営業職で「実績がない」は思い込み。採用担当者に響く職務経歴書の書き方と例文
営業職の転職活動において、職務経歴書の作成で最も頭を抱えるのが「売上実績」の項目です。「トップセールスでもないし、目標未達の月も多かった」「ルート営業で、これといった華々しい成果がない」と悩み、実績欄をどう埋めればよいか迷ってしまう方は少なくありません。
しかし、採用担当者が求めているのは、必ずしも「売上No.1」の輝かしい数字だけではありません。たとえ数字としての結果が弱くても、そこに至るまでの「プロセス」や「工夫」が論理的に書かれていれば、十分に評価される可能性があります。
ここでは、一見実績がないように思える営業活動を、採用担当者が評価する「アピールポイント」へと変換する書き方と、そのまま使える具体的な例文を紹介します。
採用担当者は「数字」の裏にある「プロセス」を見ている
まず理解しておくべきなのは、転職市場において「実績=売上金額」だけではないということです。もちろん数字は重要ですが、それ以上に重要なのは「再現性」です。
たとえ売上が高くても、たまたま景気が良かったり、優良顧客を引き継いだだけだったりする場合、採用担当者は「うちの会社でも同じように売れるだろうか」と疑問を持ちます。逆に、厳しい環境下で目標には届かなくても、試行錯誤して改善を繰り返した経験がある人は、「課題解決能力がある」「育てれば伸びる」と評価されます。
したがって、実績がないと諦めるのではなく、「目標に対してどう考え、どう行動したか」というプロセスを言語化することが、書類選考突破の鍵となります。
「実績なし」を「評価される実績」に変える3つの視点
具体的な例文を見る前に、自分の営業活動を掘り起こすための3つの変換テクニックを押さえておきましょう。
1. 「結果」ではなく「行動量(KPI)」を数値化する
売上目標(KGI)が未達でも、そこに至るまでの行動量(KPI)なら誇れるものがあるはずです。
- 変換前: 売上目標未達
- 変換後: 新規開拓のためのテレアポを1日100件継続し、月間アポイント取得率を3%から5%へ向上させた。
行動量は「努力できる才能」の証明になります。
2. 「当たり前」を「独自の工夫」に変換する
「ルート営業で御用聞きをしていただけ」と思わずに、信頼を得るためにしていた小さな工夫を思い出します。
- 変換前: 定期的な顧客訪問
- 変換後: 訪問頻度を顧客の重要度別にランク分けし、接触頻度を最適化。競合他社の参入を許さず、契約継続率100%を維持した。
3. 「定性的な評価」を「信頼の証」にする
数字に出ない「顧客からの言葉」や「社内での役割」も立派な実績です。
- 変換前: 特筆すべき成果なし
- 変換後: 丁寧なヒアリングとレスポンスの速さが評価され、顧客満足度アンケートで部内1位を獲得。クレーム発生時の対応係としてチームを支えた。
【ケース別】営業実績の書き方例文
それでは、具体的なシチュエーション別に、職務経歴書に記載する「実績・取り組み」の例文を紹介します。ご自身の状況に近いものをアレンジして活用してください。
ケース1:目標未達が続いたが、行動量と粘り強さがある場合
結果は出なくても、泥臭く行動し続けたプロセスをアピールします。
【職務詳細・実績】
- 担当業務: 新規開拓営業(OA機器販売)
- 営業スタイル: テレアポ、飛び込み営業によるアプローチ
【実績・取り組み】
- 圧倒的な行動量による見込み客の創出厳しい市場環境の中、チーム平均の1.5倍となる「1日80件の架電」と「週20件の訪問」を徹底しました。成約に至らない場合でも、次回アプローチの種まきとして情報収集を行い、見込み客リストを部内で最も多く構築しました。
- アポイント取得率の改善トークスクリプトの改善を週次で行い、受付突破率を向上させました。結果として、売上目標には届かない月もありましたが、安定して新規商談を創出し続け、チームの活動量の底上げに貢献しました。
ケース2:ルート営業で、目立った数字が出にくい場合
既存顧客との関係構築力(リレーションシップ)と、守りの営業力をアピールします。
【職務詳細・実績】
- 担当業務: 既存顧客へのルートセールス(食品卸)
- 担当社数: 約50社(スーパーマーケット、小売店)
【実績・取り組み】
- 顧客との信頼構築と契約維持「御用聞き」にならないよう、顧客の在庫状況を先回りして把握し、欠品を防ぐ提案を行いました。このきめ細やかなフォローにより、担当エリアにおいて3年間「解約ゼロ」を達成し、競合他社への切り替えを阻止しました。
- 潜在ニーズの発掘による単価アップ日々の会話から顧客の課題(人手不足による陳列作業の負担など)をヒアリングし、陳列しやすい商品パッケージの提案を行いました。これにより信頼を獲得し、メイン商材以外の関連商品(クロスセル)の受注に成功。一人当たりの取引単価を前年比110%に向上させました。
ケース3:チーム営業で、個人の数字が見えにくい場合
チーム内での役割や、サポートによる貢献度をアピールします。
【職務詳細・実績】
- 担当業務: チーム制での法人営業(ITソリューション)
- 役割: インサイドセールスおよび資料作成、案件管理
【実績・取り組み】
- チームの成約率向上への貢献フィールドセールス(商談担当)が商談に集中できるよう、事前リサーチと提案資料のひな形作成を担当しました。顧客ごとの課題に合わせた資料カスタマイズを行うことで、チーム全体の商談成約率が15%から20%へ向上しました。
- ナレッジ共有による組織力強化チーム内で属人化していた成功事例や、よくある反論への回答集(FAQ)をマニュアル化し共有しました。これにより新人メンバーの早期戦力化に貢献し、チーム目標の達成を後方から強力に支援しました。
実績の弱さを補強する「自己PR」の書き方
実績欄で「プロセス」を書いたら、最後の「自己PR」欄でそれを人間性やスタンスとして総括します。
「粘り強さ」をアピールする例
「私は、結果が出るまで諦めずに試行錯誤を続ける『粘り強さ』があります。前職では目標未達の悔しさをバネに、自身の営業トークを録音して聞き直し、上司にロープレを依頼するなど、改善に向けた努力を怠りませんでした。この泥臭い行動力は、貴社の新規開拓業務においても必ず活かせると確信しております。」
「課題発見力」をアピールする例
「私は、数字に表れない顧客の小さな変化に気づく『観察力』を大切にしています。ルート営業において、単に商品を納品するだけでなく、顧客の表情や店内の様子から潜在的な困りごとを察知し、解決策を提案してきました。派手な実績はありませんが、顧客と長く深い信頼関係を築く力には自信があります。」
まとめ
営業職において「実績がない」というのは、多くの場合「数字の見せ方」や「プロセスの言語化」ができていないだけです。
あなたが日々行ってきた「電話をかけた数」「顧客のために調べた時間」「チームのために作った資料」は、すべて立派なビジネススキルであり実績です。自信を持ってそのプロセスを職務経歴書に記載し、採用担当者に「この人は自社でも真面目に頑張ってくれそうだ」という期待感を持たせてください。





