自営業・フリーランス経験者の履歴書作成ガイド。「入社」を使わない正しい書き方とアピール術
個人事業主(自営業)として独立していた期間や、実家の家業を手伝っていた期間がある場合、いざ転職活動で履歴書を書こうとすると「会社員とは違うので書き方が分からない」と悩む方は少なくありません。
「入社・退社」という言葉を使っていいのか、屋号は書くべきか、廃業した場合はどう書くのか。これらの疑問を解消せず曖昧なまま提出してしまうと、経歴が正しく伝わらないばかりか、ビジネスマナーを疑われてしまうリスクもあります。
自営業の経験は、ビジネスを自分自身で回してきたという強力な「実務能力」の証明です。ここでは、自営業・フリーランス経験者が履歴書を書く際の正しい用語やレイアウト、そして会社員への転職を成功させるためのアピールポイントについて詳しく解説します。
自営業は「入社・退社」ではなく「開業・廃業」を使うのが鉄則
履歴書の職歴欄を作成する際、最も重要なルールは用語の使い分けです。会社員は企業と雇用契約を結ぶため「入社」を使いますが、自営業者は雇用されていないため、この言葉は使いません。
基本的には、以下の用語を使用するのが一般的で正確です。
- 事業を始めた時: 「開業」 または 「設立」(法人化した場合)
- 事業を辞めた時: 「廃業」 または 「退任」(法人化した場合)
開業届を出さずにフリーランスとして活動していた場合などは、「活動開始」「活動停止」といった表現を使うこともありますが、ビジネスとしての体裁を整えるなら「開業」「廃業」が最も無難で分かりやすい表現です。
【パターン別】職歴欄への正しい書き方と記入例
自営業といっても、個人事業主、法人化、家業手伝いなど形態は様々です。それぞれのケースに合わせた適切な書き方を紹介します。
1. 個人事業主(フリーランス)として働いていた場合
屋号(お店や事務所の名前)がある場合は、それを記載します。屋号がない場合は「個人事業主として」と記載します。
【記入例】
Plaintext
令和〇年 4月 個人事業主として開業(屋号:〇〇デザイン事務所)
Webサイトの制作、ディレクション業務を受託
令和〇年 3月 一身上の都合により廃業
2. 実家の家業を手伝っていた場合
実家が自営業で、その手伝いをしていた場合は「従事」という言葉を使うのが丁寧です。
【記入例】
Plaintext
令和〇年 4月 家業(〇〇青果店)に従事
店舗での接客販売、仕入れ、配送業務を担当
令和〇年 3月 一身上の都合により退職
※家業の場合、雇用契約が曖昧なことも多いため、「退社」や「廃業」ではなく「退職」とするのが一般的です。
3. 会社を設立(法人化)していた場合
自分で株式会社などを設立し、代表を務めていた場合は「設立」「解散(または退任)」を使います。
【記入例】
Plaintext
令和〇年 4月 株式会社〇〇 設立
代表取締役として経営および営業活動に従事
令和〇年 3月 同社 解散
4. 現在も自営業を続けている場合
在職中のまま転職活動をする場合は、「現在に至る」を使用しますが、入社後の扱い(副業にするか廃業するか)を明確にする必要があります。
【記入例】
Plaintext
令和〇年 4月 個人事業主として開業
現在に至る(入社に伴い廃業予定)
「何をやっていたか」を具体的に書き添える重要性
会社員であれば「株式会社〇〇 入社」と書けば、会社の知名度である程度業務が想像されますが、自営業の場合はそうはいきません。
履歴書の職歴欄には、「開業」の事実だけでなく、具体的な業務内容や規模感を書き添えることが不可欠です。
- 職種・業務: (例:飲食店経営、ECサイト運営、内装工事の請負など)
- 役割: (例:営業から経理まで全般、店舗責任者としてアルバイト3名を管理など)
- 実績: (例:月間売上〇〇万円達成、年間〇件の案件を受注など)
これらを1〜2行で補足するか、「詳細は職務経歴書に記載」として別紙でしっかりアピールするようにしましょう。
自営業経験を「組織で活かせる強み」に変換するコツ
企業が元自営業者を採用する際に懸念するのは、「組織のルールに馴染めるか」「チームワークができるか」という点です。
書類選考を通過するためには、自営業ならではの強みをアピールしつつ、組織人としての適性も示すバランスが大切です。
1. 「経営者視点」と「コスト意識」をアピール
自営業は、自分の給料を自分で稼ぐ必要があります。そのため、会社員以上に「利益」「コスト」「効率」にシビアな感覚を持っているはずです。「数字に強い」「経営的な視点で業務を捉えられる」という点は、即戦力として高く評価されます。
2. 「泥臭い仕事もできる」姿勢を示す
全てを自分でこなしてきた経験から、営業も事務も雑務も厭わずに遂行できる「実務能力の高さ」と「責任感」をアピールしましょう。「看板がない状態で信頼を勝ち取ってきた」という事実は、何よりの営業力の証明になります。
3. 廃業理由(転職理由)をポジティブに伝える
「経営がうまくいかなかったから」というネガティブな理由だけでなく、その経験を経て「組織だからこそできる大きなプロジェクトに挑戦したい」「チームで成果を出す仕事がしたい」という前向きな意欲に変換して志望動機を作成してください。
まとめ
自営業の期間は、決して特殊なキャリアでもブランクでもありません。「開業・廃業」という正しい用語を使い、ビジネスを一人で回してきた経験を具体的に伝えることで、会社員にはない「逞しさ」や「自律性」を持った人材としてアピールすることができます。
自信を持ってそのキャリアを履歴書に記載し、次のステージへのステップアップにつなげてください。





