愛媛の看護師転職は「3つのエリア」で戦略が変わる。松山・東予・南予、地域性を味方につける書類作成術

「住みたい田舎」としても人気が高く、温暖な気候と穏やかな県民性が魅力の愛媛県。看護師の転職市場においても、県内での移動だけでなく、県外からのUターン・Iターン希望者が多い地域です。

しかし、愛媛県は地形的に東西に長く、エリアによって医療事情や求められる人材像が全く異なります。松山市の都市型医療と同じ感覚で南予の病院に応募しても、採用担当者には響きません。

愛媛での転職を成功させ、書類選考を突破するためには、地域の特性を深く理解し、それに合わせたアピールを行うことが不可欠です。本記事では、愛媛県を3つのエリアに分け、それぞれの採用ニーズを捉えた応募書類の書き方について解説します。

１．愛媛県内のエリア別・転職攻略マップ

愛媛県の医療圏は大きく「中予（松山圏）」「東予」「南予」の3つに分かれます。自分が希望するエリアの特徴を押さえ、履歴書の戦略を練りましょう。

① 中予エリア（松山市・伊予市・東温市など）

• 特徴: 県の人口の約4割が集中し、大学病院や県立中央病院、松山赤十字病院などの高度急性期病院が密集しています。クリニックや訪問看護の数も多く、求人は豊富ですが、その分ライバルも多い激戦区です。
• 書類のポイント: 「即戦力」と「キャリアビジョン」が問われます。
  • アピール例: 「松山市内の高度医療機関で、最先端のクリティカルケアを学びたい」といった専門性への意欲や、「これまでの救急経験を活かし、地域の中核病院でリーダーシップを発揮したい」といった上昇志向を前面に出します。

② 東予エリア（今治市・新居浜市・西条市・四国中央市）

• 特徴: 製造業が盛んな産業エリアであり、企業立病院や労災病院などが地域医療を支えています。松山へのアクセスも悪くないため、バランスの取れた生活が可能です。
• 書類のポイント: 「地域産業を支える医療」への理解と、「定着性」が重視されます。
  • アピール例: 「働く世代が多い東予エリアにおいて、予防医療や産業保健の視点を持った看護を提供したい」といった、地域の年齢層や特性に合わせた視点が評価されます。

③ 南予エリア（宇和島市・八幡浜市・大洲市など）

• 特徴: 高齢化率が高く、へき地医療や在宅医療のニーズが極めて高いエリアです。医師不足などの課題もあり、看護師一人ひとりの役割が大きくなります。
• 書類のポイント: 「地域貢献」と「ジェネラリストとしての能力」が鍵です。
  • アピール例: 「高齢化が進む南予において、病院から在宅まで切れ目のない看護を支えたい」「幅広い疾患に対応できる判断力を活かし、地域医療の砦となりたい」という熱意は、採用担当者の心を強く打ちます。

２．「なぜ愛媛なのか？」Uターン・Iターンの志望動機

愛媛県への転職では、地元出身者のUターンや、結婚などを機にしたIターンが非常に多いです。

「実家に帰るから」「自然が豊かだから」という理由はきっかけとしては十分ですが、志望動機にするには弱すぎます。「愛媛で働くことの意義」を加えて文章を構成しましょう。

例文：Uターン（地元貢献型）

「東京の急性期病院で5年間勤務し、チームリーダーとして後輩育成にも携わりました。しかし、以前より『将来的には生まれ育った愛媛の地域医療に貢献したい』という強い思いを持っておりました。貴院の『地域完結型医療』を目指す姿勢に共感し、これまでの経験を地元の患者様やご家族のために還元したいと考え、帰郷を決意しました。」

→ ポイント: 「都心で得たスキルを、地元に還元する」というギブ（Give）の精神を強調します。

例文：Iターン（定住・安定型）

「結婚を機に、夫の地元である愛媛県へ移住いたしました。温暖な気候と温かい人柄に触れ、この地で腰を据えて長く看護師として働きたいと考えております。前職での慢性期病棟での経験を活かし、貴院にて患者様に寄り添う看護を実践するとともに、地域の一員として信頼される存在になりたいと考えております。」

→ ポイント: 「腰を据えて」「長く」という言葉を使い、早期離職の不安を払拭します。

３．愛媛特有の「お接待文化」と「人柄」を書類に滲ませる

愛媛県民の県民性は、一般的におっとりとしていて、人当たりが良いと言われます（お遍路さんへのお接待文化など）。

そのため、応募書類や面接においても、ガツガツした成果アピールよりは、**「協調性」や「和を尊ぶ姿勢」**の方が好まれる傾向にあります。

• 自己PRの工夫:「私の強みは、チームの和を大切にする『調整力』です。多職種と連携する際も、相手の意見を尊重しながら円滑に業務を進めることを心がけてきました。」このように書くことで、「愛媛の職場の雰囲気にもすぐに馴染めそうだ」という安心感を与えられます。

４．必須スキル「運転免許」は確実にアピールする

松山市内の一部（伊予鉄道の沿線など）を除き、愛媛県での生活・通勤にはマイカーが必須です。

特に郊外や南予・東予エリアの病院に応募する場合、「自力で通勤できること」は採用の必須条件と言っても過言ではありません。

履歴書の資格欄に「普通自動車第一種運転免許」と書くのはもちろんですが、通勤方法の欄や備考欄に以下のように添えておくと親切です。

• 「自家用車での通勤を希望いたします。」
• 「現在ペーパードライバーですが、入職までに運転講習を受け、通勤に支障がないよう準備いたします。」（県外からの移住者の場合）

５．給与面のギャップは「暮らしやすさ」で補う視点を

首都圏や関西圏から愛媛へ転職する場合、年収の額面はどうしても下がることが多いです。

履歴書の希望年収欄に、前職と同じ高水準の額を書くと「相場を知らない人」と判断され、書類選考で落とされるリスクがあります。

愛媛は家賃や物価が比較的安く、通勤ストレスも少ないため、可処分所得や生活の質（QOL）は向上するケースが多いです。

年収に関しては「貴院の規定に従います」と謙虚に記載し、面接で具体的な働き方や手当を含めた総額を確認するのが、賢い転職の進め方です。

愛媛県での看護師転職は、エリアごとの特性を理解し、「地域に根ざして働く覚悟」を伝えることが成功への近道です。あなたの経験が、愛媛の医療現場で必要とされています。自信を持って応募書類を作成してください。

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人材会社で15年間、転職・中途採用市場における営業職・企画職・調査職の仕事を経験。
社団法人人材サービス産業協議会「転職賃金相場」研究会の元メンバー
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