看護師転職で「給料ダウン」は失敗か?年収が下がっても幸せになれる人の条件と、採用される志望動機の書き方
「転職したいけれど、今の生活水準を落としたくない」
「日勤のみのクリニックに行きたいけれど、給料が激減するのが怖い」
看護師の給与は夜勤手当や残業代が大きなウェイトを占めているため、転職によって「年収が下がる」ケースは決して珍しくありません。しかし、額面上の金額が下がること=「転職の失敗」と決めつけるのは早計です。
重要なのは、そのマイナス分に見合うだけの「価値(時間、健康、やりがい)」が得られるかどうかです。そして、採用担当者は「給料が下がっても本当にこの人は辞めないか?文句を言わないか?」を厳しく見ています。
本記事では、給料ダウンが許容されるケースの見極め方と、その覚悟を採用担当者に伝え、書類選考を突破するためのテクニックについて解説します。
1.なぜ下がる?看護師転職の「給与構造」の罠
まずは、なぜ転職すると給料が下がりやすいのか、そのカラクリを冷静に理解しておきましょう。多くの場合、能力不足で下がるのではなく、以下の要因が絡んでいます。
- 夜勤手当の消失・減少:病棟からクリニックや外来へ転職する場合、月4〜5万円程度の夜勤手当がなくなります。これだけで年収換算で50〜60万円のダウンになります。
- 経験年数リセット:多くの病院では、基本給の算定に経験年数を用います。中途採用の場合、前職の経験が100%加算されるとは限らず、「当院規定により」少し低めに設定されることが一般的です。
- 賞与(ボーナス)の係数:基本給が同じでも、賞与が「4.0ヶ月分」の病院から「2.5ヶ月分」の病院へ移れば、数十万円単位で年収が変わります。
これらは構造上の問題であり、個人の努力で避けられない部分もあります。
2.「年収ダウン」を受け入れてもいい3つのパターン
金額が下がっても「転職して正解だった」と思えるケースには共通点があります。目先の月給だけでなく、以下の視点で判断してください。
① 「時給換算」では上がっている
月給が5万円下がったとしても、サービス残業が月20時間減り、通勤時間が片道30分短縮されたなら、実質的な「時給(労働単価)」は上がっている可能性があります。自分の時間を確保したい人にとっては、合理的な選択です。
② 未経験分野への「投資期間」である
美容看護師や産業保健師、訪問看護など、未経験の分野に挑戦する場合、最初は見習い期間として給与が下がることがあります。しかし、スキルを身につければ将来的に前職以上の年収を目指せるなら、一時的なダウンは「授業料」のようなものです。
③ 心身の「健康コスト」を支払っている
激務で心身を壊しては元も子もありません。「年収マイナス100万円」は、「健康を取り戻すための治療費」あるいは「平穏な生活を買うための費用」と考えれば、決して高くはないはずです。
3.採用担当者は「給料ダウン」をどう見ているか
ここで書類選考の話に戻ります。採用担当者は、前職より給料が下がることを承知で応募してきた看護師に対して、以下のような不安を抱きます。
- 「入職してから『やっぱり生活が苦しい』と言って辞めるのではないか?」
- 「給料が安いと不満を周囲に漏らすのではないか?」
応募書類(志望動機や本人希望欄)では、この不安を先回りして払拭する必要があります。
4.「給料が下がっても御院がいい」を書類で証明する書き方
「給料が下がっても構いません」とただ書くだけでは不十分です。「なぜ構わないのか」というポジティブな理由を添えることで、本気度が伝わります。
志望動機への盛り込み方
お金以外の「働く目的」が明確であることをアピールします。
【例文:急性期から慢性期・療養へ(給料ダウン想定)】
「前職の急性期病棟では、日々の処置に追われ、患者様一人ひとりと向き合う時間が十分に取れないことに葛藤を感じておりました。貴院のような療養型病院であれば、給与面での変化はあると理解しておりますが、それ以上に『患者様の人生に寄り添う看護』を実践できる環境に価値を感じております。生活水準を見直し、長く腰を据えて働きたいと考えております。」
面接や備考欄での伝え方
もし面接や書類の備考欄で給与について触れる場合は、「納得済みであること」を論理的に伝えます。
【OKな伝え方】
「今回の転職では、年収よりも『ワークライフバランス』と『在宅看護のスキル習得』を最優先に考えております。提示された条件については、家族とも相談の上、問題ないことを確認しております。」
【NGな伝え方】
「お金には執着していないので大丈夫です。」
「生活できればいいので。」
(→「向上心がない」「責任感が薄い」と誤解されるリスクがあります)
5.下げ幅を最小限にするための「防衛策」
とはいえ、少しでも高く評価されたいのが本音です。書類選考の段階で安売りしすぎないためのポイントもあります。
- 職務経歴書で「貢献度」を数値化する:委員会活動、リーダー経験、新人指導の実績などを具体的に書き、「基本給を高めに設定してもいい人材だ」と思わせる材料を提供します。
- 転職エージェントに交渉してもらう:自分で「給料を上げてください」と言うのは難しいですが、エージェントを通じれば「前職の給与を考慮してほしい」と交渉可能です。その際も、詳細な職務経歴書が交渉の武器になります。
給料が下がる転職は、「負け」ではありません。それは、あなたが「お金」よりも「大切なもの(時間、健康、やりがい)」を選び取ったという、人生の主体的な決断です。
その決断に自信を持ち、書類上で「この選択には迷いがない」ことを力強くアピールしてください。そうすれば、採用担当者はあなたを「信頼できる仲間」として迎えてくれるはずです。





