書類選考における年収の書き方と希望額を伝える正しいタイミング
転職活動で履歴書や職務経歴書を作成する際、必ずと言っていいほど目にするのが本人希望記入欄や希望年収に関する項目です。ここに本当の希望額を書いても良いものか、それとも謙虚な姿勢を見せるべきか迷う方は少なくありません。特に年収アップを目指して転職する場合、正直に高い金額を書くことで書類選考で落とされてしまうのではないかという不安がつきまといます。ここでは書類選考における希望年収の適切な書き方や、金額の記載が合否に与える影響、そして年収交渉を行うべき正しいタイミングについて詳しく解説します。
履歴書の希望年収欄は「貴社の規定に従います」が基本ルール
履歴書やエントリーシートにある希望年収欄への記入は、書類選考の通過率を左右する非常に繊細な要素です。結論から言えば、この段階で具体的な金額を断定的に書くことは避けるのが賢明な戦略です。なぜなら書類選考はあくまで面接に呼ぶべき人物かどうかを判断するスクリーニングの場であり、条件交渉の場ではないからです。
まだあなたのスキルや人柄を十分に伝えきれていない段階で、相場よりも高い希望年収だけが一人歩きしてしまうと、企業側はコストが見合わないと判断し、会う前にお見送りにしてしまうリスクが高まります。そのため、希望年収欄に記載する最も標準的かつ推奨される文言は、貴社の規定に従いますというフレーズです。これは給与条件についてこだわりがないという意味ではなく、会社の評価制度や賃金テーブルを尊重し、そのルールの中で提示される金額を受け入れて検討するという柔軟な姿勢を示すものです。まずは選考の土俵に乗ることを最優先に考えるべきです。
具体的な希望金額を記載しても良い例外的なケースとは
基本的には規定に従いますと書くのがセオリーですが、例外的に具体的な金額を記載したほうが良いケースも存在します。それは現在の年収が高く、転職によって年収が下がることを絶対に避けたい場合や、生活水準を維持するために譲れない最低ライン(最低希望年収)が明確にある場合です。
例えば現年収が600万円で、500万円以下なら転職する意味がないと考えているのであれば、希望年収500万円以上と記載しておくことで、条件に合わない企業とのミスマッチを事前に防ぐことができます。お互いにとって時間の無駄を省くという意味では有効です。ただしこの場合も、希望年収500万円(応相談)のように、相談の余地があることを書き添えておく配慮が必要です。またハイクラス求人やエグゼクティブ層の転職においては、自身の市場価値を明確にするために現年収と希望年収を数字で示すことが求められる場合もあります。
希望年収を書くことによる書類選考へのリスクと影響
具体的な希望年収を書類に記載することには、明確なリスクが伴います。企業にはそれぞれ独自の給与体系があり、同じ職種でも年齢や等級によって支給額の上限が決まっていることがほとんどです。応募者の希望額がその上限を少しでも超えていると、採用担当者は調整が難しいと判断し、面接の機会を与えることなく不採用にする可能性があります。これを条件面での足切りと呼びます。
一方で、あまりに低い金額を書くと、自身の市場価値を低く見積もっていると捉えられたり、自信がない人物だと思われたりする可能性もあります。また、一度低い金額を提示してしまうと、その後の交渉で金額を上げることが難しくなるケースもあります。書類選考の段階では、年収の数字そのものが一人歩きしやすいため、不用意な記載は自らの可能性を狭めてしまう原因となりかねません。
職務経歴書に現在の年収を記載する必要性と注意点
職務経歴書において現在の年収を記載すべきかどうか迷うこともありますが、基本的には記載する必要はありません。現在の年収は個人情報の中でも特にセンシティブな情報であり、選考の初期段階で開示義務があるものではないからです。ただし、転職エージェント経由で応募する場合や、特定のフォーマットで記載を求められている場合は、正直に現在の年収(額面)を記載します。
ここで注意すべきなのは、年収を少しでも高く見せようとして嘘の金額を書くことは絶対にしてはいけないという点です。入社手続きの際には源泉徴収票の提出が求められるため、虚偽の申告は必ず発覚します。発覚した場合、信頼を失うだけでなく、最悪の場合は内定取り消しや解雇の事由にもなり得ます。記載する場合は、賞与を含んだ総支給額を正確に記入することが鉄則です。
年収交渉を行うべきベストなタイミングは書類選考ではない
転職活動において年収は非常に重要な要素ですが、その交渉を行うベストなタイミングは書類選考の段階ではありません。交渉力が最も高まるのは、面接が進み、企業側がぜひあなたを採用したいと本気で考え始めた最終面接前後、あるいは内定オファーが出る直前です。
企業があなたの能力を高く評価し、どうしても入社してほしいと思っている状態であれば、多少の条件アップの交渉にも応じてくれる可能性が高まります。まだ評価が定まっていない書類選考の段階で条件を主張しすぎると、扱いづらい人材という印象を与えてしまいかねません。書類選考では謙虚な姿勢で通過することに専念し、具体的な条件交渉は内定が見えてきた段階で転職エージェントなどを通じて行うのが、希望年収を実現するための最も確実なルートです。





