履歴書の「論文」の書き方。転職(中途採用)で研究実績をアピールする方法
転職活動で履歴書を作成する際、「学生時代の論文(卒業論文、修士論文、博士論文)」や「研究職としての発表論文」をどう書けばよいか、悩む方は少なくありません。
「そもそも、転職(中途採用)で論文の経歴はアピールになるのか?」
「履歴書のどの欄に書くのが正しいのか?」
結論から言いますと、応募先の業務内容(特に研究職、開発職、専門職など)と関連性が高い場合、論文はあなたの「専門性」や「論理的思考能力」を証明する、非常に強力な武器となります。
ここでは、あなたの研究実績を転職活動で正しく、かつ効果的にアピールするための「書き方」について、詳しく解説します。
1. 転職(中途採用)で「論文」はアピールになるか
新卒の就職活動とは異なり、中途採用では「職務経歴」が最重要視されます。しかし、だからといって論文が不要というわけではありません。
アピールになるケース
- 研究職、開発職、専門職への応募→ 修士論文や博士論文、学会発表論文は、あなたの専門性そのものであり、「職務経歴」と同等、あるいはそれ以上に重要な実績となります。
- 異業種への転職でも、テーマに関連性がある場合(例:経済学の修士論文 → 金融機関の分析職に応募)(例:心理学の論文 → 人事・マーケティング職に応募)
- 「論理的思考能力」や「課題解決能力」の証明として→ 一つのテーマを深く掘り下げ、仮説を立て、検証し、結論を導き出したプロセスそのものが、ビジネスにおける課題解決のプロセスと共通するため、その「思考のプロセス」をアピールできます。
2. 【最重要】「履歴書」と「職務経歴書」の役割分担
まず、履歴書という書類の「役割」を理解することが重要です。
転職活動(中途採用)で提出する応募書類には、主に2種類あります。
- 履歴書→ あなたの「プロフィール」や「索引(インデックス)」です。氏名、学歴、職歴の概要、資格などを記載します。
- 職務経歴書→ あなたの「具体的な実績」や「スキル」をアピールする「プレゼンテーション資料」です。
この役割分担を理解すると、「論文」をどこに書くべきかが見えてきます。
論文の詳細なアピール(研究内容や実績)は、「職務経歴書」が本番です。
3. 履歴書の「どこに」論文を書くか
では、履歴書本体には、論文についてどう書けばよいのでしょうか。
ケース1:学部の「卒業論文(卒論)」の場合
中途採用において、学部の卒業論文は、原則として履歴書に記載する必要はありません。
ただし、応募先の業務内容と強い関連性があり、どうしてもアピールしたい場合は、「自己PR」欄や**「特記事項」**欄に、研究テーマを簡潔に記載する方法があります。
(自己PR欄での例文)
「大学の卒業論文では『〇〇(テーマ名)』について研究し、〇〇の分析手法を学びました。この経験は、貴社の〇〇業務におけるデータ分析にも活かせると考えております。」
ケース2:修士論文・博士論文の場合
これらは、あなたの「専門性」を示す重要な経歴です。
履歴書のフォーマット(様式)に「研究テーマ」などを書く欄があればそこに記載しますが、ない場合がほとんどです。
この場合も、「学歴」欄に学部・学科名を書くのにとどめ、論文の詳細は「職務経歴書」に記載するのが一般的です。
(学歴欄の例)
〇〇年〇月 〇〇大学大学院 〇〇研究科 修士課程 修了
ケース3:研究職(ポスドクなど)の「業績論文」の場合
これは、学生時代の論文ではなく、あなたの「職務(仕事)の実績」そのものです。
したがって、履歴書の「職歴」欄に、所属していた研究機関(大学や研究所)を記載します。
そして、具体的な論文リスト(業績)は、**「職務経歴書」または、別紙として「研究業績書(論文リスト)」**を添付して詳細を伝えます。
(職歴欄の例)
〇〇年〇月 〇〇大学 〇〇研究所(〇〇研究室) 研究員として勤務
(主な研究内容および業績は、職務経歴書(または研究業績書)に記載)
〇〇年〇月 契約期間満了により退職
4. 職務経歴書への「論文」の正しい書き方
履歴書で「詳細は職務経歴書へ」と誘導した後、職務経歴書(または別紙の研究業績書)には、以下の情報を正確に記載します。
- 論文名(タイトル)
- 著者名(※ご自身が筆頭著者(First Author)か、責任著者(Corresponding Author)かは、必ず分かるように記載します。例:<u>山田 太郎</u> (筆頭))
- 掲載誌名(ジャーナル名)
- 発表年月
- 巻号(Volume)、ページ
- (もしあれば)査読(Peer Review)の有無
アピールするための「書き方のコツ」
ただ論文を羅列するだけでは、採用担当者(特に専門外の人事)には価値が伝わりません。
- 1. 応募先に関連する論文を厳選する全ての業績を書くのではなく、応募先の事業や職務内容に「関連性の高い」論文を厳選し、リストの冒頭に持ってきます。
- 2. 「研究内容の要約」を加える専門用語を避け、**「どのような課題に対し、どのような手法で、何を明らかにしたのか」**を、2〜3行で簡潔に要約して添えます。
- 3. 「活かせるスキル」を明記するその研究を通じて得たスキル(例:〇〇という分析機器の操作スキル、〇〇(統計ソフト)を用いたデータ解析能力、英語での論文執筆能力など)を明記します。
(職務経歴書での記載例)
■ 主な研究業績
- 「〇〇(論文タイトル)」(著者:<u>山田 太郎</u>(筆頭), 〇〇, 〇〇)(掲載誌:〇〇 Journal, Vol.XX, pp.XX-XX, 2023年)(要約:〇〇(課題)に対し、〇〇(手法)を用いて分析し、〇〇という結果を明らかにしました。)(活かせるスキル:〇〇(分析機器)の操作、統計ソフト〇〇によるデータ解析)
5. 結論。論文は「翻訳」してこそ、転職の武器になる
履歴書(および職務経歴書)における「論文」の書き方で最も重要なのは、「研究」という専門的な活動を、**「ビジネススキル」という共通言語に「翻訳」**することです。
「論理的に課題を設定し、計画的に実行し、データを分析し、結論を導き出す」というプロセスは、まさしくビジネスそのものです。
あなたの論文(研究実績)が、応募先企業で「どう役立つのか」を具体的に示すことで、それは転職(中途採用)において、他者にはない強力なアピールポイントとなります。





