履歴書の志望動機と本人希望記入欄の正しい書き方とマナー

転職活動において履歴書を作成する際、自由に文章を記述する箇所として主に志望動機欄と本人希望記入欄の2つがあります。志望動機は熱意をアピールする場所として認識されていますが、本人希望記入欄については何をどこまで書いてよいのか迷ってしまう方が少なくありません。希望とあるからといって正直に全ての要望を書いてしまうと、採用担当者に扱いづらい人材だという印象を与えてしまうリスクがあります。ここでは書類選考を通過するために知っておくべき、志望動機欄と本人希望記入欄のそれぞれの役割と、適切な書き方のマナーについて詳しく解説します。

志望動機と本人希望記入欄の決定的な役割の違い

まず理解しておくべきことは、この2つの欄は採用担当者に対して発信するメッセージの種類が全く異なるということです。志望動機欄は、応募者が企業に対して提供できる価値や熱意といったプラスの要素をアピールする攻めのスペースです。一方で本人希望記入欄は、入社するために最低限必要な条件や制約事項を事務的に確認するための守りのスペースです。この役割を混同してしまい、本人希望記入欄で自己PRをしたり、逆に志望動機欄で待遇への要望を書いたりすることは避ける必要があります。それぞれの欄の目的に合わせた適切な情報を記載することで、ビジネスマナーの備わった読みやすい履歴書を作成することができます。

本人希望記入欄の基本は貴社の規定に従いますと書くこと

本人希望記入欄には、特段の事情がない限り個人の要望を細かく書き連ねることは避けるのが賢明です。書類選考の段階から勤務地や勤務時間、職種などの条件を細かく指定しすぎると、採用担当者は条件が合わなければ採用できない人材だと判断し、リスク回避のために不採用にする可能性があります。したがって、どうしても譲れない条件がない場合は、貴社の規定に従いますと一文のみ記入するのが基本かつ最も安全な書き方です。これにより、企業のルールに柔軟に対応できる姿勢を示すことができます。空欄のまま提出したり、特になしとだけ書いたりするのは、記入漏れや意欲の低さと受け取られる場合があるため避けるようにします。

書いてもマイナス評価にならない正当な希望とは

貴社の規定に従いますと書くのが基本ですが、働く上でどうしても譲れない条件や、伝えておかなければ業務に支障が出る事情がある場合は、正直に記載する必要があります。例えば親の介護や子供の送迎のために勤務時間に制限がある場合や、健康上の理由で通院が必要な場合などです。これらは隠して入社すると後々トラブルの原因となるため、書類の段階で伝えておくことがお互いのためになります。ただし書き方には配慮が必要です。単に〇〇のため残業できませんと書くのではなく、〇〇のため18時までの勤務を希望いたしますが、業務には支障のないよう最大限努めますといったように、仕事への意欲や配慮を添えることでネガティブな印象を和らげることができます。

連絡のつきやすい時間帯や入社可能日の記載方法

本人希望記入欄は、採用担当者との連絡をスムーズにするための通信欄としても活用できます。特に在職中の転職活動では、平日の日中に電話に出られないことが多いため、連絡のつきやすい時間帯や連絡手段を明記しておくと親切です。例えば、平日は18時以降であれば電話対応可能ですや、日中は電話に出られないためメールでの連絡を希望いたしますといった具体的な記述です。また入社可能日についても、在職中であれば引き継ぎ期間を考慮して、内定後1ヶ月程度を目安に〇月〇日より勤務可能ですと記載しておくと、採用担当者も入社スケジュールを組みやすくなります。こうした事務的な配慮ができることも、ビジネススキルの証明になります。

給与や待遇面の希望は書かないのが鉄則

本人希望記入欄で最も避けるべきなのは、給与や待遇に関する希望を具体的に書くことです。年収〇〇万円以上希望や、残業は月〇時間以内希望といった条件を履歴書に書いてしまうと、仕事内容よりも条件を優先する人物だと思われてしまいます。給与などの条件交渉は、書類選考を通過し、面接でお互いの評価が高まった段階、あるいは内定後のオファー面談で行うのが一般的です。まだ採用が決まっていない段階で金銭的な要求をすることは、心象を悪くするだけでメリットはありません。どうしても希望がある場合でも、履歴書には記載せず、転職エージェントを通すか面接の場で慎重に確認するようにします。

複数の職種に応募する場合の書き方

企業が複数の職種を同時に募集しており、そのどちらでも良い場合や、特定の職種を強く希望する場合には、本人希望記入欄でその旨を明確にします。例えば、営業職を希望いたしますと書くことで、採用担当者は配属のイメージを持ちやすくなります。また複数の職種に興味がある場合は、営業職を希望いたしますが、貴社の判断により事務職での採用も検討していただければ幸いですといった柔軟な書き方をすることも可能です。ただし、何でもやりますという姿勢は熱意のアピールになる一方で、専門性がないと判断されるリスクもあるため、自身のキャリアプランに合わせて慎重に記載内容を検討することが大切です。

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人材会社で15年間、転職・中途採用市場における営業職・企画職・調査職の仕事を経験。
社団法人人材サービス産業協議会「転職賃金相場」研究会の元メンバー
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