履歴書の「本人希望欄」。「貴社の規定に従います」の正しい使い方と意味

転職活動で使用する履歴書には、多くの場合、最後に「本人希望記入欄（本人希望欄）」という項目が設けられています。この欄をどのように記載すべきか、特に「貴社の規定に従います」という定型句を使うべきか迷われる方も少なくありません。この欄の書き方一つで、応募者の印象やビジネスマナーへの理解度が伝わることがあります。ここでは、この「本人希望欄」の役割と、「貴社の規定に従います」という言葉の正しい使い方について詳しく解説いたします。

本人希望記入欄の基本的な役割

履歴書の本人希望記入欄は、応募者がご自身の要望を一方的に主張するための欄ではありません。その主な役割は、応募する上で「絶対に譲れない条件」や、選考プロセスにおいて「企業側に配慮してほしい実務的な事項」を伝えることです。例えば、応募先が複数の職種や勤務地を募集している場合に、ご自身の希望を明確にしたり、在職中であるために連絡がつきにくい時間帯を伝えたりするために使用します。採用担当者はこの欄を見て、応募者の希望と自社の募集条件が合致しているか、円滑に選考を進められるかを確認します。

「貴社の規定に従います」が示す意味

転職活動において、本人希望欄に記載する言葉として最も一般的で、かつ無難なのが「貴社の規定に従います」という一文です。この言葉が採用担当者に伝えるのは、応募者の「柔軟性」です。つまり、「給与、待遇、勤務地、その他諸々の条件については、選考の段階ではまず御社（貴社）のルールをお伺いし、それに従います」という意思表示になります。特に給与などの詳細な条件は、選考が進み、面接や内定の段階で話し合われるべきものというビジネスマナーを理解している、という姿勢を示すことにもつながります。

この定型句を記載することが推奨される場合

正社員（無期雇用）のポジションに応募する際、特に待遇面などで選考の初期段階から提示しなければならない絶対条件がない場合は、この「貴社の規定に従います」と記載することを強く推奨します。空欄のまま提出するよりも、この一文があることで、「この欄もきちんと確認し、理解した上で提出している」という丁寧さや、社会人としての常識が伝わります。採用担当者にとっても、最も安心感のある記載方法と言えるでしょう。

待遇に関する希望（給与・休日）の記載について

転職活動において、給与や休日、福利厚生といった待遇面は非常に重要な要素です。しかし、これらの希望を、選考の入り口である履歴書の本人希望欄に「年収〇〇万円以上を希望」「土日祝日は必ず休めること」などと具体的に記載することは、原則として避けるべきです。採用担当者からは「まだスキルや人柄を評価する前段階で、条件面ばかりを主張する人物」と見なされ、自己中心的であるというマイナスの印象を与えかねません。これらの条件交渉は、あくまでもご自身のスキルや経験が企業に評価された後、面接の場や内定前後のタイミングで行うのが適切な手順です。

「貴社の規定に従います」と記載しない例外ケース

この定型句が万能というわけではなく、あえて具体的な希望を記載すべき例外的なケースも存在します。それは、その記載がないと応募の意図が正しく伝わらない場合です。例えば、応募先企業が「営業職」「事務職」「技術職」など複数の職種を同時に募集している場合、ご自身がどの職種に応募しているのかを明確にするため、「営業職を希望いたします」と明記する必要があります。同様に、勤務地が複数ある場合で、ご自身に譲れない希望地がある場合も、「〇〇（地名）での勤務を希望いたします」と記載します。また、育児や介護といった家庭の事情により、勤務時間や日数に絶対的な制約がある場合も、その事実を簡潔に記載します。

在職中の方が配慮を求める場合の書き方

現在、他の会社に在職しながら転職活動を行っている方にとって、本人希望欄は、選考プロセスを円滑に進めるための重要な連絡欄となります。この場合も、「貴社の規定に従います」と記載した上で、その下に連絡に関する配慮事項を書き添えるのが丁寧です。例えば、「現在在職中のため、平日の日中は電話に出ることが難しい場合がございます。ご連絡はEメール、または平日18時以降にお電話いただけますと幸いです」といった形で記載します。これは待遇の要求ではなく、実務的な配慮の依頼であるため、何ら問題ありません。

まとめ。柔軟な姿勢を示すビジネスマナーとして

履歴書の本人希望欄は、ご自身の柔軟性やビジネスマナーへの理解度を示す場です。原則として「貴社の規定に従います」と記載し、応募先企業の条件を受け入れる姿勢を見せることが、書類選考をスムーズに進めるための鍵となります。ただし、応募職種や勤務地といった、応募の前提となる必須条件がある場合や、在職中の連絡配慮など、実務的に伝えるべきことがある場合に限り、その旨を簡潔かつ丁寧な言葉で補足するように心がけましょう。

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人材会社で15年間、転職・中途採用市場における営業職・企画職・調査職の仕事を経験。
社団法人人材サービス産業協議会「転職賃金相場」研究会の元メンバー
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