履歴書の志望動機で「人間関係」は書いてもいい?本音を好印象なビジネス表現に変える書き方と例文
転職活動を始めるきっかけとして、「職場の人間関係」は常に上位に挙がる理由の一つです。上司との相性や職場の雰囲気、チームワークの欠如などに悩み、次は人間関係の良い環境で働きたいと願うのは当然のことです。しかし、履歴書の志望動機欄に「人間関係が良い職場だから」「前の職場は人間関係が悪かったから」と正直に書いてしまうと、採用担当者にマイナスの印象を与えてしまうリスクがあります。
ここでは、人間関係を重視したいという本音を、採用担当者が「採用したい」と思うポジティブな志望動機に変換するテクニックと、具体的な書き換え例文について詳しく解説します。
「人間関係」をそのまま志望動機にすると評価が下がる理由
まず理解しておくべきなのは、企業にとって「人間関係が良い」というのはあくまで職場環境の一要素であり、それ自体が採用の目的ではないということです。採用担当者が志望動機で知りたいのは、「自社でどのような貢献をしてくれるか」「仕事に対してどれだけの熱意があるか」です。
そのため、志望動機の中心に「人間関係が良いから」「アットホームそうだから」といった理由を据えてしまうと、以下のような懸念を抱かれてしまいます。
- 依存心が強そう: 環境に与えられることばかりを期待していて、自ら働きかけようとする主体性がないと判断されます。
- ストレス耐性が低い: 少しでも気に入らない人がいると、すぐに辞めてしまうのではないかと警戒されます。
- 他責思考がある: 前職の退職理由を人間関係のせいにしている場合、入社後も何かのせいにしそうだと見なされます。
したがって、人間関係を重視することは心の中に留めつつ、履歴書上ではそれを「チームワーク」や「組織貢献」といったビジネスライクな言葉に変換して伝える必要があります。
人間関係の悩みを「ポジティブな意欲」に変換する3つの視点
「人間関係が良い環境で働きたい」という本音は、視点を変えれば立派なビジネススキルや向上心と言い換えることができます。以下の3つの視点を使って、好印象な志望動機に変換しましょう。
1. 「仲が良い」を「チームワークと成果」に変換する
「みんなが仲良さそうだから」という理由は、「チーム一丸となって目標を達成する風土に惹かれた」と言い換えます。仲が良いことを目的にするのではなく、良い関係性があるからこそ、円滑な連携によって大きな成果が出せるというロジックにすることで、プロフェッショナルな印象を与えます。
2. 「風通しが良い」を「改善提案と主体性」に変換する
「上司が厳しくない環境が良い」という理由は、「意見を自由に言い合える風通しの良い社風で、積極的に改善提案を行いたい」と言い換えます。居心地の良さを求めるのではなく、自分の意見を発信して会社を良くしたいという能動的な姿勢を示します。
3. 「人間関係の悪さからの脱却」を「顧客への集中」に変換する
「社内の足の引っ張り合いが嫌だ」という理由は、「社内調整に時間を割くのではなく、お客様と向き合うことに全力を注げる環境で働きたい」と言い換えます。ネガティブな環境要因を排除したい理由を、純粋に仕事の質を高めたいという意欲として伝えます。
【例文1】前の職場の人間関係(個人主義)が合わなかった場合
前職が個人プレーばかりで殺伐としていた場合、チームワークを重視する企業への志望動機として昇華させます。
志望動機 例文
チーム全体で協力し合い、高い目標を達成しようとする貴社の社風に強く惹かれ、志望いたしました。前職では個人での営業活動が中心でしたが、困難な課題に直面した際、チームで知恵を出し合い解決することの重要性とやりがいを痛感いたしました。貴社のような互いに高め合える環境であれば、私の強みである協調性とサポート精神を活かし、組織全体のパフォーマンス向上に貢献できると確信しております。
【例文2】コミュニケーション不足やトップダウンへの不満があった場合
意見が言えない環境から、風通しの良い環境へ移りたい場合の例文です。
志望動機 例文
「社員一人ひとりの意見を尊重し、挑戦を称える」という貴社の企業文化に感銘を受け、志望いたしました。現職では、決定事項を遂行する業務が中心でしたが、自ら課題を発見し、改善策を提案・実行できる環境でより責任感を持って仕事に取り組みたいという思いが強くなりました。貴社においては、社内外の方々と円滑なコミュニケーションを図りながら、業務フローの改善や新しい価値の創造に主体的に取り組み、事業の成長に貢献したいと考えております。
【例文3】コミュニケーション能力を強みとしてアピールする場合
人間関係構築が得意であることを、スキルとしてアピールする場合の例文です。
志望動機 例文
貴社の「顧客第一主義」を掲げ、部署の垣根を越えて連携する姿勢に共感し、志望いたしました。前職の販売職では、お客様との信頼関係構築はもちろんのこと、スタッフ間の円滑な情報共有を徹底することで、店舗全体の売上向上に貢献してまいりました。どのような環境でも良好な人間関係を築けるコミュニケーション能力には自信があります。この強みを活かし、貴社のチームの一員として周囲と協力し、円滑な業務運営と目標達成に尽力いたします。
「人間関係」をアピールする際に避けるべきNG表現
人間関係をテーマにする際、以下のような表現は「幼い」「プロ意識が低い」と判断されるリスクがあるため避けるのが賢明です。
- 「アットホームな職場に惹かれました」アットホームは聞こえは良いですが、馴れ合いや公私混同と紙一重です。仕事の厳しさを理解していないと思われる可能性があります。
- 「優しそうな社員の方が多いので」「優しく指導してもらいたい」という受け身の姿勢(甘え)に見えます。「切磋琢磨できる仲間に惹かれた」など、成長意欲を感じさせる表現を選びましょう。
- 「前職の人間関係が悪かったので」事実であっても、前の職場の悪口は絶対にNGです。「自分にも原因があるのではないか」と疑われてしまいます。あくまで「より良い環境で成果を出したい」という未来の話に終始してください。
人間関係が良い環境を求めることは、長く働く上で非常に重要です。しかし、それを志望動機として伝える際は、「自分にとって快適か」ではなく、「その環境なら自分がどう活躍できるか」という視点に切り替えて表現することが、採用への近道となります。





