経理の職務経歴書で書類選考を突破するための書き方とアピール戦略
経理職の転職市場は実務経験者を求める傾向が非常に強く、即戦力性が重視されます。そのため履歴書の職歴欄を補完する職務経歴書は、採用の合否を決定づける極めて重要な書類といえます。採用担当者は応募者がどの程度の規模の会社で、決算業務のどの工程までを担当し、どのような会計ソフトを使えるかを職務経歴書から瞬時に判断しようとします。
書類選考を確実に通過するためには、職務経歴書をご自身の専門性を証明するスペック表として機能させる必要があります。日々の仕訳入力から年次決算、税務申告に至るまで、経理業務は多岐にわたります。ご自身が担当していた領域を明確にし、採用担当者が自社の経理部門で即戦力として活躍する姿をイメージできるように記述することが重要です。ここでは経理職ならではの職務経歴書の書き方と、評価を高めるためのポイントについて解説します。
担当していた決算業務のフェーズを具体的に記載する
経理のスキルレベルを測る上で最も重要な指標となるのが決算業務の経験値です。職務経歴書には、単に経理業務に従事と書くのではなく、担当していた業務のフェーズを具体的に記載してください。日次業務としての現金出納や伝票起票から始まり、月次決算における試算表作成や売掛金および買掛金管理、そして年次決算での財務諸表作成や税務申告補助といったように、業務レベルを明確にします。
さらに上場企業での有価証券報告書などの開示資料作成や、連結決算の経験がある場合は非常に高い評価につながるため、必ず目立つ場所に記載します。スペースが限られている場合でも、月次決算の単独完結および年次決算補助を担当のように、ご自身が責任を持って完遂できる範囲を示すことがポイントです。どの範囲までを一人で担当し、どこから上司の承認が必要だったかという責任の所在を明確にすることも、実力を正しく伝えるためのテクニックです。
企業の規模と処理件数を数値化して実務能力を証明する
経理業務の難易度やスピード感は、勤務していた企業の規模によって大きく異なります。そのため職務経歴書の冒頭や会社概要欄には、その会社の年商や従業員数、資本金などのデータを書き添えることが必須です。これにより採用担当者は業務のボリューム感を把握できます。
さらにご自身の実務能力をアピールするために、処理件数を数値化して記載することをお勧めします。月間仕訳数が約500件、経費精算は月平均100名分を担当、請求書発行は月150件といった具体的な数字を盛り込むことで、正確かつスピーディーな処理能力を持っていることを客観的に証明できます。マネジメント経験がある場合は、経理課長として部下5名のマネジメントおよび業務フロー改善を担当と記載し、組織運営能力もアピールしましょう。
使用可能な会計ソフトとExcelスキルを明記する
経理の実務において会計ソフトとExcelのスキルは欠かせません。企業によって導入しているシステムは異なりますが、類似のソフトを使用した経験があれば、教育コストがかからない即戦力として歓迎されます。職務経歴書のスキル欄や行間を活用して、勘定奉行や弥生会計、SAPといった使用ソフト名を正確に記載します。
またExcelスキルについても、VLOOKUP関数やピボットテーブルを用いたデータ集計および分析や、マクロおよびVBAによる業務自動化ツールの作成といった具体的なスキルレベルを記述します。特に近年は業務効率化が求められているため、ITツールを活用して業務時間を短縮した実績などは、プラスアルファの強みとして高く評価されます。
簿記資格は取得年月と合わせて正確に記載する
経理職において日商簿記検定などの資格は実務能力を裏付ける重要な要素です。履歴書の資格欄に書くのはもちろんですが、職務経歴書の業務内容とリンクさせることでより説得力が増します。例えば実務未経験から資格を取得して転職した経歴がある場合、日商簿記2級取得後その知識を活かして月次決算業務を早期に習得といった記述を加えることで、学習意欲と実務への応用力をアピールできます。
また現在税理士科目合格を目指して勉強中である場合なども、自己PR欄や備考欄で触れておくと向上心のある人材として評価されます。ただし職務経歴書があまりにごちゃごちゃしてしまう場合は、資格情報は資格欄に集約し、職務経歴の欄は実務経験の記述に集中させるなど、全体のバランスを見ながら調整してください。
業務改善やコスト削減の実績をアピールする
経理は利益を直接生み出す部門ではありませんが、コスト削減や業務効率化を通じて会社の利益に貢献することができます。職務経歴書では、ルーチンワークをこなすだけでなく、課題意識を持って業務改善に取り組んだ実績を記述します。例えば経費精算システムの導入を主導し月間20時間の作業時間を削減した経験や、固定費の見直しを提案し年間〇〇万円のコストカットを実現した実績などです。
こうしたエピソードは、単なる事務作業員ではなく、経営視点を持って会社を支えることができる人材であることを証明します。受け身ではなく能動的に仕事に取り組む姿勢は、どのような企業でも高く評価されます。
派遣やパートから正社員を目指す場合の書き方
経理職では派遣社員やパートスタッフとして実務経験を積み、正社員へのステップアップを目指すケースも多くあります。この場合、雇用形態を正直に記載した上で、正社員と同等の業務を任されていたことを強調するのが効果的です。株式会社〇〇入社(派遣社員)と記載し、その下に正社員同様に月次決算の締め処理を担当や新人社員の指導育成にも従事と書き添えます。雇用形態に関わらず責任感を持って業務を遂行し、決算期などの繁忙期も乗り越えてきた実績を伝えることができれば、正社員としての採用可能性は十分に高まります。
履歴書でスペックを示し職務経歴書でプロセスを語る
経理の職務経歴書は、ご自身の持つ経理スキルと経験値を一目で伝えるためのスペック表です。ここで採用担当者の関心を引きつけ、この人は自社の業務に対応できそうだと思わせることができれば、より詳細な面接へと進むことができます。履歴書ではいつどこでどの規模の業務を行っていたかという事実を端的に伝え、職務経歴書ではそこで直面した課題をどのように解決し、どう業務改善につなげたかというプロセスを詳しく語るという役割分担を意識してください。正確性が命である経理職だからこそ、誤字脱字のない整然とした美しい書類を作成すること自体が、最大の実務能力アピールとなります。





