医師の転職を成功に導く履歴書職歴欄の正しい書き方と採用担当者が見ているポイント
医師の職歴欄はキャリアの信頼性を証明する最も重要なパートです
医師の転職活動において履歴書を作成する際、最も慎重に記述すべきなのが職歴欄です。一般的なビジネスパーソンとは異なり、医師のキャリアは初期臨床研修、後期研修(専攻医)、大学医局への入局や関連病院への出向など、独自のプロセスを経て形成されます。採用担当者である院長や事務長は、職歴欄を通じて応募者がどのような医療機関で研鑽を積み、どのような専門性を磨いてきたかを確認します。
そのため、単に病院名と入退職の年月を羅列するだけでは不十分です。各段階においてどのような役割を果たし、どのようなスキルを習得したかが伝わるように記載することが求められます。また、医局人事による異動なのか、自己都合による転職なのかといった背景も、採用判断における重要な要素となります。ここでは医師特有の用語の使い方や、複雑になりがちな経歴をすっきりと整理してアピールするための書き方について解説します。
入職や入局など医師特有の用語を正しく使い分ける
一般企業では入社や退社という言葉を使いますが、医師の履歴書においては、勤務形態や組織との関係性に合わせて適切な用語を使い分ける必要があります。基本的に、病院に雇用されて勤務を開始した場合は入職、勤務を終えた場合は退職と記載します。一方で、大学病院などの医局に所属した場合は入局、医局を離れる場合は退局という言葉を用いるのが一般的です。
また、初期臨床研修医として採用された場合は、〇〇病院 入職(初期臨床研修医として)と記載し、研修を終えた際には研修修了と書くのが正確です。同様に、後期研修(専攻医)の場合も、プログラムの修了に合わせて修了と記載します。これらの用語を正しく使い分けることは、医療業界の慣習を理解していることの証明となり、読み手である医療関係者に違和感を与えずに経歴を伝えるための基本マナーとなります。
研修医期間と専門医取得のプロセスを明確に記載する
医師のキャリアにおいて基盤となる初期臨床研修と後期研修(専門研修)の期間は、職歴欄でも明確に区分して記載する必要があります。まず、初期臨床研修については、研修先の病院名を書き、括弧書きで(初期臨床研修)と明記します。研修プログラムの途中で協力病院へ移動した場合は、その期間と病院名も記載することで、どのような環境で経験を積んだかが伝わりやすくなります。
後期研修についても同様に、基幹施設名とともに専攻医であることを明記します。また、この期間中に専門医資格を取得した場合は、職歴欄ではなく資格・免許欄に取得年月と正式な資格名を記載します。職歴欄では、専門医取得に至るまでの実務経験の流れを示し、資格欄でその結果を示すという役割分担を意識することで、情報の重複を防ぎ、読みやすい履歴書を作成することができます。
非常勤やスポット勤務の扱いは応募先へのアピール度で判断する
医師の働き方として一般的な非常勤勤務(アルバイト)やスポット勤務について、履歴書にすべて記載すべきか迷うことがあります。原則として、常勤としての職歴を中心に記載し、非常勤のみの勤務は省略しても問題ありません。しかし、その非常勤勤務が応募先の業務内容と深く関連している場合や、留学中や大学院在籍中の収入源として定期的に勤務していた場合は、記載することで臨床経験の継続性をアピールできます。
非常勤勤務を記載する場合は、病院名の横に(非常勤)と明記し、週の勤務日数や担当していた業務内容(外来、当直など)を簡潔に書き添えます。複数の医療機関で非常勤を掛け持ちしていたフリーランス期間がある場合は、主要な勤務先を1つか2つ記載し、その他複数の医療機関にて非常勤医師として勤務とまとめて記載する方法も有効です。情報の取捨選択を行い、キャリアの軸がぶれないように構成することが大切です。
異動が多い場合の書き方と医局人事の表現について
医局に所属していると、数年単位での関連病院への異動が頻繁に発生します。これらをすべて自己都合の転職のように書いてしまうと、定着性がないと誤解される恐れがあります。医局人事による異動であることを明確にするためには、入職の横に(医局人事により)と書き添えるか、職歴欄の冒頭で〇〇大学医学部〇〇教室 入局と記載した上で、その後の異動を時系列で記していく方法が一般的です。
行数が足りなくなるほど異動が多い場合は、履歴書には主要な拠点病院のみを記載し、詳細は職務経歴書(業績集)をご参照くださいと誘導するのも一つのテクニックです。ただし、直近の職歴や、今回応募する医療機関と同規模・同機能の病院での経験は、採用担当者が最も関心を持つ部分ですので、省略せずに詳細に記載することをお勧めします。
学位取得や留学期間の職歴欄での扱い方
大学院での研究期間や海外留学の期間は、学歴欄に記載するのが基本ですが、その期間中に臨床業務や有給の研究職に従事していた場合は、職歴欄にも記載することが可能です。例えば、大学院生として研究を行いながら、大学病院の医員として診療を行っていた場合は、職歴欄に〇〇大学病院 医員と記載できます。
海外留学についても、クリニカルフェローやリサーチフェローとして給与を得ていた場合は、立派な職歴となります。留学先機関名と役職を記載し、帰国後に退職した旨を記します。このように、学びの期間であっても医師としての実務実態があったことを職歴欄で補足することで、ブランク(空白期間)ではないことを証明し、臨床医としても研究医としても研鑽を積んできた厚みのあるキャリアをアピールすることができます。
職務経歴書や業績集との連動を意識して作成する
医師の転職活動では、履歴書に加えて「職務経歴書」や「業績集(研究業績書)」の提出が求められることがほとんどです。履歴書の職歴欄は、あくまでキャリアの全体像(あらすじ)を示すものと捉え、具体的な症例数、手術件数、発表論文などの詳細データは、職務経歴書や業績集に譲るのがスマートです。
履歴書に細かすぎる情報を詰め込むと、かえって視認性が下がり、重要な経歴が埋もれてしまいます。履歴書では、いつ、どこで、どのような立場で働いていたかという事実を正確に伝え、その中身の質の高さについては別紙で証明するという構成を意識してください。整然と記載された履歴書は、医師としての事務処理能力の高さや、誠実な人柄を印象づけるための第一歩となります。





