履歴書の志望動機で御社と貴社はどっちを使うべきですか。書類選考で迷わない正しい使い分けと業界別のマナー
転職活動において履歴書を作成する際、志望動機の文章内で応募先の企業のことをどのように表記すべきか迷うことは意外と多いものです。普段の会話や面接の練習では御社という言葉を使っていても、書面である履歴書でそのまま使ってよいのか、あるいは別の表現があるのか、正しいビジネスマナーを理解しておくことは非常に重要です。相手の呼び方を間違えていると、それだけで社会人としての基本スキルを疑われてしまう可能性もあります。ここでは履歴書の志望動機における正しい相手企業の呼び方と、銀行や病院など一般企業以外に応募する際の業界別の使い分けについて詳しく解説します。
文書では貴社を使用し面接では御社を使うのが基本ルール
ビジネスシーンにおいて相手の会社を敬って呼ぶ言葉には、主に貴社(きしゃ)と御社(おんしゃ)の二つがあります。この二つの使い分けは、書き言葉か話し言葉かによって明確に決まっています。履歴書や職務経歴書、送付状、メールなどの文字として残る文書においては、書き言葉である貴社を使用するのが鉄則です。一方、面接や電話などの口頭でのコミュニケーションにおいては、話し言葉である御社を使用します。したがって履歴書の志望動機欄に記入する際は、御社ではなく貴社と書くのが正解です。混同しやすいポイントですが、この使い分けは社会人としての常識とみなされるため、無意識に御社と書いてしまわないよう提出前に必ずチェックを行う必要があります。
銀行や病院など一般企業以外の独特な呼び方とマナー
応募先が一般的な株式会社や有限会社であれば貴社で問題ありませんが、銀行、病院、学校、店舗など、組織形態によっては貴社という表現が適さない場合があります。それぞれの業界や組織には独自の敬称が存在します。
銀行や信用金庫などの金融機関に応募する場合は、貴行(きこう)や貴庫(きこ)という言葉を使用します。病院やクリニックなどの医療機関であれば、貴院(きいん)と表現するのが一般的です。また学校法人や教育機関の場合は貴校(きこう)や貴学(きがく)、協会や組合などの団体であれば貴法人(きほうじん)や貴団体(きだんたい)といった表現を用います。さらに小売店や飲食店などの店舗に直接応募する場合は、貴店(きてん)と書くのが適切です。志望する業界に合わせて正しい敬称を使うことは、その業界への理解度や志望度の高さを示すことにもつながります。
呼び方が分からない場合の安全な対処法
応募先の組織形態が特殊であったり、どの敬称を使えばよいか判断に迷ったりする場合もあります。例えば一般社団法人やNPO法人、あるいは複数の事業を展開しているグループ企業などです。このように判断が難しい場合は、無理に特殊な敬称を使おうとせず、汎用性の高い貴社、または貴法人を使用するのが無難です。近年では銀行や病院であっても、広義の意味で組織を指す貴社を使用してもマナー違反ではないとされる傾向にあります。最も重要なのは相手への敬意を表すことですので、間違った敬称を使って失礼になるリスクを冒すよりは、貴社で統一するか、あるいは法人格を含まない正式名称で記載するほうが安全です。
企業名をそのまま記載する場合のルールと注意点
志望動機の中で貴社などの代名詞ばかりが続くと文章が単調になったり、よそよそしい印象を与えたりすることがあります。そのような場合は、企業名をそのまま記載しても問題ありません。ただしその際は必ず略さずに正式名称で書くことがマナーです。例えば(株)〇〇商事のように省略するのではなく、株式会社〇〇商事と法人格を含めて正しく記述します。また文章の流れの中で何度も長い正式名称を繰り返すと読みづらくなるため、最初の1回目は正式名称で記載し、2回目以降は貴社や同社といった代名詞に置き換えるなど、読み手のリズムを考慮した工夫が必要です。
書類全体での統一感を意識して矛盾をなくす
履歴書の志望動機欄だけでなく、本人希望記入欄や職務経歴書、添え状(カバーレター)など、応募書類全体を通して呼び方を統一することも重要です。ある箇所では貴社と書き、別の箇所では御社と書いているような表記の揺れは、注意力散漫な印象を与えてしまいます。また応募先が銀行であるにもかかわらず、貴社と貴行が混在している場合も同様です。書類を作成し終えたら一度全体を見直し、相手の呼び方がルール通りに使われているか、そして書類全体で統一されているかを入念に確認してください。正しい言葉遣いは、あなたの誠実さとビジネススキルを裏付ける強力な要素となります。





