動画編集者・映像クリエイターの職務経歴書作成ガイド ポートフォリオと書類で勝ち取る転職戦略
YouTube市場の拡大や企業の動画広告需要の増加に伴い、動画編集者や映像クリエイターの求人は増加傾向にあります。しかし、クリエイティブな職種であるがゆえに、「ポートフォリオ(作品集)さえ良ければ採用される」と誤解されがちです。
実際には、採用担当者はポートフォリオで「技術とセンス」を確認し、職務経歴書で「一緒に働けるビジネスパーソンか」「制作の背景にある意図」を確認しています。書類選考を確実に通過するためには、動画作品の魅力を論理的な言葉で補強する職務経歴書が不可欠です。ここでは、動画クリエイターならではの職務経歴書の書き方と、採用担当者に響くアピールポイントについて解説します。
ポートフォリオへの導線を明確にする
動画編集者の転職において、ポートフォリオは命綱です。職務経歴書の中に、ご自身の作品が見られるURLを分かりやすく記載することが最優先事項となります。
YouTubeの限定公開リンクや、Vimeo、自身のポートフォリオサイトのURLを、職務経歴書の冒頭(氏名や連絡先の下あたり)に配置します。この際、単にURLを貼るだけでなく、「採用担当者様に向けた自己紹介動画(1分)」や「過去の制作実績まとめ(ダイジェスト)」など、何が見られるリンクなのかを明記すると親切です。また、パスワード制限をかけている場合は、パスワードの記載も忘れないようにしてください。
クリエイティブ環境と使用ツールの詳細スペック
動画制作は、使用するソフトやPC環境によってパフォーマンスが大きく左右されます。即戦力であることを証明するために、以下のテクニカルスキルを詳細に記載します。
使用ソフトと習熟度
Premiere Pro、After Effects、Final Cut Pro、DaVinci Resolveなどの編集ソフトに加え、PhotoshopやIllustrator(サムネイルや素材作成用)の使用経験も記載します。
「基本操作可能」「実務使用3年」「モーショングラフィックス作成可能」など、習熟度を言葉で補足します。
作業環境(OS・スペック)
WindowsかMacか、メモリやGPUのスペックなどを記載します。特にリモートワーク案件の場合、自宅のPCスペックや回線速度が業務遂行能力に直結するため、詳細な記載が信頼につながります。
制作実績は「担当範囲」と「数字」で語る
「カッコいい動画を作りました」という主観的なアピールだけでなく、ビジネス視点での実績を記載します。
担当工程(役割)の明確化
1本の動画ができるまでには、企画構成、台本作成、撮影、オフライン編集、テロップ入れ、BGM・SE選定、カラーグレーディング、MA(整音)、サムネイル作成など多くの工程があります。
「編集のみ担当」なのか「企画から納品までワンストップで担当」なのかを明記することで、採用担当者はあなたのスキルセットを正確に把握できます。ディレクション経験がある場合は、進行管理や外注管理の経験も強力なアピールになります。
マーケティング成果の数値化
動画は課題解決のツールです。その動画によってどのような成果が出たかを数字で示します。
YouTubeであれば「再生回数」「視聴維持率」「チャンネル登録者増加数」「クリック率(CTR)」など。
広告動画であれば「CVR(コンバージョン率)改善」「CPA(獲得単価)削減」など。
社内マニュアル動画であれば「研修時間の短縮」「問い合わせ件数の削減」など。
具体的な数字を出すことで、単なる作業者ではなく、数字にコミットできるマーケター視点を持ったクリエイターであることを証明できます。
案件の種類ごとにまとめる「キャリア式」の活用
動画編集者の場合、多種多様な案件を並行して行うことが多いため、時系列で書くと情報が雑多になりがちです。その場合は、案件のジャンルごとにまとめる「キャリア式」のフォーマットが有効です。
ジャンル別の構成例
ビジネス系YouTube動画編集
エンタメ系YouTube動画編集
企業プロモーションビデオ(PV)制作
SNS広告動画(ショート動画)制作
ウェディングムービー制作
このようにカテゴリ分けし、それぞれのジャンルで代表的な実績や得意な演出スタイル(テンポの良さ、情緒的な表現など)を記述すると、得意分野が一目で伝わります。
自己PRで伝えるべきコミュニケーション能力
動画制作は、クライアントの頭の中にある曖昧なイメージを具現化する作業です。そのため、編集技術以上に「コミュニケーション能力」や「ヒアリング能力」が重視されます。
クライアントワークとしての信頼性
「修正指示に対して即座に対応するレスポンスの速さ」や「クライアントの意図を汲み取り、プラスアルファの提案を行う姿勢」、「納期を厳守するスケジュール管理能力」などは、フリーランス・正社員問わず必須のスキルです。
クリエイター気質でこだわりすぎるのではなく、ビジネスとして納期と品質のバランスをとれる人物であることをアピールしてください。
演出意図の言語化能力
なぜそのフォントを選んだのか、なぜそのタイミングでカットしたのか、なぜそのBGMなのか。すべての編集には理由があります。
「ターゲット層が40代男性だったため、視認性の高いフォントを選び、BGMは落ち着いたジャズ調にしました」といったように、演出の意図を論理的に説明できる能力は、ディレクターやクライアントとの円滑な合意形成に役立ちます。
未経験から動画編集者を目指す場合
実務未経験の場合は、スクールでの学習内容や、自主制作作品(架空の案件を想定して作った動画など)を実績として記載します。
また、「前職の営業資料作成で培った構成力」や「事務職での細かいデータ管理能力」など、異業種で培ったポータブルスキルが動画制作のどの部分(構成やファイル管理など)に活かせるかをアピールします。
動画編集者の職務経歴書は、あなたのクリエイティブな感性を、ビジネスの言葉で翻訳する書類です。魅力的なポートフォリオ動画と、論理的で信頼感のある職務経歴書の合わせ技で、採用担当者に「この人に制作を任せたい」と思わせるプレゼンテーションを行ってください。





