履歴書の長所・短所欄の書き方と採用担当者に好印象を与える作成テクニック
履歴書を作成する際、学歴や職歴などの事実情報とは異なり、自身の内面を言葉にする「長所・短所」の欄で筆が止まってしまう方は少なくありません。自分の強みをアピールしたいけれど自慢に聞こえないか不安だったり、短所を正直に書きすぎて評価を下げてしまわないかと悩んだりするのは自然なことです。
しかし、この欄は採用担当者にとって、応募者の人柄や自己分析能力、そして課題に対する向き合い方を知るための重要な情報源です。書き方のコツさえ掴めば、短所であってもポジティブな要素としてアピールすることが可能です。ここでは、採用担当者の視点を踏まえた長所・短所の正しい書き方や、短所を強みに変える言い換えテクニック、そしてそのまま使える例文について詳しく解説します。
採用担当者が履歴書で長所と短所を確認する本当の意図
採用担当者は、単にあなたが「明るい性格か」「几帳面か」といった性格診断の結果を知りたいわけではありません。ビジネスの現場において、その性格がどのように作用するかという視点でチェックしています。
長所においては「自社の業務で活かせる強みを持っているか」を確認しています。例えば営業職であれば行動力や対人スキル、事務職であれば正確性や継続力が求められます。応募している職種と長所がマッチしているかどうかが重要な評価ポイントとなります。
一方、短所においては「自分自身を客観的に理解できているか(メタ認知)」と「課題に対してどのように対処しようとしているか(問題解決能力)」を見ています。人間誰しも短所はあります。それを隠すのではなく、自覚した上でどのようにコントロールし、業務に支障が出ないように工夫しているかという姿勢こそが、社会人としての信頼性につながります。
説得力を持たせるための文章構成と書き方の基本
長所・短所を記載する際は、単語を羅列するだけでなく、具体的なエピソードを交えて説明することで説得力が増します。基本的には以下の3段構成で文章を組み立てると、読み手に伝わりやすくなります。
まず「結論」から書き始めます。「私の長所は〇〇です」「短所は△△なところです」と端的に述べます。次にその根拠となる「エピソード」を記述します。過去の職務経験や日常生活の中で、その性格が表れた具体的な場面を挙げます。
最後に「まとめ」として、長所であれば入社後にどう活かすか、短所であれば現在どのように改善・対策を行っているかで締めくくります。この流れを作ることで、単なる性格の紹介ではなく、ビジネスパーソンとしての資質を伝えるプレゼンテーションになります。文字数は欄の大きさにもよりますが、長所と短所を合わせて、あるいはそれぞれについて記述し、全体の8割程度を埋めるのが目安です。
長所のアピール方法と職種別のポイント
長所を書く際は、応募する職種で求められるスキルとリンクさせることが鉄則です。いくら素晴らしい長所でも、業務に関係のないものであれば評価にはつながりません。
営業職や接客業であれば、「初対面の人ともすぐに打ち解けられる社交性」や「目標達成に向けた行動力」、「相手のニーズを汲み取る傾聴力」などが好まれます。事務職や経理、エンジニアなどであれば、「細部まで確認を怠らない几帳面さ」や「一つの物事に集中して取り組む継続力」、「論理的に物事を考える思考力」などが有効です。
また、協調性や責任感といった汎用的な長所を挙げる場合は、ありきたりな内容にならないよう注意が必要です。「チームの意見が割れた際に調整役として機能した」といった具体的な行動事実を添えることで、あなたならではの強みとしてアピールできます。
短所を長所に変える「リフレーミング」の言い換えテクニック
短所を書くことに抵抗がある方も多いと思いますが、短所と長所は表裏一体の関係にあります。見方を変える(リフレーミングする)ことで、短所をポジティブな印象に変えることができます。
例えば「優柔不断」という短所は、「物事を慎重に考え、多角的に検討することができる(慎重さ)」と言い換えることができます。「せっかち」は「スピーディーに行動し、時間を無駄にしない(行動力)」とも取れます。「心配性」は「リスク管理ができ、準備を怠らない(計画性)」という強みの裏返しです。
履歴書に記載する際は、短所を素直に認めつつ、それが長所としても機能している側面を匂わせたり、短所が出すぎないように気をつけている具体的な対策を書き添えたりすることが重要です。「心配性なところがありますが、その分、事前の確認を徹底することでミスを防いでいます」といった書き方が理想的です。
そのまま使える長所・短所のペア例文集
自分の性格に当てはまる表現が見つからない場合のために、よく使われる長所と短所のペアと、書き方の例文を紹介します。
責任感が強い / 一人で抱え込みがち
「長所は、任された仕事を最後までやり遂げる責任感の強さです。一方で、責任感の強さゆえに仕事を一人で抱え込んでしまう短所があります。現在は、早めに周囲に相談し、チームで効率よく進めることを意識しています。」
行動力がある / 慎重さに欠ける
「長所は、思い立ったらすぐに行動に移すフットワークの軽さです。しかし、時に確認不足のまま進めてしまうせっかちな面が短所です。そのため、行動する前に一度立ち止まって計画を確認する習慣をつけています。」
協調性がある / 主体性に欠ける(流されやすい)
「長所は、周囲の意見を尊重し円滑な人間関係を築ける協調性です。一方で、他者の意見を優先しすぎて自分の主張を抑えてしまう優柔不断な面があります。会議などでは、まず自分の意見をまとめてから発言するように心がけています。」
集中力がある / 周りが見えなくなる
「長所は、一つの業務に対して高い集中力を持って取り組めることです。ただ、集中しすぎると周囲の状況が見えなくなることがあります。業務中は定期的に休憩を挟み、進捗を共有する時間を設けることで、視野を広く保つよう努めています。」
書いてはいけないNGな短所と注意点
短所は正直に書くべきですが、社会人として致命的と思われる内容は避けるべきです。例えば「時間にルーズ」「嘘をつく」「約束を守れない」「すぐに感情的になる」といった、信用に関わる短所は書かないのがマナーです。これらは改善の努力以前に、採用するリスクが高すぎると判断されます。
また、「特になし」と書くのも避けてください。自分自身を客観視できていない、あるいは真剣に書いていないとみなされます。さらに、長所と短所が全く矛盾している内容(例:長所が「計画的」で短所が「行き当たりばったり」など)になっていないかも、提出前に必ず確認してください。自分自身を深く理解し、コントロールできていることを示す記述ができれば、長所・短所の欄はあなたを助ける強力なアピール材料となります。





