転職活動と職務経歴書。ChatGPT（生成AI）の賢い活用法

転職活動と生成AIツールの登場

転職活動において、職務経歴書は自身のキャリアとスキルを伝えるための重要な書類であります。その作成は、過去の経験を棚卸しし、アピールポイントを言語化するという、時間と手間のかかる作業でもあります。近年、ChatGPT（チャットGPT）に代表される生成AI（人工知能）ツールが急速に普及し、この職務経歴書の作成プロセスに活用する動きが注目されています。

ChatGPT（生成AI）を職務経歴書作成に活用するメリット

ChatGPTのような生成AIツールを職務経歴書作成に活用する最大のメリットは、作成にかかる時間を大幅に短縮できる可能性であります。例えば、自身の職務経歴を箇条書きで入力し、「この情報を基に職務要約を作成してほしい」と指示することで、文章の「たたき台」を瞬時に生成させることができます。また、作成した文章の「添削」や「校正」（誤字脱字や不自然な日本語のチェック）、あるいは、よりビジネスシーンに適した表現への「リライト（書き直し）」を依頼することも可能です。

具体的な活用方法の例

職務経歴書作成におけるAIの活用法は多岐にわたります。自身の経験を整理する「キャリアの棚卸し」の段階で、AIを壁打ち相手として活用することもできるでしょう。また、箇条書きにした実績から「職務経歴欄」の具体的な記述を作成させたり、自身の強みを伝えて「自己PR」の草案を作成させたりすることも可能です。これらは、文章作成が苦手な方にとって、最初の一歩を踏み出すための大きな助けとなり得ます。

AI活用における最重要の注意点。事実（ファクト）は自身で用意する

ChatGPT（生成AI）を活用する上で、最も重要な注意点があります。それは、AIは時として、事実に基づかない情報（ハルシネーション）を生成することがある、という点です。職務経歴書に記載する在籍期間、担当業務、実績、スキルといった「事実（ファクト）」は、AIに生成させるのではなく、必ず応募者自身が正確な情報として用意し、AIに「入力（指示）」する必要があります。AIの生成した内容を鵜呑みにし、事実と異なる経歴を記載してしまうことは、絶対にあってはなりません。

「丸投げ」は厳禁。必ず自身の言葉で推敲する

AIが生成した文章は、あくまで「たたき台」であります。そのままコピーアンドペースト（複製・貼り付け）して完成とすることは厳禁です。生成された文章には、自身の意図と異なるニュアンスが含まれていたり、応募先企業に響かない一般的な表現に終始していたりする可能性があります。

必ず応募者自身の目で何度も読み返し、自身の経験や熱意が伝わるよう、自身の言葉で責任を持って修正・加筆（推敲）する作業が不可欠です。

応募先企業への最適化（カスタマイズ）は応募者の役割

職務経歴書は、応募先企業ごとに内容を最適化（カスタマイズ）することが、書類選考を通過するための重要なコツであります。AIは一般的な職務経歴書を作成することは得意かもしれませんが、特定の応募先企業が「今、どのような人材を求めているのか」を完璧に読み取り、それに合わせた最適なアピール内容を自動で生成することは困難です。応募先の求人情報を深く読み込み、どの強みを強調するかを判断し、内容を調整する作業は、応募者自身が行うべき重要なプロセスです。

個人情報の取り扱いに関するリスク

AIツールに情報を入力する際は、その取り扱いにも注意が必要です。自身の氏名、連絡先、あるいは在籍企業や取引先の具体的な名称といった詳細な個人情報や機密情報を入力することは、情報漏洩のリスクを伴う可能性があります。利用するAIツールの利用規約やプライバシーポリシーを確認し、情報の入力は慎重に行う必要があります。

結論。AIは「アシスタント」として賢く活用する

ChatGPT（生成AI）は、職務経歴書作成のプロセスを効率化する強力な「アシスタント」となり得ます。AIを活用して作成の時間を短縮できた分、キャリアの棚卸しや自己分析、そして何よりも応募先企業の研究といった、転職活動で最も本質的な部分に、より多くの時間を充てることが可能になります。AIに依存するのではなく、AIを賢く使いこなし、自身の転職活動を主体的に進めることが、成功への鍵となります。

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人材会社で15年間、転職・中途採用市場における営業職・企画職・調査職の仕事を経験。
社団法人人材サービス産業協議会「転職賃金相場」研究会の元メンバー
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