履歴書の「業務委託」、職歴欄への正しい書き方。不利にならないアピール術
転職活動で履歴書を作成する際、正社員やアルバAイトではなく、「業務委託(ぎょうむいたく)」として働いていた期間の「職歴」をどう書けばよいか、悩む方は少なくありません。
「業務委託は、そもそも職歴欄に書いて良いのか?」
「『入社』『退社』と書いて良いのか?」
「一般企業への転職で、不利にならないだろうか?」
こうした疑問は当然のことです。しかし、結論から言いますと、「業務委託」の経験も、あなたのキャリアを形成する立派な「職歴」であり、書き方次第で強力なアピールポイントになります。
その経験を記載しないことで履歴書に「空白期間(ブランク)」が生まれてしまうと、それこそが採用担当者に「この期間、何をしていたのだろうか」という、最大の懸念(けねん)を与えてしまいます。
ここでは、採用担当者にあなたの経歴を正確に、かつ「強み」として伝えるための、業務委託経験の正しい「職歴」欄への書き方を詳しく解説します。
1. 「業務委託」は「職歴」として書くべきか?
答えは「YES」です。必ず記載しましょう。
採用担当者が履歴書で最も気にするのは、「説明のつかない空白期間」です。
「業務委託」として専門的な業務に従事していた事実は、「何もしていなかった」のではなく、「プロフェッショナルとして、自己管理のもとで仕事(契約)を遂行していた」という何よりの証明となります。
隠すことは「経歴詐称」を疑われるリスクにも繋がりますし、ご自身の貴重な経験をアピールする機会を失うことにもなります。
2. 【最重要】「入社」「退社」は使わない
ここが、正社員の経歴と書き方を分ける、最も重要なポイントです。
「入社」および「退社」という言葉は、企業と「雇用契約」を結んでいる**従業員(正社員、契約社員、アルバイトなど)**が使うものです。
「業務委託」は、雇用契約ではなく、対等な立場での「業務(仕事)に関する契約」です。したがって、職歴欄に「入社」「退社」という言葉は使いません。
もし「入社」と記載してしまうと、採用担当者は「正社員として入社した」と誤解し、入社手続き(雇用保険の履歴確認など)の段階で話の辻S褄(つじつま)が合わなくなり、「経歴詐称」として信頼を失う可能性があります。
3. ケース別:「業務委託」の職歴欄への書き方
では、職歴欄には具体的にどう書けばよいのでしょうか。
「入社」の代わりに**「契約」や「活動開始」といった言葉を、「退社」の代わりに「契約満了」や「終了」**といった言葉を使うのが適切です。
ケース1:特定の企業と「業務委託契約」を結んでいた場合
特定の1社(または数社)と、プロジェクト単位や期間で契約して働いていた場合の書き方です。
【書き方 例文1:契約開始と終了を明記】
2020年 4月 株式会社〇〇と業務委託契約を締結
(Webデザイナーとして、△△(サイト名)の運用・保守業務に従事)
2024年 3月 契約期間満了により終了
ケース2:フリーランス(個人事業主)として活動していた場合
特定の企業に所属するのではなく、「フリーランス」として独立し、複数のクライアントから業務委託を受けていた場合の書き方です。
この場合は、いちいちクライアント名を書くのではなく、「フリーランス」または「個人事業主」として「開業」した(活動を開始した)と記載するのが一般的です。
【書き方 例文2:フリーランスとして活動】
2021年 5月 フリーランスWebライターとして活動開始
(主な業務内容:IT系コラム執筆、SEO記事作成、取材・インタビュー業務)
(※現在も活動中の場合は、次の行に「現在に至る」と記載します)
(※もし「廃業」している場合は、「2025年 3月 一身上の都合により廃業」などと記載します)
4. 「業務委託」の職歴からアピールできる「強み」
「業務委託」という働き方は、採用担当者にとって「不安定」と映るどころか、むしろ「ビジネススキルが高い」と評価される「強み」の宝庫です。
これらの「強み」は、履歴書の**「自己PR」欄や、セットで提出する「職務経歴書」**で、積極的にアピールしましょう。
強み1:高い「専門性(スキル)」
企業がわざわざ外部の人材に業務を委託するのは、その人に「社内にはない、高い専門性」を求めているからです。
- アピール:「〇〇の分野における、プロフェッショナルなスキル」
強み2:「自己管理能力」
業務委託は、時間やタスクの管理、体調管理、さらには税務処理まで、全て自分で行う必要があります。
- アピール:「指示待ちではなく、自らスケジュールを立てて遂行できる『自己管理能力』」
強み3:「責任感」と「成果へのコミット力」
従業員とは異なり、「成果物(納品物)」に対して報酬が支払われます。
- アピール:「納期や求められる品質に対し、最後まで責任を持ってやり遂げる『実行力』」
強み4:「課題解決能力」
トラブルが発生しても、基本的には一人で解決しなくてはなりません。
- アピール:「問題が発生した際に、主体的に解決策を模索し、実行できる『課題解決能力』」
5. 履歴書「自己PR」欄での書き方(例文)
「業務委託」の経験を、ビジネススキルに「翻訳」した例文を紹介します。
【例文1:(ITエンジニア経験者)】
「業務委託(フリーランス)として約3年間、〇〇(言語)でのシステム開発に従事してきました。納期と成果物の品質に対して強い責任感を持ち、クライアントと密に連携しながら、主体的に課題を解決するスキルを培いました。この『自己管理能力』と『専門性』を、貴社の〇〇プロジェクトでも活かせると考えております。」
【例文2:(デザイナー経験者)】
「業務委託デザイナーとして、複数のクライアントのニーズに応えてきました。限られた納期と予算の中で、求められる品質以上のものを提案する『実行力』と『柔軟性』が私の強みです。貴社においても、この経験を活かし、チームの一員として貢献します。」
6. 結論。「空白」にせず、「強み」として記載しよう
履歴書において、「説明のつかない空白期間」を作ってしまうことの方が、遥かに大きなデメリットとなります。
「業務委託」の経験は、あなたの「専門性」と「自己管理能力」を証明する、立派なキャリアです。
履歴書の職歴欄には、「入社」とは区別して、「契約締結」や「活動開始」といった「事実」を正確に記載すること。
そして、自己PR欄や職務経歴書で、その経験から得た「強み」を、応募先の仕事に結びつけてアピールすること。
その「誠実さ」と「前向きな姿勢」が、採用担当者からの信頼を得ることに繋がります。





