「東京への通勤」をやめて埼玉で働く。ベッドタウンならではの採用事情と、書類選考で勝つための志望動機戦略
「給料が高い東京の病院に通うか、通勤が楽な地元の埼玉で働くか」
埼玉県在住の看護師が転職を考える際、必ずぶつかるのがこの「東京 vs 埼玉」のジレンマです。
大宮や浦和から都内へのアクセスは良好ですが、毎日の満員電車(特に埼京線や京浜東北線)での通勤は想像以上のストレスになります。「ワークライフバランスを整えたい」と考えて県内での転職を決意する人は多いですが、ただ「家から近いから」という理由だけで採用されるほど、埼玉の転職市場は甘くありません。
埼玉県は、上尾中央医科グループ(AMG)や戸田中央メディカルケアグループ(TMG)などの巨大医療グループがひしめく激戦区であり、エリアによって求められる医療ニーズも大きく異なります。
本記事では、埼玉県の地域特性を深く理解し、採用担当者に「あえて埼玉(当院)を選んだ理由」を納得させるための応募書類の書き方について解説します。
1.「都内からのUターン」組が陥る罠と対策
都内の大学病院や大規模病院で経験を積んだ看護師が、埼玉の病院へ転職する場合、採用担当者はある一つの「懸念」を抱きます。
それは、「都落ち(楽をしたいから埼玉に来た)」と思われていないか、という点です。
「都内の激務に疲れたので」という本音が見え隠れすると、「うちは都内の病院ほど設備が整っていないから、不満を持つのではないか」と敬遠されます。
これを払拭するためには、「都内で培ったスキルを、地元・埼玉に還元したい」という**「貢献」**のスタンスを示す必要があります。
- 志望動機の修正例:「これまでは都内の高度救命救急センターにて、重症管理のスキルを磨いてまいりました。しかし、退院後の患者様が地域に戻っていく姿を見る中で、自分が暮らす埼玉県の地域医療を支えたいという思いが強くなりました。貴院は県南部の救急の砦です。都内で得た迅速なアセスメント能力を活かし、地元の救急医療に貢献したいと考え志望しました。」
2.エリア別・書類選考の攻略キーワード
埼玉県は、エリアによって医療事情が全く異なります。「どこで働くか」によって、アピールすべきポイントを変えましょう。
① 県南エリア(さいたま市・川口・戸田・蕨)
東京に隣接するこのエリアは、人口密度が高く、急性期病院の激戦区です。都内の病院と競合するため、医療レベルも高い傾向にあります。
- 攻略法:「近さ」よりも**「スキルアップ」や「忙しさへの耐性」**をアピールします。「東京に行かなくても、ここで高度な医療ができるから選んだ」という意欲が好まれます。
② 県央・県北・県西エリア(上尾・川越・熊谷・所沢など)
地域の中核病院や、高齢者医療を支えるケアミックス病院が中心となります。高齢化が進んでいる地域も多いため、「地域包括ケア」がキーワードです。
- 攻略法:高度医療一辺倒ではなく、**「退院支援」「在宅連携」「高齢者看護」**への関心を盛り込みます。「患者様が住み慣れた地域で暮らすための支援がしたい」という視点が評価されます。
3.巨大「医療グループ」への応募対策
埼玉県は、日本有数の「医療グループ王国」です。AMG(上尾中央)、TMG(戸田中央)、済生会などが県内に多数の病院を展開しています。
こうしたグループ病院に応募する場合、書類選考で重視されるのは**「組織人としての適性」**です。
- 教育体制への言及:グループ病院は教育ラダーが充実していることが売りです。「貴グループの充実した教育体制のもとで、着実にキャリアを積み重ねたい」と書くことは、組織の方針にマッチするため好印象です。
- 異動への柔軟性(管理職候補の場合):将来的なキャリアアップを目指す場合、「グループ内での連携や、幅広いフィールドでの活躍にも興味があります」と添えると、使い勝手の良い人材として評価が上がります。
4.「車通勤」か「電車通勤」か。足回りの記述は必須
埼玉県の病院選びにおいて、通勤手段は非常に重要です。
駅から離れた病院も多いため、履歴書の通勤欄や本人希望欄で「確実に通えること」を証明してください。
- 車通勤の場合:「自家用車にて通勤可能です。駐車場利用を希望いたします。前職でも片道40分の車通勤をしておりましたので、距離は問題ありません。」※国道17号や16号、バイパスの渋滞事情を考慮し、「早めの出勤を心がけます」と添えるとさらにベストです。
- 電車・バス通勤の場合:バスの本数が少ないエリアもあります。「バスのダイヤを確認済みであり、始業30分前には到着可能です」と具体的に書くことで、遅刻への懸念を払拭します。
5.「生活圏」を守るための条件交渉の書き方
埼玉で働くメリットの一つは、生活圏(自宅)に近いことです。しかし、近すぎるがゆえに「近所のスーパーで患者さんに会う」「休日に呼び出されやすい」といった側面もあります。
また、子育て中のママさんナースも多いため、働き方の条件がある場合は、書類の段階で誠実に伝えておくことが、入職後のトラブル防止になります。
- 本人希望欄の書き方(子育て中の場合):「保育園の送迎のため、18時までの勤務を希望いたしますが、夫や実家の協力が得られる日は残業も可能です(月4回程度)。限られた時間内で業務を完遂できるよう、効率的な働き方を意識いたします。」
6.まとめ:埼玉愛を「戦略」に変える
「東京に近いから」という理由で比較されがちな埼玉の医療現場ですが、そこには「地域住民の生活を支える」という熱いプライドがあります。
書類選考を通過するためには、「東京への通勤が嫌だから埼玉にした」という消極的な理由ではなく、**「埼玉のこの地域で、この病院で看護がしたい」**という積極的な選択であることを伝えてください。
その「埼玉愛」と「即戦力としての根拠」がセットになったとき、採用担当者はあなたを地元の仲間として喜んで迎え入れてくれるはずです。





