履歴書の志望動機が「なし」でも書類選考は通る?書くことがない時の対処法とNG判定される理由
転職活動を進める中で、条件面や待遇の良さに惹かれて応募を決めたものの、いざ履歴書を書こうとすると「志望動機」が全く思い浮かばないというケースは珍しくありません。「特に理由はないけれど、家から近いから」「給料が良いから」というのが本音であり、それをそのまま書くわけにもいかず、かといって嘘をつくのも気が引ける。その結果、「志望動機なし(特になし)」と書くか、あるいは空欄のまま提出してもよいのではないかと迷ってしまうこともあるでしょう。しかし、書類選考を通過するためには、この欄をどのように扱うかが極めて重要です。ここでは、「志望動機なし」での提出のリスクと、書くことがない状態から説得力のある動機を生み出すための具体的な対処法について解説します。
「志望動機なし」や空欄での提出は不採用への直行便
まず結論から申し上げますと、履歴書の志望動機欄を空欄にしたり、「特になし」と記入して提出したりすることは、書類選考において「不採用」への直行便に乗るようなものです。採用担当者にとって志望動機は、応募者が自社に対してどれだけの熱意を持っているか、入社後に定着して活躍してくれるかを判断する最も重要な指標の一つです。ここが空白であるということは、「御社に興味がありません」「とりあえず応募しただけです」と宣言しているのと同じことです。どれほど優れた経歴やスキルを持っていたとしても、意欲が感じられない人物を採用したいと考える企業はありません。また、ビジネス文書において必須項目を埋めないという行為自体が、「ビジネスマナーの欠如」や「仕事への雑な姿勢」とみなされるリスクも高いため、何があっても空欄での提出は避けるべきです。
「特になし」を回避するための本音を建前に変換するテクニック
志望動機が思い浮かばない原因の多くは、応募のきっかけが「給与」「休日」「勤務地」などの「条件面」にあるからです。これらは決して悪い理由ではありませんが、そのまま書くと「条件だけで選んだ(条件が悪くなればすぐ辞める)」と受け取られてしまいます。重要なのは、これらの「本音」を、企業側がメリットを感じる「建前(ビジネス上の理由)」に変換することです。
- 本音が「家から近い」の場合
- 変換後:「地域に根差した貴社の事業に貢献したい」「通勤時間を自己研鑽や業務への集中に充て、長く腰を据えて働きたい」
- 解説: 地元の利便性を「長く働ける環境」「地域貢献」というキーワードに置き換えることで、定着率の高さをアピールできます。
- 本音が「給料が良い」の場合
- 変換後:「成果を正当に評価する貴社の方針に魅力を感じた」「高い目標に挑戦できる環境で、自身のスキルを最大限に発揮し売上に貢献したい」
- 解説: 待遇の良さを「実力主義への共感」「貢献意欲」に変換し、会社に利益をもたらす人材であることを伝えます。
- 本音が「残業が少なそう・楽そう」の場合
- 変換後:「効率的な業務運営を推進する貴社の社風に惹かれた」「ワークライフバランスを整えることで、業務時間内の集中力を高め、質の高い仕事を遂行したい」
- 解説: 楽をしたいという姿勢ではなく、生産性の高さやメリハリのある働き方を重視する姿勢として表現します。
企業研究で「書くことがない」状態を脱却するヒント
志望動機が書けないもう一つの理由は、応募先企業について「よく知らない」ことです。求人票の条件欄だけでなく、企業のウェブサイトや採用ページ、社長のメッセージなどを一度じっくり読んでみてください。そこには必ず、その企業が大切にしている価値観や、独自の強み、今後のビジョンが書かれています。「書くことがない」状態から脱却するためには、それらの情報の中から「自分と共通する点」や「共感できる点」を一つでも見つける作業が必要です。例えば、「お客様第一」という理念があれば、自分の過去の接客経験と結びつけることができます。「新しい技術への挑戦」を掲げていれば、自分の好奇心旺盛な性格とリンクさせることができます。小さな接点を見つけ、それを膨らませることで、立派な志望動機が完成します。
どうしても思いつかない場合は志望動機欄が小さいフォーマットを活用する
どうしても文章がまとまらず、空欄を埋める自信がない場合の最終手段として、履歴書のフォーマット(様式)自体を変えるという方法があります。市販されている履歴書やダウンロードできるテンプレートの中には、志望動機欄が非常に小さいものや、志望動機欄そのものがなく「自己PR欄」のみになっているタイプも存在します(JIS規格以外のもの)。自己PRであれば、自分の過去の経験やスキルを書くだけですので、特定の企業に向けた動機よりも書きやすい場合があります。ただし、これはあくまで履歴書上のスペースの問題を解決するだけであり、書類選考を通過した後の面接では必ず「なぜ当社なのか」と聞かれます。その場しのぎの対策ではなく、面接まで見据えた準備が必要であることは忘れてはいけません。
面接を見据えて「消極的な理由」を「積極的な貢献」に変える思考法
「志望動機なし」の状態から無理やりひねり出した動機は、面接官に深掘りされたときに見抜かれてしまう危険性があります。そのため、履歴書を書く段階から思考の転換を行うことが大切です。「なぜこの会社に入りたいか(テイク)」ではなく、「自分がこの会社に入ったら何ができるか(ギブ)」を考えてみてください。「前職の〇〇の経験を活かして、貴社の〇〇業務をサポートできると考えたため志望しました」という構成であれば、会社への愛を語る必要はなく、自分のスキルと業務のマッチングを語るだけで論理的な志望動機になります。これならば、特別な思い入れがなくても、「貢献できるから志望した」というビジネスライクかつ説得力のある主張が可能になります。消極的な動機を積極的な貢献へと変換し、自信を持って提出できる履歴書を作成してください。





