履歴書の「保管期間」。不採用になった応募書類はどうなる?
応募書類と個人情報への「不安」
転職活動で履歴書や職務経歴書を提出した後、もし不採用になってしまった場合、「あの個人情報が詰まった書類は、いつまで企業に保管されるのだろうか」「悪用されたりしないか」と不安に思う方は少なくありません。
採用担当者が応募書類をどう扱っているのか、その「保管期間」の実情と、個人情報の取り扱いに関するルールについて解説します。
企業に「保管期間」の法的な定めはあるか
まず結論から言いますと、不採用となった応募者の履歴書を、「何年間、保管しなさい」と具体的に定めた法律は、現在のところありません。
法律上の義務は「保管」ではなく「安全管理」
保管期間の定めはありませんが、企業は応募者の履歴書を「個人情報」として、法律(個人情報保護法)に基づき、厳重に取り扱う「義務」を負っています。
企業が負う義務は、主に以下の二点です。
- 安全管理義務:採用選考の目的でのみ使用し、預かっている期間中は、漏洩(ろうえい)や紛失がないよう、責任を持って安全に管理する義務。
- 廃棄(破棄)義務:採用活動が終了し、その履歴書を保管する必要がなくなった時点で、遅滞なく、安全な方法で「廃棄(破棄)」する義務。
実際のところ、企業は「いつまで」保管しているのか
法律上の保管期間はありませんが、多くの企業では、実務上の理由から「一定期間」保管するルールを独自に設けています。
一般的には、**「選考終了後、6ヶ月から1年程度」**を目安に保管する企業が多いようです。
これは、選考に関する応募者からの問い合わせに対応するためや、将来的に別のポジションで欠員が出た際に、優秀な応募者として再度声をかける「タレントプール(採用候補者リスト)」として、一時的に情報を保持する場合があるからです。
なぜ履歴書は「返却」されないのが主流なのか
「保管されるくらいなら、返却してほしい」と思うかもしれませんが、企業に応募書類の「返却義務」も法律上ありません。
むしろ、近年は「応募書類は返却しません」と募集要項に明記する企業が主流です。
これには、郵送費や手間のコスト削減という理由もありますが、最大の理由は**「個人情報漏洩のリスク」**を避けるためです。
万が一、返送する過程で郵送事故が起きたり、宛名を間違えて別の人に送ってしまったりすると、それが企業にとって重大な「個人情報漏洩事故」となります。
企業にとっては、返送するリスクを負うよりも、社内で責任を持って安全に破棄(廃棄)する方が、最も確実な個人情報の管理方法なのです。
返却されない履歴書(個人情報)の「末路」
返却されない応募書類は、採用活動が終了し、企業が定めた保管期間(例:6ヶ月など)が過ぎた後、社内の規定に沿って適切に処理されます。
具体的には、シュレッダー処理や、専門業者による溶解処理(紙を溶かす)といった、復元不可能な方法で、確実に廃棄されます。
応募者として「確認」すべきこと
応募者としてできることは、まず**「募集要項」を確認する**ことです。
「ご提出いただいた応募書類は返却いたしません。当社の個人情報保護規定に基づき、選考終了後は責任をもって破棄します」といった一文が記載されていることがほとんどです。
この記載がある場合、応募者は「それに同意して応募した」ことになります。
結論。返却は期待せず、次の準備を
履歴書の「保管期間」に明確な定めはありませんが、企業は「個人情報保護法」に基づき、「安全に管理」し、「不要になったら安全に破棄」する義務があります。
「返却されない」のが一般的ですが、それは企業側が漏洩リスクを管理するための対策でもあります。
企業側のルールを理解し、不必要に不安がることなく、安心して次の応募準備に進みましょう。





