本構成と作成のコツ
栄養士の職務経歴書は、専門用語が多くなりがちですが、事務長や人事担当者など専門外の人が読む可能性も考慮し、分かりやすく構成することが大切です。
職務要約でキャリアの全体像を伝える
冒頭の職務要約では、これまでの経歴を200文字から300文字程度で簡潔にまとめます。最終学歴卒業後から現在に至るまで、どのような施設で、どのような業務(直営か委託か、調理メインか管理メインかなど)を担当し、どのような実績を上げてきたかを記します。
活かせるスキルは具体的な業務と紐づける
保有資格(管理栄養士、栄養士、調理師など)だけでなく、実務で培ったスキルを具体的に記載します。例えば、原価管理と在庫調整によるコスト削減スキル、大量調理における工程管理と作業効率化スキル、NST(栄養サポートチーム)への参画経験など、応募先の業務に直結する強みをピックアップします。使用できる栄養計算ソフトやExcelなどのPCスキルも忘れずに記載します。
【職種別】栄養士の職務経歴書 例文
ここでは、代表的な転職パターン別に職務経歴書の例文を紹介します。ご自身の経験に合わせて内容を調整し、具体的なエピソードを加えてください。
給食委託会社から病院・福祉施設へ転職する場合の例文
委託会社での経験者は、現場での調理能力や運営管理能力が高く評価されます。即戦力であることをアピールしつつ、今後は患者様や利用者様に直接関わりたいという意欲を伝えます。
職務要約
大学卒業後、給食委託会社に入社し、総合病院(300床)および特別養護老人ホーム(100床)の厨房にて5年間勤務しました。大量調理、盛付、配膳などの現場業務からスタートし、3年目からは事業所責任者として献立作成、発注、在庫管理、スタッフ15名のシフト管理および指導を担当しました。原価率の適正化に取り組み、月間目標を1年間継続して達成しました。これまでの現場管理経験を活かし、貴院の直営栄養士として、患者様の治療に貢献できる食事提供に尽力したいと考えています。
職務詳細
期間:20XX年4月 から 現在
会社名:株式会社〇〇(給食受託事業)
配属先:医療法人〇〇会 〇〇総合病院(300床)
雇用形態:正社員
担当業務
・1日約900食(朝昼夕)の調理、仕込み、盛付、洗浄
・治療食(糖尿病、腎臓病、透析食など)および形態調整食の調理
・献立作成および展開献立の作成(専用ソフト使用)
・食材発注、検品、棚卸し、原価管理
・衛生管理(HACCPに基づいた帳票記録、衛生指導)
・パートスタッフの採用面接、シフト作成、教育指導
実績と取り組み
・作業工程の見直しによる残業時間削減
配膳ピーク時の動線を見直し、盛り付け作業の効率化を図りました。これにより、スタッフ全員の残業時間を月平均5時間削減しました。
・喫食率の向上
残食調査を定期的に行い、患者様の嗜好を分析してメニューを改善しました。特に行事食に力を入れ、アンケートでの満足度向上に貢献しました。
自己PR
私の強みは、現場の状況を瞬時に判断し、チームを動かす統率力です。委託会社での経験を通じて、突発的な欠員や機器トラブルなどの不測の事態にも冷静に対応できるタフさを身につけました。また、調理スタッフと密にコミュニケーションを取り、美味しく安全な食事を提供するための環境づくりに注力してきました。貴院においても、厨房部門と他職種との架け橋となり、チーム医療の一員として貢献いたします。
保育園栄養士として食育やアピールする場合の例文
保育園では、調理技術に加えて、子どもたちへの食育活動やアレルギー対応の正確さが求められます。
職務要約
認可保育園にて3年間、栄養士として給食運営全般および食育活動に従事しました。0歳児から5歳児までの乳幼児食(離乳食、幼児食)の調理と献立作成を担当し、アレルギーを持つ園児への除去食・代替食対応をミスなく遂行しました。また、子どもたちが食に興味を持てるよう、毎月の食育だよりの発行や、野菜の栽培、クッキング保育の企画・運営を行いました。
担当業務
・園児および職員計120食の給食・おやつ調理
・離乳食(初期・中期・後期・完了期)の個別対応
・食物アレルギー対応(卵、乳、小麦など対象児5名)
・月間献立作成、発注、栄養価計算
・食育計画の立案および実施
・保育士、保護者との連携および栄養相談
実績と取り組み
・アレルギー誤配防止の徹底
アレルギー対応マニュアルを改訂し、専用トレイの使用と職員間のダブルチェック体制を強化しました。その結果、在籍期間中の誤配・誤食事故ゼロを継続しました。
・食育による残食減少
苦手な野菜も楽しく食べられるよう、絵本の読み聞かせと連動したメニューを考案したり、野菜の皮むき体験を行ったりしました。これにより、野菜メニューの残食が減り、保護者からも好評をいただきました。
自己PR
子どもたちの成長を食から支えることに大きなやりがいを感じています。私の強みは、一人ひとりの発達段階や体調に合わせたきめ細やかな対応力です。離乳食の進み具合に悩む保護者様に対しては、送迎時に積極的に声をかけ、家庭での様子をヒアリングしながら個別のアドバイスを行ってきました。貴園においても、安心安全な給食提供はもちろん、食の楽しさを伝える食育活動に力を入れたいと考えています。
未経験・異業種から栄養士を目指す場合の書き方
実務未経験の場合は、資格取得に向けた学習内容や、前職で培ったポータブルスキル(調整力、管理能力など)をアピールします。
自己PR例文
私の強みは、相手の立場に立って考え行動するホスピタリティと、正確な業務遂行能力です。前職の一般事務では、細かいデータ入力やスケジュール管理においてミスなく業務をこなし、部署全体の効率化に貢献しました。栄養士の実務は未経験ですが、学生時代の実習やボランティア活動を通じて、大量調理の基礎や衛生管理の重要性を学びました。現在は管理栄養士の資格取得に向けて勉強を続けており、知識のアップデートに努めています。前職で培った事務処理能力と責任感を活かし、正確な発注や衛生管理業務から早期に戦力となれるよう、誠実に業務に取り組みます。
自己PRで伝えるべき栄養士としての想い
職務経歴書の最後には、スキルだけでなく、栄養士という仕事に対するあなたのスタンスを記します。
食を通じて健康を支える責任感をアピールする
栄養士の仕事は、人の身体をつくり、健康を守る責任ある仕事です。「喫食者の方々に『美味しかった』と言っていただけるのが一番の喜びです」という素直な感情や、「食事制限がある中でも、食べる楽しみを感じていただける工夫をしたい」というプロとしての情熱を伝えてください。
あなたのこれまでの経験は、どのような現場であっても必ず次の職場での糧となります。具体的な数字とエピソードで彩られた職務経歴書を作成し、採用担当者にあなたの熱意を届けてください。





